第21話 騎士団長…カツカレーを食べる。
東京の小さな小料理屋の個室では、調教師の真田凛子と上田恵子それに武田志帆が祝杯をあげていた。
「私、信じられません、あの岡田騎手と『キングスター』に勝っちゃうなんて、もう、出遅れちゃって他の馬達に囲まれて抜け出す事もできなかったけど」
「それでも『アルフレート』は落ち着いていて、しっかりと『キングスター』の後を追ってくれて安心しました。」とレースの話しをする志帆
「ほんとよ~、あなたがスタートで出遅れた時はびっくりしたわ」
「それでも、な~にあの最後の直線に見せたすごいロケットダッシュは、久しぶりに興奮して大声だして声がかれそうよ」そう言って喜んでいる馬主の上田恵子
「あの子はすごいわ、最後の追い込みを見ても、差し馬としてのスタミナと最後の瞬発力はあるし、短いコースではスプリンターのような先行馬としての力もあるわ」
「競馬の脚質といえば「逃げ」「先行」「差し」「追い込み」の4タイプがあるけど‥‥」
「きっと、レース展開やペースに応じて位置取りを柔軟に変えられる優秀な“自在型”なんだわ」
そう言って日本中央競馬協会で女性の調教師による初めてのG1馬の育成実績の夢を持つ調教師の真田凛子は次のレース展開の事を考えていた。
同じころ違う夜のお店では‥‥
「なんじゃ~あのレースは、最後まで足が持たなかったじゃないか~どれだけお前たちに金をかけていると思っているんだ!」と声を荒げるのは綺麗なホステスさんに囲まれた『キングスター』の馬主、金島虎二
「儂の『キングスター』よりも一回りも小さい馬に最後に抜かれるとは、いい恥さらしじゃ、クソ~、ゴール前で油断した岡田騎手は首じゃ~別のもんに変えてくれよ、藤原先生よ‥」
「わかりました、お金はかかりますが、次は実力のある外人騎手ピエール・ロッシュに騎乗を頼んでおきます。」
馬主に逆らえない藤原調教師は、『キングスター』の勝ち星を増やす為に、この先のデカいレースまでは『アルフレート』との対戦を避けるレース選びをするのだった。
迫力や体格それに実力が劣ると思われた馬が、格上の金のかかった馬にゴール前で劇的に差し勝ったレースに競馬関係者は驚愕した。
レースそのものは一勝した馬達が出場する賞金額も少ない小さなレースだったが、『アルフレート』のレース終盤にあの『キングスター』に追いつき、特にゴール前の直線で馬が発揮する加速力や伸び脚の「末脚」で他馬を一気に抜き去る能力を持つ馬であり、「末脚が切れる馬」と表現され、レース翌日の競馬新聞の隅には『実力は本物だ!これからが楽しみな馬である。』と評価されていた。
団長の愛馬に似た馬への応援で大勢の関係者の人生が大きく変わっていくのであった。
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テーブルの上の山盛り”カツカレー”を見て驚く団長、ちょっとスケベな古武道の師匠、天城信義の自宅のキッチンのテーブルの前に座っていた。
今日の競馬場でも予定通り勝ち金をゲットした団長、すでに前回と合わせて200万円以上の資金がアイテムボックスの中に溜まっていた。
その後、祖母の入院する病院によって少し時間を潰してから夕方に師匠の家にくると、玄関では祖母の家で起きた傷害盗難事件を知っている師匠が笑顔で‥
「孫の玲亜が儂にはめったに作ってくれない料理を、お婆さんが入院中のお前さんの為に料理を作って待っていたぞ!」
そう言って古い木造の屋敷のキッチンへ案内されていくと、可愛い半袖のワンピースに胸当てのエプロンを付けて薄いお化粧をしている玲亜がニコニコした顔でガスレンジの上のカレーが入った鍋をかき回していた。
「いらしゃい、もうすぐできるから、そこのテーブルの椅子に座って待っていてよ」
師匠が自分の座っている向かいの椅子を指さしたので、そこで座ってテーブルを見ると、すでに小皿に入った野菜サラダが置かれて脇にはグラスとペットボトルのお茶が置いてあった。
師匠は自分のグラスに晩酌用のビールのロング缶を注いでいたが、それを”ああ~俺も飲みて~”とじ~と物欲しそうに見ていたら、それに気が付いた師匠はカレーを焦がさないように夢中になってかき回している玲亜に気がつかれないよう、人さし指を口に当てて、ニタ~と笑ってそれを注いでくれた。
”あああ~さすが師匠、ごっつあんです。”と思いながら俺もニタ~と笑って頭を下げて、この世界にきて初めてのエールもどきをいっきに飲み干した。
目ん玉が飛び出るほど驚いた、こんなエールがあるなんて、渇いた喉に雑味のないコクとキレ、奥行きのある果実風の苦みが広がりとんでもなく旨かった。
”これを飲んだらもう、あのくそまずいエールは、もう馬のションベンと同じだぜ~”
空のグラスを持って、”あああ~もう一杯飲みて~”と思っていたが胸当てのエプロンを付けて学校とは違うオシャレな普段着の玲亜が、ごはんがのった皿に出来上がったカレーを盛り付け俺の前に置いてくれた。
”おお~、これはオーク肉の揚げ物じゃねいか、それと俺の大好物のカレーこれはまさしく最高な組合わせだ~”
テーブルの上の山盛り”カツカレー”を見て驚く団長
「さ~できたわよ、お口にあえばいけど」そう言って玲亜は俺のグラスにペットボトルのお茶を注いでくれた。
俺は「いただきま~す」と言いながらスプーンでそれを一口食べた。
”””脳天から足のつま先まで電気が走っていった!”””
「美味しい~、凄く美味しいよ~、こんなの食べた事がないよ~天城さん」あまりの美味しさにうわずった声がでてしまった。
素材のうま味をギュッと凝縮した濃厚な味わいと、トマトの酸味が揚げたトンカツと最高の相性だった、今までは、ばあ~さんが作ってくれたカレーが一番だと思っていたがその何倍もこれはうまかった。
「そうじゃろ~、儂にはたまにしか作ってくれないが、この子が作るカレーはお店でも出せる味じゃ~」
「隠し味は何を使っているんだったかな~」
「え~前にも言ったでしょ、カカオ70%以上のビターチョコを加えることで甘さと苦味、それにコクの深みが絶妙に変わるのよ」と褒められてちょっと照れくさそうにしている玲亜が答えた。
こうして最高の”山盛りカツカレー”を完食して腹がいっぱいになってグラスの冷たいお茶を飲んでいたら、
「玲亜そういえば、永瀬君の家で盗まれた金はどうなったんだ、犯人が捕まったからお金は戻ってくるんじゃろ、警視庁に勤めてる達也はなんか言ってなかったのか、」
「え~、私も気になって永瀬君の事件を聞いてみたんだけど、お父さんあんまり、事件のことは家で話さないんだよね」
「実行犯が捕まっているから、これで事件が解決だと思っていたんだけど、まだなんか捜査しているみたい」
「もういいです、お金の事は諦めました。」
「祖母にもお金の隠し場所なんかすぐに言えば、そうすれば犯人にあんな、ひどいことをされなかったのに」
「なんか、僕の大事な大学の進学費用だとかいって守ろうとしたらしいけど」
「そりゃ~そうだろう、亡くなった御両親に代わって孫の進学を心配するの当り前じゃ」
「でも、僕は進学する気は全くありませんよ、早く祖母には楽をさせてやりたいんで、来年卒業したら就職をしようかな~と思っていますよ。」
「えっ!……永瀬君は進学しないの、ど、どこに就職するつもりなの‥‥」心の隅では来年も同じキャンパスライフをすごしたいと思っていた玲亜は驚いていた。
「う~ん、祖母を安心させる為にはやはり安定した公務員かな~」
「今回のような年寄りを襲う悪い奴らや犯罪者を捕まえる、天城さんのお父さんのような、警察官になろうかな~と思っているよ。」
「その為にも師匠には鍛えてもらって、もっと強くなりたいです。」
「ワハハハッハ~そうか、そうか、よ~し任せろ、お前さんは今までで教えた中で、一番筋がいい弟子じゃ、すぐに儂よりも強くなれるぞ」
「どうじゃ、食べたばかりだが、これから道場でひと汗ながすか~」
「ハイ!、師匠、お願いします。」
道着を借りていつも教わる道場に向かうと、隣のでかい道場ではダンス教室の夜の部が始まり、インスタトラクターがデカい胸を揺らして中学生や小学生の高学年の生徒たちにダンスステップを教えていた。
今日は天城神道流の体術の練習だった。日本拳法をベースに、柔道と相撲の投げ技、合気道の関節技を採り入れた内容で師匠は若い頃は警察や自衛隊の近接格闘術の指導をしていた強者だった。
日本拳法を基本とした徒手格闘、相手の顔面や胴体などに正面から打撃を与える正拳突きにフックにあたる回し打ち、肘打ち、回し蹴り、膝蹴りなどの型を教わり
投げ技では腰投げ、背負い投げ、大外刈り、首捻り‥‥それに関節技の手首返し、手首捻り 腕捻りそれに絞め技などなど、、、
師匠からそれぞれの技をかけてもらいながら、それを真似をして今度は師匠に同じ技をかけていた。
騎士団でも古くから伝わる体術それを指導する教官だった団長は、すぐに師匠の技も同じようなものだったので一回教えてもらえば、マスターすることができた。
お互いに簡易プロテクターとグローブをつけての組手をはじめた、技を思い出して慣れたように仕掛けてくる団長が発する、とんでもない殺気に天城信義が気がついた。
「お前がたまに見せる殺気は尋常じゃないな~、まさか、人を殺しているんじゃないだろな~」といきなりぶっこんできた。
”ぎゃ~、まずいぜ~、まさか向こうの世界、騎士団の公務で人権など全くない社会で盗賊や街の悪者達と何度も命のやり取りをして何十人も殺しました~なんて言えるかよ~”
”ご主人様、玲亜様がこちらを見ております、あの方にごまかしてもらいましょうよ~”
「し、師匠、そ、そんな事とあるわけないでしょよ~、ぼ、僕なんて、虫も殺せませんよ~、ねえ~天城さん…」と俺の正体をしている玲亜に話しを振った
「フフフ、何言っているのよ、お爺ちゃん永瀬君は将棋と漫画好きな同級生よそんな事があるわけないじゃん」
「本気で警察官になって悪い奴らを倒すために、真剣に練習しているんだからそれが気配にでているんじゃないの~」
すぐに気がついた玲亜はすかさずフォーローをした。
「ワハハハッハ、冗談だよ~、こいつがあんまり覚えがよくてな~、きっとすぐに儂より強くなるかもしれんぞ、教えがいのある弟子じゃ~」
「いっそのこと、玲亜と結婚して婿入りしてこの道場を継いでほしいわい、ワッハハハハ~」
”ナイスフォロー”と思って玲亜を見ていた団長、そこへいきなり師匠がまた変なことをぶっこんで、顔を赤くする二人だった。
つづく、、、




