第14話 騎士団長…修学旅行に行く。
団長が初めて競馬場に行った土曜日‥‥‥
福島のいわき市にある競走馬を生産している小さな家族経営の里見牧場では、里見健一45歳と娘の彩夏19歳が祈るようにTVを見ていた。
「さ~て、直線にはいっても先頭を走る、9番アルフレート速い速い、ここでまた‥‥なんと!~またギヤアップした!二番手との差をどんどん離していく~凄いスタミナだ!~」
「凄い、凄いぞ!ターボエンジンを積んだ9番アルフレート~このレースを完全に逃げ切った~~~!!」
「キャ~やった~お父さん、あのアルフレートが一着よ!!~」そう言って喜ぶ娘の彩夏‥‥
目に涙を浮かべじ~とTV見ている父親の里見健一、この小さな牧場では北海道のでかい競走馬の生産者にはとてもかなわなっかった。毎年、重賞レースに出走させるような優秀なサラブレットを出しているのは、北海道‥日高のエンペラーファームそれにゴールドファームなどが二強として君臨している。
彼らは豊富な資金で自前の育成コースや練習コースそれに調教師や元騎手を抱え、毎年百頭をこえる強い馬を育てていた。
そんな金のかかった馬達と競争して今日、『アルフレート』は初めての一勝をあげたのである。
それも東京競馬場の芝1600mのコースレコードを北海道、日高の馬でなく福島のいわき市の小さな生産者の競走馬が5年ぶりに更新したのである。
小さな家族経営の牧場、父親の里見健一はこれで最後とおもい、牧場で飼っている繁殖用の牝馬に日高の個人牧場をやっている先輩に頭を下げて過去に重賞レースを何度も勝っている種馬から交配させてもらって授かったのが『アルフレート』だった。
いままでの成績は3着が最高でいつも、最終コーナーまではトップでやってくるが、そこでスタミナ切れとなり、ゴール前で失速して後続の馬にさしこまれていた。
その日の夜、茨城県美浦村の美浦トレーニングセンターに併設されている真田厩舎でも調教師の真田凛子48歳と、事業で成功して『アルフレート』の馬主になった、上田恵子35歳それに真田厩舎に所属する女性ジョッキーの武田志帆26歳が祝杯をあげていた。
「志帆ちゃん、いったいどうなってんの~『アルフレート』が、あの最終コーナーを曲がってから、またギヤーあげたよね~」
ジョッキーの武田志帆に調教師の真田凛子がびっくりしながら聞いてきた。
「そうなんです、いつもだと、あそこまでがスタミナのギリギリのところで、その勢いだけで残りの直線は粘るんですが~」
「なんか~、『アルフレート』が”まだまだ、余裕だ~さ~てこれからだぞ~”というような感じでした。」と言いながら缶ビールを飲む志帆
「キャ~これ見て見て、SNSで『アルフレート』の”額のハートが、かわいい~次のレースはいつかな?”て、こんなにバズているわ」とスマホを振り回しているのは勝利よりも『アルフレート』の人気を気にする元『馬ガール』の馬主の上田恵子
「次のレースは2週間後の1勝クラスのレースです、これに勝てば次は2勝クラス、3勝クラスを突破してオープン特別を勝ちGⅢ‥GⅡと勝ち続けて、最後はG1を狙います。」
「まだ、まだ、先は長いですが、『アルフレート』が今日の走りをしてくれれば、女性の調教師で初めてのG1馬の育成実績ができます。‥‥夢じゃないかもしれません」
真剣な顔で話す日本中央競馬協会、初めての女性調教師の真田凛子だった。
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なぜか俺の目の前には鹿の群れが‥‥そして右手には鹿せんべいというものが握られていた。
天城道場に入門を許されてから数日後、高校生の最大イベント‥二泊三日の修学旅行‥今日は東京から新幹線と近鉄特急を乗り継いで、奈良公園にきている。
本来ならば昨年の秋に沖縄に三泊四日の予定だったが、その時インフルエンザが学校や都内で大流行してしまい、延期となって規模も縮小してしまい、三年生のこの時期になってしまった。
周りではクラスメイト達も鹿に囲まれながら「キャ~かわいい~」とはしゃぎながら鹿せんべいをばらまいていた。
”なんで~野生の鹿が逃げもしないでこんなに人になついてんだよ~”
”これじゃ~いくらでも狩りができるぜ、鹿肉のステーキが食い放題だ!”
”ご主人様、ダメですよ~ここの奈良公園では鹿は「神の使い」と呼ばれる神聖な生き物になっていて、ここで鹿に傷つける様なことをしたらすぐに警察につかまりますよ!”
”おとなしく、その鹿せんべいをあげてください”
”くそ~しかたねいか~”
エーアイにそう言われて、まとわりつく鹿たちに持っていた鹿せんべいを食べさせる団長だった。
”17歳にもなって、なにが、楽しくてみんなと旅行しなければいけないんだ~”
”むこうでは、もう大人の扱いだぜ、独り立ちしてもおかしくない年なのにな~”
”こっちの世界は違うのですよ、ご主人様、これは団体行動や友人達とのコミニケーションという経験を旅行という中で体験することが目的です”
”ご主人様も新幹線に初めて乗って子どものように驚いていたではありませんか‥‥”
”こちらではこういう経験をして大人の階段をあがっていくんですよ。”
”チェッ、めんどうくせな~”
そこへ、すっかり聴覚がもどり明るくなった天城玲亜が団長のそばに寄ってきた。
「向こうの世界でも、鹿はいるのかしら?」
団長の素性を知っている玲亜が聞いてきた。
「ああ~いるぜ~、こんなにかわいくないけどな‥‥」
「ツノ鹿と呼ばれてCクラスの魔物だ。」
「刃物のように鋭いツノで人を襲う凶暴な鹿だ。見かければ討伐対象になる。」
「それに、貴重な食糧源であり、その皮や立派なつのは衣服や道具の材料としても欠かせない存在だ。」
「えっ!……それって冒険者ギルドとか言う組織にでも頼むのかしら」
異世界小説が大好きな玲亜が食いついてきた。
「ほう~、あんたよく知っているな~、そうだギルドに依頼する事になる、あとは、素材が金になるので専門の猟師が狩りで取ってきているかな」
「あんたなんて呼ばないでよ、二人の時はレイアでいいわよ、」
ちょっと照れくさそうにそう言う天城玲亜だった。
”レイアか~‥‥”と妻の若い頃に似ている彼女を見つめる団長だった。
そんな事を思っていたら、壮太がやってきて‥‥
「あっちで、外国人が、嫌がる赤ちゃん鹿を抱き上げ記念撮影しているぜ、あれは、まずいんじゃないかな~」
公園のあちらこちらに『シカは国の天然記念物です。たたいたり、鹿にむやみ触らないでください』と、各国の言葉で注意事項が書かれていたが‥‥
アジア系のカップルが鹿の親子を盛んにかまっていた。
女性の方が生まれてからそんなにたってない、怖くて震えている赤ちゃん鹿を抱きかかえて彼氏がそれをスマホで撮影していると、母鹿が子どもを心配してそば「チュイーン~チィーン」と子鹿を心配して鳴き声で呼んでいた。
それを相手にせずに撮影を続け、しまいにはその彼氏はその母鹿の背にまたがり、今度は彼女がスマホでその様子を撮影していた。
周りでは、注意する日本人もいたが無視してその鹿の親子をかまっていたのである。
”ルールを守らね奴は、ゆるせねな~”
”はい、ご主人様、あのカップルの名前とかわかりませんか~”
”ちょっと、待ってろ!”
団長が鑑定スキルを念じて二人を調べた。
男性 王陽明 年齢27歳
住所 香港豐景園※※‥‥‥
女性 陳凜花 年齢24歳
住所 香港中環※※‥‥‥
”フフフフ、、ありがとうございます、これで完璧です。あの二人の行為を『日本の奈良の神聖な鹿に手を出すバチあたりな馬鹿カップル!』のタイトルで匿名動画をSNSにあげました。”
”二人の名前から香港の通信局を探り、スマホの番号もわかりましたので、名前、住所、スマホの番号まで個人情報をのせて、英語、中国語、など世界中の言語で各国のネットニュースのトップにぶち込んでやりましたよ。”
”エーアイ、やるじゃねいか~”
何も知らない、カップルはしばらく鹿をかまっていたが奈良公園の職員がやってきて注意するとやっと親子の鹿からヘラヘラしながら離れていった。
その後から数分もしないで二人のスマホが鳴りっぱなしになった、世界中から二人の動物虐待へのクレームの電話が殺到したのである。
国に戻っても地元のニュースにその動画が何度も放送されて結局、TVを通じて謝罪会見をする羽目になったのである。
つづく、、、




