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スターダスト//テオディシー  作者: クリームコーラ


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第10章 「理解」

自分がかつて救ったはずの青年が成した所業を目の当たりにし、

若い警官は奥歯を強く噛み締めた。


「……ふざけるな……」


激しい雨音の中、

彼は怒りを吐き出すように叫ぶ。


「怪物が……

あんな簡単に消えただと!?

じゃあ、俺たちの戦いは何だった!?

俺たちは――

お前の物語の“背景”に過ぎなかったって言うのか!?

ふざけるな!!」


若い警官は、

考える間もなく青年のもとへ駆け出した。


一方、

遠くからそれに気づいた青年は、

ぎこちなく、

まるで場違いな――

温かな笑みを浮かべようとした。


だが――


「ドスッ!」


鈍い音と共に、

若い警官の拳が、

青年の左頬を強く打ち抜いた。


「……なぜ……?」


青年は、

黒いアスファルトへと視線を落とし、

かすれた声で呟く。


しかし、

その強烈な一撃にもかかわらず、

青年の身体は一切揺らがなかった。


それどころか――

その表情は、

あまりにも――

弱々しかった。


「……何をしている?

知っているだろう。

一般人の力じゃ、

スターダストの使用者は傷つかない」


その言葉に、

若い警官ははっとして拳を引いた。


次の瞬間――

冷静さを取り戻し始めた頭とは裏腹に、

殴った右手に、

遅れて激痛が走る。


――分かっていた。

最初から、

分かっていたはずだった。


自分の拳が、

スターダスト使用者に

通用するはずがないことなど。


それでも――


「だったら、

なぜ最初から助けなかった!!」


若い警官は再び叫ぶ。


「見ろ!!

どれだけの人間が死んだと思ってる!?

市民も、

仲間も……

そして――隊長もだ!!」


青年は、

何も答えない。


「くそったれ!!

お前のせいで……

仲間たちが……

隊長が……

全部、無駄死にだ!!」


その言葉を受け、

青年は口を開いた。


――だが、

声は出なかった。


結局、

彼は沈黙を選ぶ。


無視されたと悟った若い警官は、

青年の胸倉を掴み、

顔を近づけて怒鳴り散らす。


「答えろ!!

黙ってるだけか!?

おい!!

なぜだ!!

なぜ、

目の前で皆を死なせた!!

答えろォォ!!」


青年は、

暗く沈んだ空を見上げた。


雨粒が、

弾丸のように

彼の瞳を打つ。


……ゆっくりと、

彼は目を閉じる。


そして――

再び警官の顔を見つめ、

静かに口を開いた。


「……すまない」


たった一言。

言い訳も、

説明もない。


その瞬間――

若い警官の身体から力が抜け、

濡れたアスファルトの上へと崩れ落ちた。


「まだ分からないのかァ!!

全部!!

全部お前のせいだ!!」


警官は地面を叩きながら、

喉が裂けるほど叫ぶ。


「もしあの時!!

お前が戦ってくれていれば!!

俺たちは!!

こんな風に死なずに済んだんだ!!」


「これは全部!!

お前のエゴだ!!

神が本当に正義なら!!

必ず!!

お前を裁く!!」


その叫びを受けながら――

巨大な剣を携えた青年は、

ただ憐れむような視線で

若い警官を見下ろしていた。


だが――

彼は一切、

慰めようとしない。


その姿はまるで、

祈られる存在――

あるいは、

断罪を受ける神の像のようだった。


「……俺は間違っていない。

そうだ……

今の俺は、

ただの一般市民だ」


青年はそう呟き、

背を向けて歩き出す。


「行け!!

逃げろ!!

責任から逃げ続けろォ!!」


背後から、

若い警官の叫びが降り注ぐ。


「神は忘れない!!

俺たちは忘れない!!

俺も――

絶対に忘れない!!」


「この命にかけて!!

必ず叩き潰す!!

思い上がったスターダスト使用者どもを!!」


「…………」


青年は足を止めない。


「……聞く必要はない。

俺は正しい……

そう、正しいんだ……」


「システム・スタンバイ」


無機質な音声が響いた瞬間、

巨大な剣は光を失い――

再び、

青年のポケットに収まる

小さなスマートフォンへと戻った。


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