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スターダスト//テオディシー  作者: クリームコーラ


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第9章 「雨降って地固まる」

暗く、

唸りを上げる空の下。

激しい雨が大地を叩きつける中――


山羊頭の怪物は狂ったように暴れ回り、

かつて自らを埋めていた瓦礫を次々と掴み上げ、

周囲へと投げ飛ばしていた。


「グルォォォアアア!!」


怪物の正面で、

リファルと若い警官は動かずに立っている。


リファルは沈黙したまま、

怪物の動きを冷静に観察し――

一方、若い警官は、

抑えきれない怒りをその瞳に宿し、

リファルを睨みつけていた。


「グルォォォアアアア!!」


怪物は再び咆哮を上げ、

リファル目掛けて突進を開始する。


それに応じるように、

リファルは炎の剣を振るう準備を整えた。


「グルォォォアア!!」


――だが次の瞬間。


怪物は走りながら、

進路上にあった巨大な岩塊を次々と掴み、

リファルへと投げつけた。


無数の岩が雨のように降り注ぐ。


リファルは即座に走り出し、

飛来する岩塊を回避し続けた。


だが、

逃げながら彼は気づいてしまう。


――自分が避けたその岩が、

周囲の建物をさらに破壊していることに。


「……チッ、

もう他に方法はない……!」


(耐えろ……!

絶対に、

この身体を傷つけるわけにはいかない……!)


リファルは力強く、

巨大な炎剣を地面へと突き立てた。


そして――

剣身を斜めに傾け、

その広い刃面で

降り注ぐ岩の雨を受け止める。


リファルがその場で防御に専念したのを見て、

怪物は即座に判断した。


――今だ。


怪物は跳躍し、

巨体ごとリファルへと突進する。


それに気づいたリファルは驚愕し、

剣を引き抜き、

迎撃しようとする。


しかし――

間に合わない。


怪物はすでに、

彼の目前まで迫っていた。


「くそっ……!

なんで俺は、

こんなにも愚かなんだ……!?」


次の瞬間、

怪物は両方の鋭く硬い角を突き出し、

全力でリファルへと突進した。


だが、

反射的な本能が彼を救う。


リファルは即座に左腕を掲げ、

その身を守ろうとした。


「ドォォォン!!」


凄まじい衝撃音と共に、

リファルの身体は吹き飛ばされ――


そのまま、

かつて彼が身を休めていた

ファストフード店の建物の柱へと、

激しく叩きつけられた。


「……くそっ。

左腕が……」


リファルは、

破れ、血に染まった左腕のジャケットを睨みつけた。


「チッ……

どうやら、

この怪物を相手に

慎重すぎるのは禁物らしいな……」


「グルルル……」


山羊頭の怪物は、

自らの攻撃が通用したことを理解したかのように、

愉悦に満ちた笑みを浮かべる。


だが――

リファルは怪物を見ていなかった。


彼の視線は、

ただ左腕の傷に注がれている。


そこに宿るのは――

恐怖ではない。


自分自身への、

激しい怒りだった。


「……もう、いい」


「殺す」


「…………」


リファルは言葉を止め、

左手を強く握り締める。


「……いや、

燃やし尽くす」


その口元には、

正気を失った者の笑みが浮かんでいた。


「跡形もなく燃やしてやる……

家族が、

抱きしめることも、

触れることすらできないほどにな……」


リファルは巨大な炎剣を、

自らの背後の地面へと突き立てる。


そして右手を掲げ、

怪物へと挑発するように突き出した。


「来い……

この身体を、

お前にくれてやる」


「この剣は――

我が神より授けられたものだ。

お前の巨体は、

灰と炭になるまで焼き尽くしてやる!!」


挑発と隙を見逃すはずもなく、

怪物は即座に地を蹴り、

全力で突進する。


「グルォォォアアア!!」


「来い……!」


次の瞬間――

怪物は猛烈な速度で距離を詰め、

その巨大な頭部を

リファルへと叩きつけた。


だが――

リファルは、

その一瞬を逃さなかった。


彼は背後に突き立てていた剣の柄を、

右手で瞬時に握り直し――


左手を、

怪物の角へと押し当てる。


「バァァァァン!!」


水面が強烈な圧力で押し潰されたかのように、

リファルの背後の地面は粉砕された。


だが――


「グルォォォアアア!!」


怪物は悲鳴を上げ、

観戦していたすべての者が、

息を呑む。


なぜなら――

リファルは、

なおも立っていた。


左の掌を、

怪物の二本の角の間に押し当てたまま――。


「死ね」


歪んだ笑みを浮かべ、

リファルは静かに言い放つ。


「ドォォォン!!

ドォォォン!!

ドォォォン!!」


左の掌から、

凶悪な爆炎が立て続けに噴き上がる。


灼熱の爆音の中――

怪物の絶叫と、

魂を裂くような咆哮が響き渡った。


怪物は即座に頭を跳ね上げ、

リファルの攻撃から逃れようとした。


だが――

空を仰いだその瞬間、

怪物は理解してしまう。


すでに遅い、ということを。


リファルの左の掌は、

まるで溶接された鋼鉄のように、

怪物の頭部へと

固く、固く貼り付いていた。


逃げ場は、ない。


リファルは再び、

大きく口元を歪めて笑う。


そして――

燃え盛る巨大な剣を、

怪物の肩口へと

深く突き立てた。


「グルォォォアアアア!!」


怪物は凄まじい悲鳴を上げ、

必死に剣を引き抜こうとする。


頭を激しく振り、

リファルを振り落とそうともがく。


だが――

すべては、無駄だった。


「燃え尽きろ……

灰になるまでだ」


リファルの怒号と同時に――

炎剣が、

怪物の体内から爆発する。


内側から噴き上がる灼熱の炎が、

怪物の肉体を一気に焼き尽くす。


「グルォォォアアア!!

グルォォォアアア!!

グルォォォォォォアアア!!」


絶叫と共に、

怪物は狂ったように暴れ回る。


だが、

激しく降り注ぐ雨は――

消火ではなく、

破壊の終わりを告げる合図だった。


焼かれ、

崩れ、

砕け――


怪物の全身は、

黒い灰となって

雨に流されていく。


「感謝しろ」


炎が消えゆく中、

リファルは静かに言い放つ。


「これは――

我が神が与えた、

お前への裁きだ」


そう言い残し、

リファルは背を向け、

戦場を後にした。

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