第九話
出発して三日が経った。
順調に道のりを進む。
用意してくれた寝台馬車は非常に快適でベッドのありがたみがわかる旅だった。
何度か魔獣や大型動物の襲撃に遭い、その度にロイと戦闘時のお互いの立ち位置やサポートを擦り合わせていく。
今の所、ファリンの身体強化を脚に集中して、スピード重視で攻撃、ファリンの防御と敵のターゲットをロイが担う型で連携が上手くいっている。
ロイがニールから風魔法を使える様に言われ、ファリンが何とかマナが修得出来始めているので最近はニールからも風魔法を習っているファリン。
「風魔法使える気がしない」
とぼやきながらも風魔法が使えると、最低でも今の2倍は早く動ける様になるし将来、グリフィスに騎乗するなら風の魔術なり魔法を使えるのが最低条件だと言われ、苦い顔をしながらマナ取得と風魔法修得を頑張っている。
そうして四日目に立ち寄った宿場街で騒ぎになる。
どうやらエルベム家の家紋が入った寝台馬車とニールが目立った様で、領主の関係者らしい貴族がやって来た。
「第二王女ファリン姫様でございますね」
いかにも貴族ですっと言う派手な格好に私設騎士だろうかゾロゾロと10人ばかりを引き連れて、一泊のお世話をお願いした教会に現れた。
丁度、ロイが一泊の御礼にとニールの噂を聞きつけた人達に治療をしている所に現れ、待っている人達を私設騎士が排除し始めた。
「いかにも、私はローエンス王国第二王女ファリンですが何のご用意かしら?」
排除された人の中には酷く怪我をしてやっとの思い出でここまで来た人もいたのを見て、思わず殺気を込めてしまう。
その殺気に気がついてファリンが肩掛けしていたスリングからメアが顔を出す。
殺気に押されてたじろぐいかにもな貴族。
「この街に立ち寄られるとお聞き致しまして、是非我が家でお過ごし頂きたくお迎えにあがりました」
とファリンが殺気を飛ばした先がわかりその裏の私設騎士にイタズラをするメア。
バタバタバタバタ
控えていた私設騎士全員がその場で気を失う。
何が起こったかわからないいかにも貴族。
ファリンがさらに殺気を込めていかにも貴族に返事をする。
「私は今、ここへ集まってきた治療を必要とする方々へのお手伝いをしております。それに今日はこの教会でお世話になる予定です、貴方のお誘いはお断りさせて頂きます。どうぞその役に立たない連中を連れてお帰りなさい!」
迎えに来たいかにも貴族は慌てて外へ飛び出して待たせていた馬車に乗り込んで消えていった。
「次の方どうぞー」
ロイは今のやり取りを横目で見ながら集まってきた人達に治療を続けていた。
それから治療を求める人達が居なくなり、残った気絶したままの私設騎士達を教会の敷地外に引きずり出して教会の門を閉めた。
神父やシスター達は心配してたが、多分メアが今晩遊びに行くのでこれからは住みやすい街になりますよと説明したが今一理解出来て無かったみたいだった。
次の日の朝、昨日引きずり出した騎士達は何時の間にか居なくなっていて、出発の為に買い出しをしようと街の市場に行ったら何やら騒がしい。
どうやらこの街の領主一家が全員夜逃げしたらしく、朝から領事館で働いていた人達がパニックになっているらしい。
そんな事は関係無いとばかりに我が道をいくロイ。
昨日の臨時治療院で治療した人達が行く先々で治療のお礼にと寄付を貰い、帰る頃には手押し台車に一杯になってしまったので必要な分だけ貰ってあとは教会で消費してもらうことにした。
よいよ出発って所で今度はちゃんとしたお迎えが現れた。
一様王族なので叔父様から早馬が出されたとは思ったていたが、向こうも慌てて来たらしくバラバラでの到着となっていた。
取り合えず昨日会った事を説明し、領主不在は住民に不利益が大きいので最初に来た王宮文官に第一王女の職権を使って任命しておき。
任命された文官はその場でうなだれてたけど、どこぞの子爵の三男だった人らしく残る代わりに男爵に爵位させると約束したら喜んで引き受けてくれた。
めんどくさい事を文官に押し付けて、街を出発出来たは良いが、ぞろぞろと後から遅れてきた出迎えがやってきてその度に馬車が止まる。
鬱陶しいので先触れをだしその場で待機させ、合流したらそのままついて来るようにした。
途中で第二近衛兵団団長と丞相補佐が待っていて、あまりにも小言と注文が多いので迎え用の馬車に乗ったが、景色も見られない移動になったので本当につまらなくて二度と乗らないと言ってロイの寝台馬車に戻り、マナ習得と風魔法の練習、卵にオドを流して過ごす。
エルベムの街を出て六日目、明日には王都に着こうかと言う時にとうとう卵に動きがでて、殻にひびが出始める。
そこから段々広がるが中々殻を破るまではいかず、結局出てきたのは朝日が昇った直後だった。
「ファリン、最後あなたのオドを流し下さい。」
「分かったわ」
ゆっくり優しく卵にオドを流すと殻を破って出て来るグリフィス・・・?
ピィィィィィィィ!
「ロイ・・・、グリフィスの卵なのよね?」
「そうですね・・・、そのはずです・・・」
出てきたのは黄金目と嘴に頭から尾を緑から金色に輝く羽根が生え見事に大きな隼の姿をした鳥だった。
「グリフィスよりも大きくない?」
「そうですね、グリフォンと同等、いや一回り大きくなるかもしれませんね」
雛にしては大きいその雛はまだ目が見えていないようで必死に鳴いて母親を探している。
「ファリン、マナを手に集められますか?」
「こ、これで良い?」
ファリンは両手に小さなマナを集める、不安定でロイが集めるマナより形がいびつではあるが確かにマナが集まっている。
「それを出てきた雛の嘴に近づけて」
そっと雛の前に両手を差し出すファリン、すると鳴いていた雛がマナを感じ取り両手に集めてたマナを嘴から吸い取る。
ピィィィィィィィ
突然雛がファリンにすり寄り縋り付いてくる。
「え、なに、ちょっと・・・」
戸惑うファリンに説明する。
「自然界の魔獣は、特に鳥類の特製のある生き物は今に見たに生まれて直ぐに自分の子供にマナを与えます、グリフォンも、グリフィスも親との認識はマナだったりオドでしています、人からふ化したグリフィスは飼い主が出てきてすぐに風魔術を与える事で親と認識させるみたいなのですが、私もその子は初めてみましたので、貴方のマナを与えたんです」
「という事は私はこの子の親という事?」
すり寄る雛をなでるファリン。
「そうですね、毎日必ず風魔法とそれなりの食べ物が必要ですが、出来るようになればグリフォンと同等かそれ以上の魔獣となるでしょね」
そこへ鳴き声を聞いたニールがやってくる。
《とうとう生まれたのですね、しかもゴールドウイングとは珍しいですね》
「ゴールドウイングって知らないですね」
《私、スレイプニルが最速の生き物などと言われてますが、実は違うのですよ、最速はその子、ゴールドウイングなのですよ》
「それは初耳ですね」
《ゴールドウイングはまず、グリフォンの変異体なので、まず卵が孵らないのと生まれて直ぐに親に捨てられ育たない個体なので、私も一度だけそれを飛んでるのを見たことが有るだけです」
雛を何とか落ち着かせてオドを与えるファリン、そのオドを喜んで取り込む雛。
「ニールより早いとなると、相当ですね」
《そうですね、私は所詮地面を走ってなので、何もない空を本気で飛んで行ったら見えないかもしれないですね》
「ほえー、すごい子なんだね」
と雛の頭を撫でるファリン、それが気に入ったのか喜ぶ雛。
「これからお肉が要りそうですね」
《そうですね》
新たに生まれた雛の世話が大変になると予感するロイとニールだった。




