第八話
朝、起きると卵に違和感がある。
「ん~、なんだろう・・・、なんか違うんだよなぁ・・・」
ノックがされる。
「ロイだけど入っても大丈夫かな?」
「どうぞ~」
卵を前に悩んでいるファリン。
「どうしたの?」
「いや、なんかすごい違和感があるのよこの卵」
ベッドから降り、なにが違うのか観察するファリン、すると気が付く。
「あっ、大きくなってる!、いや一晩でこんな大きくなる?」
「あー、もしかしたら私とメアがマナを入れ続けてたかも」
「寝ながらなんて出来る事なの?」
まるで珍獣をみるかの目線を飛ばすファリン。
「出来ますよ?、何気に野宿してる時なんて範囲結界張ってたりしますから、どうしても必要なんですよね」
「本当に人間なのかしら、心配になって来たわ・・・」
「しっかり人間ですよ?、もう婚約までしてるので今更ですよ?」
とファリンの左手の薬指に指輪をはめるロイ。
「ん、指輪?あれ?勝手にサイズがあったのだけど・・・、またぶっ飛んだものじゃないでしょうね?」
「小さなヒヒロイガネがあったので作ってみました」
「ん~、朝から飛ばしてくれるわね」
「あと、これ」
ロイが渡して来たのはイヤーカフとピアス。
「これもヒヒロイガネとかいうんじゃないでしょうね?」
「それはアダマンタイトですよ」
うなだれるファリン。
「それ、イヤーカフにオドを通すと私のイヤーカフと通話できます、あとピアスは防護結界陣と個人感知陣がそれぞれ付与してまります」
「軽々アーティファクトを渡さないで・・・」
「ファリンは王族なのでそれ位あった方が良いかなと思って作ったんですが・・・」
何かをあきらめるファリン。
「私、確かに直感を信じたけど、これは予想の上の上だったわ・・・」
「なにかいいました?」
「ん、なんでもない」
それぞれに使用者制限の魔術を施し、ファリン専用となる。
指輪に付与が無いと気になったファリンが聞くと「ヒヒロイガネ自体に不純除去の効果を持っていて加工まではオドで何とかできるますが付与となるとマナを使って魔法陣を成形しないと出来ないのでやめておきました」と返事が来た。
もう、婚約の持参金なんて10倍以上、歩くアーティファクト状態になってしまってるファリンだった。
「ふははは、諦めいファリン、自分の直感は想像以上に正しかった証明じゃ」
朝の一件を説明したら笑い飛ばされる。
まあ、確かにこの人以上財力も戦闘能力も上回る人は世界中探して居ないと思う。
さっき、持参金代わりの七色の瓶を叔父様に渡す時に間違ってバックから七色の杯を一瞬出して来たのを止めなかったら大変な事になった思う、あのバックは世界で一番やばい物だったのを忘れないようにしよう。
そうして、あれよあれよと王都に出発する日が来てしまう。
さっきやばいバックから、「はいこれ」と渡されたシュリンクを肩から掛けるとその中にメアが入って来て満足そうに寝てる。
多分このシュリンクも相当やばい代物だと思われるのであえて素材は聞かなかった。
まあ、メアが満足ならそれで良しと思う。
グリフィスの卵は結局あれ以降大きくはならなかったが色が金色に変化していた。
「段々色まで変わって来たけど爆発はしないわよね?」
「ははは、爆発はしませんよ、くちばしは出て来るでしょうけど」
エルベム卿が用意した寝台馬車に荷物を積み込み、馬車を引く馬をどうしようと思ったがニールが嬉しそうに引きたいと言い出したので任せることにした。
護衛をどうするかを会議してたみたいだがファリンの「護衛いらないでしょ」の一言で無しとなった。
「ロイだけでも十分なのに、ニールとメアが居れば王国近衛兵、一個連隊来ても守れるでしょ?」
と後から言われて、何となく納得した。
ここから王都までは普通に行けば一週間の旅、短くなるか長くなるか、多分長くなりそう。
自分専用のレイピアを貰ってから使えるように鍛錬したのだけど恐ろしかった、丸太を的に突いてみたら、抵抗が全く無かった。
何とも言えない、表現出来ない、入っていく感覚だけが手に伝わってきて丸太が丸太では無かったから入っていく感覚になれるまでに3日は掛かった。
最高級のレイピアは「羽根の様に軽い」とは良く表現されるがまさに軽く、手になじみ、身に着けて安心する武器だった。
ロイの方丈も気になり持ってみたら持てない、重くとても持てるものでは無かったが、やはり自分で作ったそうだ。
ほぼ1日掛けて3人でマナを作成陣に送りづつけて出来た物らしく、メアがその時の文句をいまだに言ってるのを聞いて、レジェンダりやエピッククラスの物を作り上げてると思われる。
貰ったレイピアもそのクラスじゃないかと思う。
こうしてロイとの旅がはじまる。
「ねえ、マナ取得って馬車に乗りながらでも練習出来るの?」
ふと思った疑問をロイにぶつけてみる。
「難易度は上がりますができますよ、普段は歩いてたり走ってたりしながらマナの取り込みが出来るようになるのが最終目標ですから」
「そうなの?」
「そうですね、戦闘ではオドよりマナを使った方が有利ですね、ほぼ限界の無いモノですから」
「ロイは攻撃魔術や魔法は使えないのよね?」
「そうですね、基本の攻撃はこの方丈になりますね、身体強化で底上げして、自己回復しながら戦う事もあります」
「なにそれ、相手は攻撃しても無かった事になるの?」
「まあ、そうですね余程重症でない限り回復できますから」
「勝てないじゃん」
「そうなりますかね、とは言っても心臓を一突きとか首を切られるとか、一撃で即死するようなのはダメですよ?」
「それ、この国一番の剣士でないと出来るかどうかわからないじゃん」
「世の中、広いですから、何があるかわかりませんよ?」
そんな話をしながらのんびりニールが引く馬車に揺られて王都までの街道を進む。
途中、ニールの存在に怯えて出てきた熊やらジャイアントサーペントなどが襲ってきたがファリンが訓練の一環で狩ってしまう。
「ロイが居てくれると安心して狩れるわ、戦闘中に回避だけ考えれば何とかなるから」
ファリンが嬉しそうに解体しながら言っていたが、実際ロイもファリンの実力とすり合わせしたかったので丁度良い訓練になっていた。
移動中ファリンはマナの取得訓練とグリフィスへのオドの供給、偶に出て来る魔獣や獣の討伐をし、ロイはファリンのサポートや家事などを担当と自然と役割が出来ていて、エルベム卿からもらった寝台馬車は通常は商人が良く使う馬車で荷台に魔術式のコンロとベッド、カーテンで区切られたシャワー室兼トイレなどが設置されている。
通常の貴族用の馬車は移動用の座席のみで長距離の移動時はそこにベッド以外がそれぞれ単体の荷台としてついてく、寝るときは従者が就寝用のテントを設置するので結構な人数が移動する。
今回は二人が移動するだけなのでエルバム卿は寝台馬車を用意した。
ベットが一つしか無いけど婚約して同衾までしてるし、叔父様は「こんな優良物件、もらえるうちにもらとっけ」と笑い飛ばし、既成事実を作ってしまえばあとは何とでもなると思ったファリンだった。




