第十話
「あなたの名前はウィンよ」
生まれて直ぐにファリンが親代わりのマナとオドを与えた事により、すっかりファリンが親と認識しているウィン。
名前が無いと不便との事で親代わりのファリンが即決で決めた名前。
最初は首を傾げていたが名前を呼ばれてるうちに認識したらしく、ファリンが名前を呼ぶと嬉しそうによってきている。
王都に入る手前でウィンの扱いについて第二近衛騎士団団長と丞相補佐の四人で話し合い、ファリンのペット扱いにすることで決まったが何かしら証明がウィンに着けなればならない。
ウィンに関してはグリフィスみたいなはっきりとした体躯ではない為に魔獣と勘違いされることが分かり切っていたので首から下にファリンの名前とウィンの名前の記載したわかりやすいネームプレートを下げることにした。
ネームプレートを作ろうとなった時にロイがバックから青白い金属インゴットを出そうとしたのを見逃さず、銀白色したインゴットに変えさせた。
こうして王都の門を入る。
多分もう戻らないと思いひっそり出て行った門を再びくぐる、通りを往来する人々の声、細い裏路地に通じる道には座り込む人、色んな匂いが混じってくる風、何もかもが逃げ出した時のままだった。
馬車とその一行は王城の開門された大正門の中央を入っていく。
ぞろぞろと一行が入り終わると大正門が閉じられ、そのままロイ達の馬車はそのまま先頭の馬車に付いていく、後ろの馬車はその場で止まりそれぞれ片づけに入ってる。
もう一つの門が開かれそのまま進み、先導の馬車に付いていく。
やがて正面に見えていた王宮から横へそれ、緑に囲まれてひっそり建っている建物の前に止まる。
「ファリン様!」
玄関からメイドの一人がファリンを呼びながら走ってくる。
「ミヤ!」
その姿を見つけファリンもミヤと呼ばれるメイドの元へ走る。
二人が抱き合い涙がこぼれている。
「ファリン様お久しぶりです、あの頃と変わらずますますお転婆のままで嬉しゅうございます」
「そこはおしとやかにではないの?」
二人笑い泣きしながらの再開だった。
「おかえりなさいファリン」
扉の奥から痩せて色白の優しいオーラがにじみ出ている美人の女性がメイドに支えられ出迎えに来た。
「お母さま!」
ファリンがその女性に向かって歩いていき抱き合う。
「ファリン、大きくなって、別れた時よりとてもいい顔をしていますね・・・」
女性の顔にも涙が落ちる。
「またこうしてお母さまにお会い出来る日が来るとは思いませんでした」
「そうね、またこうして会う事が出来るとは思いませんでしたね」
ニールの連結具を外し、馬車を建物の横に置き結界魔法陣を張る。
ロイがファリンの元に向かうとなぜかメイド達と抱き合って泣いていたのを、ファリンの母親が椅子に座り、それを眺めている。
「えっと、初めましてこの度ファリン姫と婚約することになりましたロイ・エルベムと申します」
母親の前に膝を着き挨拶をする。
「あなたがファリンを貰ってくれるロイさんね、私はファリンの母のネイルと申します」
ロイがバッグからエルベム卿から預かった書簡を取り出し、ネイルに手渡す。
「ここではなんですから、どうぞ中にお入りっ下さい」
そこで馬車からファリンを呼ぶウィンの鳴き声が聞こえる。
ファリンが慌てて向かい、メイド達も慌てて付いていく。
「ファリン姫、結界魔法陣を設置してます、私達しか入れませんから気を付けてくださいね」
すぐにメイド達に指示をだす。
「あなた達はそこで待ってて、こっちに入れないから」
「相変わらずねあの子は」
娘の元気な姿を見て目じりが下がる。
「三者三様の利害の一致がありましたが、私はファリン姫と今回婚約出来て良かったと思ってます」
「あら、そうなの?、エルベム卿が強引に推し進めたわけではないの?」
「多少はありましたが、私も、ファリン姫もそれぞれお互いを知った中での事ですから助かってます」
ネイルとロイがお互いほほ笑む。
外から戻ったメイド達がお茶の準備をし、ロイとネイルがテーブルに着き、ネイルが受け取った書簡を確認する。
「エルベム卿からの言伝は承知しました、ここの館の地下の倉庫があります、そこへお願いされた物を置いてください」
「わかりました、明日にでも早急にさせていただきます」
そこへウィンを連れてファリンがやってくる。
「お母さま、見て凄いでしょ、この子ウィンっていうの、グリフォンの変異体なんだって」
まるで子供が母親に宝物を見せに来たようなキラキラした目で連れて来るファリン。
「あらら、本当に多い鳥ね」
「そうでしょ、凄いでしょ」
ネイルが咳き込み辛そうに、ぐったりとし始める。
「奥様」
慌ててメイド達がネイルに駆け寄る。
ロイが手を差し伸べ、ネイルを支える。
「毒ですか・・・」
はっ、と顔をするファリン。
「お母さま!、まさか、あの男が!」
「ファリン、国王様をそんな風に言ってはなりせん」
顔色がみるみる悪くなるネイル。
「遅効性ですね、わかってて摂取してますね」
その一言でファリンが動揺する。
「なんで!、わかってるってなんで!」
「ファリン、貴方も分かってるでしょ?、私とあなたの立場を」
「いくら、邪魔だからってここまでするなんて」
頬を伝う涙をそのままにネイルに抱き着くファリン。
魔道具で通話しはじめるロイ
《なくすのは簡単だよファリン》
《本当?》
《でも、解毒すると次は直接来るか、即死毒でやってくる可能性があるので、まずこの中の密告者を探すのが先かな》
周りを見回すロイ。
一人、廊下の向こうから立ち止まってるメイドが一人。
その後、ネイルを寝室に連れて行き寝かせ、部屋を出る。
館で出された食事をおえると、ロイは突然眠気に襲われる。
廊下に小さく軋む足音。
ふぁあああ
足音をさせた人物の後ろかには何時の間にか忍び寄る猫。
振り向いた瞬間、
ドサッ
足音をさせた人物がその場に倒れる。
「あからさまですね」
《そうだね、僕の存在知ってたら来ないだろうしね》
「そうですね、メアが居るから出来る作戦ではありますが、そこの転がってるのは今はどんな状態なんですか?」
《今はね、皮膚の下にモゾモゾ何か動く夢を見せてるよ》
「相変わらず、すごい夢ですね」
メアの1つの能力と言っていいものが「夢を見せる」というの能力があり、ロイも一度見せてもらった事があるが耐えられなかった。
《ん、この人ダメだ、快感に変わってる》
「訓練でどうにでもなるものじゃないので、この人の性癖か」
そこへファリンが眠い目をこすって部屋から出て来る。
「うるさいんですけど・・・」
廊下で悶え蠢くメイドが一人とメアとロイ。
「ロイ、貴方そんな趣味が・・・」
《そこで転がってるのはロイを襲って来たやつだよ》
「今、メアが夢見せてるんですよ、えぐいのを見せてるんですけど、この人の場合性癖がそっちみたいだったらしく、そこで悶えてます」
「いいの?、そのままにしておいて」
「あー、たぶん・・・、その人他の夢見せても駄目だと思うのでそのままで良いんじゃないかなと」
《明日の朝、床の掃除が大変そうだ》
「メア、外の始末もお願いします」
《了解、外は一人残せばいいかな?》
「そうですね一人でいいですね、出来れば指示してるのが望ましいです」
《わかったよ》
メアが入口のドアをすり抜ける、外でバタバタと音がする。
翌朝、中で一人、外で一人倒れているメイドと執事が見つかった。




