第五話
私のこれからの旅路を「保障」する上で障害となりそうな事を回避出来るなら回避したい。
本来はニールとメアの3人で旅が出来ればそれでも良かった。
だがメアは猫の姿なので良いのだけどニールはどうしても目立ってしまう。
白どこか本来は純白のドレイクホース「スレイプニル」なのだから仕方がない。
あんな名もない山奥の小屋に居ていい存在ではないのだけど、何故か生まれた時から二人とも居た存在なので、私にとっては家族なのでバラバラに行動するという事は考えられないし、ましてや亡くなったお爺さんの遺言でもある『ニールとメアをフィニステールまで連れて行く』という遺言を実行しているだけなのだから。
街には入らず街や宿場を回避して旅をする予定だったんだけど、直ぐにその計画は頓挫した。
執務室での三者会合?の結果により私はファリンと婚約、それに平民だったはずの肩書がいきなり辺境伯次男になった。
本当に良いのだろうか?
さらにとんでもない話をしはじめてた。
辺境伯領はすでに長男が後継ぎとして決まっており本当に肩書だけの戸籍変更になる、その上ファリンとフィニステールに到着し教皇のサインさえあればそのまま結婚となり王籍に入る事となりそうなのだ。
ただ、フィニステールに行くだけの事が将来の王室に入る事が決まりかけてる事にどうしたものかと考えさせられる。
「さて、ロイ、この書類にサインと血判を、後の事はわしに任せれば全てうまくいく」
「えっと、本当に良いんですか?、私なんかで?」
私はまだ決断できないよ、こんな簡単に先の人生決めるなんて。
「叔父様の次男が嫌なら他の貴族に手紙を出すけど、どうする?」
グリフィンの卵にオドを流しながら良い寄ってくるファリン。
「エルベム卿にお世話になるのはありがたいと思うのですが、ファリンさんとの婚約は良いのですか?」
「さっきも言ったけど、どうせその内知らない貴族か外国の王子とかと婚約、結婚させられるんだから、私としては信頼できて私を守れる人と婚約結婚したいわ、だからロイで良いの、むしろロイが良いわ」
「わしもファリンも合意しておる、後はロイだけだ」
「はぁ、本当に私で良いんですか?、婚約ですよ?」
「私の直感は当たるの、大丈夫よフィニステールまでに私とロイの間に特別な感情が出来ればそのまま結婚でも良いし、出来なければ「仲間」として見てくれれば良いから」
家族変更魔術契約書の欄にサインと血判を押す。
続いてエルベム卿が自分の欄にサインと血判を押す。
エルベム卿の指に回復魔術を掛けて指のケガを消す。
契約書を持って行く執事。
戻って来たのは1時間後だった。
「無事に届出、変更なされました」
そういって退出する執事。
「よし、じゃあ今度はこれだ」
婚約魔術契約書。
この魔術書は他の契約書とは違いかなり特殊な契約書。
サイン、血判してしまうと破棄をするのに教会、王室、当人の三か所のサインが必要になる。
もっとも平民はここまでがっちりとした契約書なんて届けださない。
普通に役所にサインと血判して出すだけ。
もし仮に破談になった場合は本人と街の教会のサインだけで解除出来る契約書がある。
さすがに王室関連の契約となるとよほどでない限り破談にはならないし、あってはならない事だからでするが、この契約書が出来たきっかけは当時の第二王子が隣国の王女と婚約していたが受け入れに付いてきた侍女に一目惚れし、第三国へ駆け落ち、それを知った第一王女が自分の護衛騎士と同じく駆け落ち、さらに王太子妃に内定していた公爵令嬢が第三王子と通じており子供を身ごもるという、王室が大変な事になった為に今後そんな事が起こらない様に当時の王と王妃が王宮魔術師に作らせたのがそのまま残っている。
一度サインして認められると、破棄に相当めんどくさい上に有責側が次の婚約までに5年はサインしても用紙にサインが消えてしまう仕様、さらに破いたり燃やそうとしても復元され契約が続行される凄い仕様だったりする。
なので本当に国にとって必要な婚約や王室関連の婚約に使われる契約書である。
「さ、とっとと書いてしまいましょう」
サラサラと書いて血判を押してしまうファリン。
回復魔術でケガを消して、ロイが記入する。
書き終わると契約書の半分が光る。
「あと半分は教会と国王のサインじゃな、教会はこっちに神父が向かってるから、後の4分の1はファリンが貰えば成立だ」
「じゃあ、決まったも当然ね」
ロイが立ち上がりファリンの前で膝を着き左手を手に取る、ファリンはロイの前で立ち上がり左手を差し出す。
「こんな形での婚約となってしまいましたが、私ロイ・エルベム、婚約者ファリン・ローエンスを生涯、この身を挺して守る事を誓います」
ファリンの左手を手に取り薬指にキスをする。
「私、ファリン・ローエンスは婚約者ロイ・エルベムに生涯、支える事を誓います」
ロイがキスをした自分の左手の薬指にキスをするファリン。
二人の左手薬指根元に「誓いの痣」が現れる。
「さすがに聖職者、説得材料が増えて助かる」
「婚約魔術契約書までするんですから婚約儀式をする覚悟も出来ました」
婚約儀式は教会が行う簡易版婚約契約で、一定の技量があれば聖職者や神父などが行う事が出来る。
婚約魔術契約書程の力はないが表面的に婚約者が居ることが分かるので結婚までの間つなぎとして儀式を行う事が多い。
自分の左手薬指をまじまじ見つめるファリン。
「なんだか、今頃、恥ずかしいというかむずかゆいというか、何とも言えない気持ちになって来たわ・・・」
「今頃自覚してきたか、はははは」
「と、とにかくこれからよろしくねロイ」
「こちらこそよろしくお願いしますねファリン」
突然何かを思い出すロイ。
「ねえ、ファリン、王家では婚約の際、持参金はいるの?」
「あー、どうなのかな?、叔父さん知ってる?」
「時と場合によるが、今回は吹っ掛けられるかもな」
「それは私が元平民だからですか?」
顎に手を当て考えながら答えるエルベム卿。
「それもあるが突然ファリンが婚約するんだ、年頃の娘がいきなり知らない男連れてきたら王家で繋ぎたい縁が無くさないといけなくなるのと、あとは貴族の派閥があるからそれをねじ伏せるだけの金なり物が必要になるな」
ロイが自分のバックを漁る。
「これでいけますか?」
出して来たのは虹色に光るポーション瓶。
「ま、まさかこれは・・・」
「え、ちょっと待ってロイこんなの持ってるの?」
「ええ、まだありますよ?いります?」
二人は椅子に座り脱力する。
「いくらなんでもこれを出されてたら簡単に婚約を認めるぞ」
「そうね、エルベムの肩書要らないわ」
「そうなの?、あとこんなのもあるよ?」
バックから出てきたのはうっすら赤青く光る原石だった」
「ロイ、貴方一体何者なの?」
「ちょっと聞きたいがさっきのといい、それといいまさか「監獄」産か?」
二つをバックに戻してにこっとする。
「あー、あれだちょっと卵置いてファリンも連れてくか」
「わかりました」
「え、何処へ?」
「さっきのゲートの場所」




