第四話
森を走る事15分。
森の木々を抜け、ひと際大きな木が目の前に現れた。
「この中よ」
大きな木の中央部に人よりも大きいが魔獣や隈が入れない程度の穴があり、その中に卵が置いてあった。
「この卵、グリフォン・・・?」
人が抱えるぐらいの大きさの黄色に近い卵がそこにはあった。
「この大きさはグリフォンぐらいしか思い当たらないから、そうだと思うんだけど・・・」
「んー、この子はもともとここに?」
「違うわ、少し離れた崖の中腹よ」
顔が引きつるロイ。
「では、ここへは敵を防ぐため?」
「そうね、あとこれ」
指さしたのは認識阻害の魔術陣。
「これはファリンさんが?」
「私が置いたわ、あと2~3日に一回オドの注入をしてたわ」
「そうですが・・・、この子多分グリフィスからもしれません」
「グリフィスだと生まれない?」
「ふ化は時間が掛かるか、もしくは手遅れかもしれません」
グリフォンが交尾し、稀に卵として生まれることがあり、基本胎児として生まれて来るグリフォンが卵の場合、本能的に抱卵を知らない為、生まれて直ぐに放置や巣から捨てられる。
捨てられるもしくは放置されるのでふ化はまずしないがごくまれに狩人などが運よく持ち帰りふ化させる事が出来れば狩りのパートナーや村の守り神などとして重宝される魔獣だった。
「でも、この卵なんか大きくないですか?」
「そうかな?私見たの初めてだし、いまいち、わかってないのよね」
「とりあえず持って帰りましょう、後は帰って考えますから」
「そうね」
ロイが卵を持ち抱え木から森を抜ける、待機していた馬車に乗り領事館に戻った。
「グリフィスですな」
「そうですよね?」
「そうだな」
エルベム卿、騎士団長、ロイの三人が卵を見て対策を立てている。
「そうなると、とりあえずオドの供給をするべきか、うまくふ化が出来ればこの都市にとって非常に有効だしな」
「そうですね、ただふ化に必要なオドの供給はどうしましょうか?」
「できるだけ、長く緩やかに供給するのが良いと聞いた事があります」
悩む3人、そこへファリンが着替え終わって部屋に入ってくる。
「三人ともどうしたの?」
湯網をし、さっきとは違うがやはり動きやすい服装で現れたファリン。
事のあらましを説明するロイ。
「私、やるわよ」
「お嬢、やるったってオドを一日中、何時ふ化するかわからない事を続けないといけないんですよ?」
「そうですね、オドの供給は出来たとしても、一日中やらないといけないので大変ですよ?」
悩み込む4人。
「オドの供給ってどれぐらいが理想なの?」
「文献などでは薄くで良いそうですが・・・」
「これぐらい?」
卵にオドを注入するファリン。
「もっと薄く少量を切れ目なく入れる感じではないでしょうか?」
「んー、つまり少なく薄くを自然と流してればいいのね?」
「こうですね」
ファリンの手を取りロイからファリンにオドを注入する。
「はぅ」
その場に座り込むファリン。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫・・・」
(今の、感覚は心地良すぎて危なかった・・・)
立ち上がり、今度はファリンがロイにオドを流す。
「もうちょっと、弱くです・・・、そう、それを続ける感じです・・・、無意識にそれを流せるように出来るようになってください」
「無意識は難しいわね・・・、まあやってみるわ」
早速卵にオドを流し始めるファリン。
「ロイ殿、オドを流し続けるのは大丈夫なのか?」
「今、流してる程度のオドなら普段の生活で回復できる程度しか流していませんし、この経験が身体強化の魔術に直結しますから、出来るようになると身体強化が長く出来るようになりますよ」
「そうなのですね!、私も訓練で取り入れてみます」
嬉しそうに訓練所に向かう団長。
「さて、先ほど頼みたい事が出来たと言ったが、この書簡をローエンス王国、首都ローエンスのアヴァル国王まで届けてくれんかの」
(メアが聞いたら嫌がりそうな頼み事ですね・・・)
「もしよろしければこれにはなんと書いてあるのですか?」
「王城の一室、出来れば人の出入りの無い場所に小屋へのゲート設置をお願いしたいと書いてある」
「叔父様、ダメよ、ロイの旅が出来なくなっちゃう」
ファリンが口を挟む。
「しかし、もし何か向こうでの有事の際、こちらへのゲート移動が可能ならここへ玉体をもしくは后妃様、王太子様をお連れできれば、反撃もできよう」
「そうだけど、ロイはフィニステールに向かんでしょ?」
「そうですね」
「まだまだ先が長い道のりなのに王都で止められてしまうわ」
「んー、出来れば設置をお願いしたかったのだが・・・」
卵にオドを流し込みながら、何かいい案は無いか考えるファリン。
「何か理由があればいいのだけど・・・」
「所でファリンは何故王都で足止めされると思うんじゃ?」
「ロイみたいな優秀な聖職者、しかも叔父様や団長と互角でその上マナまで使える人をお父様が逃すはずないじゃない」
(ん?、今、お父様と言ったかな?)
「今、ファリンさんがお父様と言いましたが・・・」
「ああ、私、ローエンス王国第二王女ファリン・ローエンス・エンって名前なの」
「王女様でしたか・・・」
ロイがファリンに膝を着き礼をする。
「ああ、畏まらないで、貴方には私の友達になって欲しいから、礼はいらないわ、言葉使いもそのままでお願い」
「わかりました、という事はエルベム卿は・・・」
「現王の王弟じゃな」
「そうでしたか」
卵にオドを流すのに抱え始めるファリン。
よほどしっくり来たのかまるでお気に入りの人形を抱えるようにする。
「んー、どうしようかな・・・」
「そうじゃな・・・」
侍女がお茶の入れ替えをしたので口を付け、一旦落ち着く。
「かなり、強引だけど方法はあるわ」
「なんじゃ?」
「私の婚約者として登城して、お父様達をだまられてついでに設置して、私がフィニステールに洗礼でも受けに行くと言えば・・・」
思わずむせるロイとエルベム卿。
「「ゲホゲホゲホ…」」
「大丈夫?二人とも」
ケロっとした顔のファリン
「お前は何を言い出すんじゃ」
「そうですよ、ただの聖職者の私とファリンさんが婚約何て許可しないでしょ」
「そこは叔父様が何とか出来るわよ」
「ええ・・・」
にやりとした顔でエルベム卿を見るファリン。
顔に手をあて悩むエルベム卿。
「そうじゃのう・・・、かなり強引ではあるが・・・」
「どうせ近いうちに外国にせよ国内の有力貴族の息子にせよ、強引に婚約はさせられるわ、なら私としては命を助けてもらった恩もあるし、素肌見られてるし?、ロイを選ぶわ」
「ええっと・・・。私との婚約は一旦は仮というか方便としてですか?」
卵を抱えて考え込むファリン。
「そうね、どんな形にしてもフィニステールまでは婚約者って事になるわね、私としてはロイは気に入ってるしそのまま結婚しても良いのだけど」
色々と急展開で話が進む。
「そうじゃな、わしの願いとロイの目的、ファリンの将来を考えたら、その方が良いのかもしれんな」
「いや、エルベム卿まで、良いんですか?、いくら助けただけの聖職者に大事な姪を婚約させて、しかも身分は平民ですよ?」
「ああ、身分何てわしの義息子にしてしまえば王は何も言えん」
「そうよ?、父上は叔父様には強く出られないの」
「良いのかな・・・?」




