第三話
「そうか、フィニステールに向かうか」
「はい、教会本部から呼ばれまして」
執務室に移動し、お茶をしながらサラノで受け取った書簡の事で相談をする。
「と言う事は王都ローエンスを通るのよね?」
横でお茶うけの菓子をつまむファリン。
「ここまま街道を何もなければ通過する事になると思いますが・・・」
ふと何かを思い出すロイ。
「そういえばファリンさんはどうしてあんな森の中に護衛も就けずにジャイアントベアーに襲われたのですか?」
ギクッ
「いや、あの、ちょっと野暮用が・・・」
突然ぶり返さえたくなかった質問をされ慌てるファリン。
「ファリン、正直に答えなさい」
圧を掛けるエルベム卿。
「えっと・・・、実はですね・・・、あの場所から100メル行った所にグリフォンの卵が放置されてまして、たまにひっそりと視にいってました・・・」
「なるほどな、でもどうやってそこの場所へ行ったのかな?」
バツが悪そうな顔をするファリン。
「いや、外に出た時に、たまたま見つけました・・・」
「そうか・・・」
何か考え込むエルベム卿。
「私が保護しましょうか?」
「頼めるか?」
「はい、大丈夫です、その代わり一つお願いがあります」
領主の館の裏側にひっそりと建つ小屋の前に居る三人。
「ねえ、どうしてこんな小屋が必要なの?」
「ちょっと設置したい定置陣を置きたいんです」
「こんな小屋に?」
「ええ、こんな人が来ない場所が良いのですよ」
そういって小屋に入っていく3人。
「ここは好きに使ってもらって構わん、ファリンを助けてもらった礼にとしても足りないが、本当に良いのか?」
「ええ、大丈夫です」
ただ何もない小屋、大きさとしてはそんなに大きいくは無いが、生活しようと思えばできる広さはある。
「では、早速設置したと思いますので、ちょっと下がっててください」
ロイは二人を扉から外に出し、室内に設置式魔法陣を書き出した。
まじまじと入口からのぞき込む二人。
「叔父様、魔術陣にしては大掛かりでかなり細かい術式ですが見た事ありますか?」
「いや、無いな」
2時間位立ったのだろうか、少し疲労の色が見えるロイ。
「書き終わりました、ではマナと通すのでさらに離れてもらえますか?」
小屋から離れる二人、入口に立ち置いてあった方丈を起て、口上を告げる。
「我、天と地の力を借り、この場所にかの地へとの扉を設けん、またこの地への扉の印をつけ、往来の切っ掛けにならん」
口上が終わると共にロイが書き終えた魔法陣が光り、地面に吸い込まれていく。
「何をしたのか説明を聞いても良いか?」
「この場所に【ゲート】の魔法陣を設置しました」
「ゲートじゃと!」
「ゲートってあのゲート?」
少し疲労が見える顔が満足そうにニッコリとほほ笑む。
「はい、ゲートです」
「王城にも設置はされとるが魔術師が3人がかりでやっと軌道できる代物だぞ」
「設置陣自体解明はされたけど再現が難しく、魔術師が5人は居るし、転移先の陣と連携が難しく設置は困難のはず」
「あー、私オドとマナ両方使えるんですよ、だから人よりやれることが多いので出来てしまいました」
そこへニールが現れる。
《ゲートの魔法陣を感じたのですが、出来ましたか?》
ロイとニールがおでこと眉間を合わせ、ニールがロイの疲労を引き受ける。
「出来たよ、これで監獄にいけるよ」
《監獄!》
いつの間にかロイのフードで休んでいたメアが飛び起きる。
《ねえ、早く開いてよ》
「わかったから、ちょっと待って」
ロイが再び方丈を部屋の中で立てるとマナを送り込む。
さっき設置した魔法陣が光だし中央に扉が現れる。
ニールとメアが我先にと入って行く。
「これはどこへ行くんだ?」
「監獄です」
「監獄ってどこの?」
少し考え込むロイ。
「エルベム卿なら大丈夫かな・・・、ファリンさんはまだやめたほうがいいのでそこに居てください」
ロイがエルベム卿をゲートに誘う。
ゲートに入ると一瞬目が眩むが直ぐに見えるようになる。
エルベム卿の視力が回復して目の前を見ると薄暗い牢屋の一室だった。
そこにはニールとメアがワクワクしながら待っている。
「ここは・・・?」
「私たちは監獄と呼んでますが詳しい位置が分からりません」
「ただ、お爺さんの記してあった魔法書から再現した場所なのでお爺さんは知ってるかもしれませんが」
苦笑いをしてバツが悪そうなロイ。
聖域展開
ロイがつぶやくと室内に魔術陣が展開され青白く光る。
「扉を開けると魔物がいます。決して聖域から出ないでください。」
「わかった」
扉を開けた途端目の前に一つ目の魔物ゲイザーが襲い掛かってくる。
「ゲイザー!」
丸腰で来ているのにエルベム卿が思わず腰に手を当てる、しかし帯刀していない事に気が付くが、目の前のゲイザーは消滅する。
《久しぶりの魔物はいいね》
メアが嬉しそうに扉から外に出ていく。
《私の分も残しておきなさい、クロ》
《早い者勝ちさ、シロ》
唖然とするエルベム卿。
「どうなっておるのだ・・・?」
「ここは偶然ですがつなげることが出来た場所なんです、もっとも元はお爺さんが設置してるのかはたまた他の誰かが設置したのかは不明ですが、魔力だまりが発生するらしく扉の外は魔物が徘徊しています」
ニールとメアが外で魔物を相手に暴れる音がする。
「あの二人は地上では存分に息抜きをさせてあげられないので以前は別の場所に設置している魔法陣を使ってここへ来てました」
「で、この部屋は牢屋か」
「はい、その様です、何時何処の誰が居たかわからないのですが、二人の息抜きと静かに本が読める環境なのでたまにつなげて来ています」
「そうか・・・、この事は他の誰かは知っておるのか?」
「いえ、私がここへ来れるのを教えたのはエルベム卿が初めてです」
「では、以降他言無用だ、決して誰にもしゃべるなよ」
「わかりました」
「で、戻るにはどうするのだ?」
再び、魔法陣が展開され、ゲートの扉が現れる。
「ニール!、メア!、後で迎えにくるからね!」
《分かりました》
《了解》
先に、エルベム卿が扉を通過する、その後にロイが入ると扉が消える。
ロイが扉から小屋に戻ると何か考え込んでいるエルベム卿。
「ロイ殿、このゲートはどこにでも設置できるのか?」
「可能ではありますが、設置後に魔法陣を定着させている地面などが掘り起こされたり壊されたりすると使えなくなります」
「そうか・・・、ちょっと頼みたいことが出来た、また後で執務室に来てくれ」
エルベム卿はそう言い残すと執務室に向かう。
「あ、そうそうグリフォンの卵も早いうちに頼む、ファリン案内してやれ」
「良いのですか?叔父様」
喜ぶファリン。
「どうせまた抜け出して、探すより理由をここへ持ってきてしまえば抜け出さないだろ?」
昼食を取り、擁壁の門を出て森の手前まで馬車で移動する。
「では、ファリンさん、身体強化と聖護壁の魔術を掛けますね」
「身体強化使えるわよ?」
「まだオドは使わないでください、完全回復はしていないので」
「分かったわ、ロイお願い」
ファリンの体に白く光る膜が出来る。
「はい、終わりましたよ」
「あなた、魔術は無詠唱なの?」
「そうですよ?いちいち法語言ってたら食われてしまいますよ?」
「まあ、そうだけど・・・」
「さ、行きましょう、後をついていきますから、お願いします」
「わかったわ」
二人はグリフォンの卵がある場所へ森を走っていくのだった。




