第二十八話
良いよ大詰めです。
丞相「外務大臣ワルドネルド、他国への人身売買を行なった罪により逮捕状が出ている、よって貴方を拘束、連行致します」
ワルドネルド「言われない罪状、貴族特権にて拘束を拒否する」
まだ夜も明けず、薄暗い最中を移動している騎士達。
貴族達の住む地区の中でも王城に近く、手入れされた大きな庭を持つ豪邸を取り囲む。
周囲の異変に気が付いた屋敷の従者長が主人を起こす。
主人が門を開けない様に指示を出すが何故か開けてしまう。
主人が慌てて寝間着も着替える間も無く、正面玄関からホールまで入って来る騎士達。
主人の怒号がホールまで聞こえて来るが、ホールで待ち構えていたのは騎士達に混ざり手に書架を持った丞相だった。
ワルドネルド「丞相!、貴様には常識というものはないのか⁉︎」
丞相「常識は人並みにはありますよ?」
ワルドネルド「こんな時間に我が屋敷に押し入って、何が人並みにあるだ、非常識だろ!」
丞相が手に持った書簡を広げてホール全体に響く様に高々に読み上げる。
そして冒頭のやり取りへと繋がる。
ワルドネルドが応じないと、いや初めから応じないだろうと分かっていたのだろう遅れて玄関ホールにこんな状況では無いのなら末代まで語られよう事なのだが今回は逆の意味で語られるであろう。
「私が許可をする、外務大臣ワルドネルドを拘束、後に御前裁判を行う、直ちに捕まえよ」
ワルドネルドの前にはこの国の王が立っていた。
ワルドネルド「こ、国王様・・・、な何故・・・、玉体を・・・」
国王「ワルドネルドよ、今回は流石に手を出してはならん所へ手を出したな」
ワルドネルド「な、何の事でしょう・・・?」
国王「私もな流石にあの剣姫を相手に喧嘩は売れん、しかも叔父上も敵にまわるじゃぁ、流石に無理だ」
ワルドネルド「いや、一体・・・、何を・・・」
丞相「少しの小遣いで我慢しておけば良かったのに、大きなモノを手に入れようとしたからです」
ワルドネルド「私は何もやって無い・・・、やって無い!」
国王「この者を直ちに拘束せよ!」
国王の号令と共に騎士達がワルドネルドを拘束し、王城へと連行していく。
早朝に奇襲され家人達は主人を失いどうして良いのかも分からずに呆然としている。
丞相により家人達は直ちに門の前に全員集められ、順次王城へ取り調べの為に移動させられた。
バルテクス「と言うわけじゃから、すまんが例の箱と一緒に王城で謁見をしてくれんか?」
日が昇り辺り、街の活気が出始めた頃ドラン邸にバルテクスが現れロイ達と朝食をとっていた。
ロイ「それは構いませんが、メアが必要ならかなりの量の対価が必要になりますよ?」
バルテクス「それは構わん、既にワイルドホーンは20頭近く用意しておる」
ファリン「バルテクス師匠、私も行った方が良いよね?」
バルテクス「そうだな、当事者であるからな」
ドラン「私も待機する為に登城させて頂きます」
バルテクス「すまんな、今日で大方ケリがつくと思うが長々と済まなかったな」
ロイ「いえ、どのみち当初に行列で来ても同じ様な日数はかかったでしょうし」
ファリン「そうね、でも別れて正解だったわね」
バルテクス「そう言って頂けると助かる、では準備出来次第登城すると伝えておく」
ロイ「分かりました」
◇
ホルハム(何故、私は王の前に手を拘束され跪いているのだろう・・・、いつぞかや忘れた・・・、あの日黒いモノが私を包み込み、果てし無く何も見えず何も聞こえず何の音も無い場所に連れて行かれた・・・、それ以来私は何をしていたのだろう・・・、気が付いたら、我が王の前にいる・・・)
国王「ではこれより、外務事務次官ホルハム、外務大臣ワルドネルドの人身売買及び国家騒乱計画防止法違反の御前裁判を行う」
国王が宣言をし玉座に座る、国王の前に跪く二人。
ワルドネルドは無音魔術陣を施してある布を口に巻きつけられて声を出しても誰にも届かない。
丞相「ではまずホルハム、貴方は4年前王都の孤児院で預けられていた女の子と修道女を誘導して門外で誘拐しましたね
ホルハム「・・・、はい・・・」
ワルドネルド(はぁ?、勝手に喋るな私は確かに指示したがわざわざ馬鹿正直に話す訳がない、何で勝手に喋ってるんだ・・・)
丞相「認めました、では誰に指示をされましたか?」
ホルハム「ワルドネルド様です」
ワルドネルド(いや、何で勝手に喋ってんだ、隣に居るんだぞ?、普通は言わないだろ!)
丞相「ワルドネルドに指示されたんですね?」
ホルハム「はい、孤児院に居るのは勿体無い器量好しだ、隣のアイツに売りつければ良い金になる、それにあの計画も実現に移せると」
ワルドネルド(何で言ってしまうんだ、ダメだ俺はもう殺される・・・、無事には帰れん・・・)
丞相「その二人はどうしましたか?」
ホルハム「外務事務次官特権でローエンスとの国境で受け渡した、その後は多分向こうの慰み者にでもなってるんじゃないかな?、渡した直後から体を好き勝手に弄っていたからな」
ワルドネルド(終わった・・・、勝手にベラベラと喋りおって・・・)
丞相「今まで何人誘拐したか教えて下さい」
ホルハム「もうそんなの覚えちゃいない、そこ辺の浮浪者から町娘まで言われたままに売り飛ばしてる、全部隣のワルドネルドに言われてやった事だ」
ワルドネルド(・・・)
丞相「では売り飛ばした時の金はどうしましたか?」
ホルハム「手数料に二割貰ってあとはワルドネルド様に届けてたよ」
丞相「失敗した時はどうしてましたか?」
ホルハム「揉み消せるのは自分で、出来なければワルドネルド様が、それでもダメなら消えてもらった」
丞相「そうですか・・・、王よホルハムは自供しております」
本来、謁見の場であるはずの場所に流れている空気は重くいたたまれないモノとなっていた。
丞相「ホルハム、貴方は職権を乱用し隣国ローエンス王国からの客人への不当な入国拒否審査を指示しましたね?」
ホルハム「はい、しました」
丞相「何故したのですか?」
ホルハム「その二人は我々の計画の邪魔だったからです」
丞相「その計画とは何ですか?」
ホルハム「ローエンスのじゃじゃ馬姫と第一王子を結婚させ、第二王子とワルドネルド様の孫娘エリナリーゼ様を結婚させる計画です」
ワルドネルド(おい、それを言ったら・・・・)
ホルハムから発せられた計画を聞いた国王は握り拳を力一杯握っていた。
ワルドネルドはホルハムの隣で必死に首を振るが確たる証拠が無いと見てまだ何処か余裕が見て取れる。
丞相「では、本日証人に来ていただいております」
丞相が呼び込むと謁見の間の扉が開く。
先に姿を現したのは王都を長年守り抜いてきた屈強な体躯の老人バルテクス、その後を煌びやかな箱を持ち白の軍服を纏ったポニーテールの少女と白の聖職者の格好に胸に空間には似つかわしく無いスリングを背負った少年が現れた。
国王「相変わらず元気そうだな叔父上」
バルテクス「国王様もお疲れ様の様子も無くお元気そうで何よりです」
お互いの顔を見て微笑む二人。
バルテクス「王よ、我が弟子であり隣国からの客人の二人を紹介したい」
国王「紹介に預かろう」
バルテクス「まず、軍服の婦人は隣国ローエンス王国元第二王女で現在はローエンス王国辺境軍近衛兵団副団長ファリン・エルバム」
ファリン「初めてまして!私は隣国ローエンス王国から来ましたローエンス王国辺境軍近衛兵団副団長ファリン・エルバムと申します」
騎士礼をするファリン。
バルテクス「そして、我が古き友の弟子でローエンス王国一の剣士であり、聖盾の異名を持つファリン殿の良き夫、ロイ・エルバム」
ロイ「国王様、この度はお招き頂きまた謁見の場を頂きましてありがとうございます」
礼をするロイ。
こうして関係者が一堂に揃い御前裁判は大詰めとなって行く。
次回はメアが活躍?してくれます




