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聖盾(せいじゅん)の魔法使い  作者: 嘉七
ノークアミス王国編

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第二十七話

良いよ動き出しました。

外務大臣「なぜだ!、なぜ奴等は王都に『入って』いるのだ!」


翌朝、外務大臣大臣の執務室で報告を受ける外務大臣。


男「ドラン子爵が貴族特権で入れたようです・・・」


外務大臣「ドランか・・・、余計な事をしよって・・・」


男「どうやらデルス団長と接触したようです」


外務大臣「デルスか・・・、何があった?」


男「どうやら子供を一人、近衛騎士団の入団試験に連れてきたついでみたいです」


外務大臣「ホルハムの釈放はまだか?」


男「どうやらバルテクス卿から接触禁止が出ているので、面会さえ出来ない状態です」


外務大臣「特権が使えない事を良い事に・・・、わざとだな・・・」


外務大臣が執務室で怒りを表している頃。

バルテクスとロイが警備隊詰所の地下の特別観察収容牢に向かっていた。


バルテクス「すまんな、わざわざカビ臭い所に出向いてむらって」


ロイ「いいえ、お役に立てるなら立ちますよ」


ニコリと笑うロイ。

何処から入っているのか分からない外からの光が一筋入るのみで鉄格子の向こうに見えている。

二人が階段を降りる音が聞こえる階段室。

やがて二人の前に重厚な鉄扉が現れた。

バルテクスが扉の中央部の魔術印に掌を当てる。

扉が少し開き、飛び出た部分の凹みに指をかけ扉を開ける。

開けた先には鉄格子、そしてその先には腰巻のみ着用しているホルハムが疲れた様子で座っている。

目の前のバルテクスが現れニヤリと笑い目を細める。


ホルハム「私は何も知らんぞ、何も聞かされてないぞ、職務を全うしただけだ!」


何をされても話さない覚悟の見えるホルハムにバルテクスが見下ろして不敵な笑みを浮かべる。


バルテクス「ロイ殿お願いします」


バルテクスがロイにお願いすると「メア」と声を掛ける。

ロイが肩がけしているスリングからひょいと黒い猫が一匹ホルハムに向かい歩いて行く。


ホルハム「気でも狂ったかバルテクス卿、猫一匹で私が話すと・・・」


ホルハムの様子が大人しくなり目が虚ろになる。

メアの目が妖しく紅く光る。

ホルハムが突如居ないはずの外務大臣が居る様な会話をし始める。


バルテクス「のうロイよ・・・、確かにベラベラと今まで話さなかった事まで話してくれとる様だが・・・」


ロイ「あ〜、メアの幻覚に一度落ちると自分の性癖まで包み隠さず話しますよ?」


バルテクス「この前連れ帰った諜報も同じ様な事を?」


ロイ「彼はこれより更に強いやつですね・・・」


バルテクス「そうか・・・」


ロイ「あの人にはもう訳無かったんですが、こちらも諜報部隊の人間には容赦は掛けられない立場でしたので仕方なくやらせて頂きました。」


バルテクス「五体満足、命を助けて貰っただけでも十分じゃ」


ロイ「王都を出る時に記憶消しましょうか?」


バルテクス「申し訳無いが頼む・・・」


ロイ「只、もう市民として何処かの街なり村なりで生活しか出来ませんが・・・」


バルテクス「奴には家族もろとも移住先を用意しよう」


ロイ「分かりました」


メアの幻覚魔法によってホルハムは自身の生い立ちからここ最近の性癖まで聴取担当官が引いてしまうぐらいベラベラと喋ってしまう。


バルテクス「これでホルハムが噛んでいるのは間違い無いな」


メアがあくびをしながらロイの元へ戻ってくる。


メア『ご褒美はちゃんと貰うからね?』


ロイ『分かってますよ』


ロイが下げているスリングへと入り込むメア。

ホルハムは幻覚がまだ残っているらしく、呆然としている。

言葉にならない言葉を小言で呟き、そのは誰も聞くことが無く一筋の光が差し込むだけの独房に戻っていった。


◇


王城の中心部、周りは壁に囲まれてはいるがその日の美しく輝く月の光は窓を通して執務室を照らし出す。


トロン「ほんま勘弁して下さいよ」


その執務室を使用出来る唯一の人物と対面するトロン。

まだ歳の積み重ねが足りていない部分は残っているが、その肩に乗る重圧に応えて来た貫禄は出来始めている。


国王「まあ、そう言うなトロン」


トロン「団長の依頼でけったいなおっさんに情報流してたけどあんな怪物の相手なんぞしてたらこっちの身が持ちませって・・・」


国王「それはすまなかったな、こっちの情報は『辺境送りになったじゃじゃ馬姫』までしか無かったからな」


トロン「あれがじゃじゃ馬なら向こうさんの辺境はどんだけ魔窟やねん」


国王「どうやらここへ来るまでにじゃじゃ馬が剣姫へと変貌したらしい」


トロン「なんやその辺の経緯は聞いてへんで?」


国王「別ルートからだ許せ」


トロン「人が折角ほんまに骨折ってまで苦労してるっつーのに・・・」


国王「噂の剣姫にやられたらしいな?」


トロン「そうやぁ、一歩間違ったらほんまに死んでたで」


国王「まあ、ホルハムもあそこからは当分出て来れないだろうな」


トロン「その事なんやけど、今日おっさんがもう一人とデートしに来てたわ」


国王「もう一人は剣姫の旦那か?」


トロン「そうや、ぱっと見は聖職者のにいちゃんやったけど、あのおっさんとなかよぉお話してたで、なにもんやん?、あのにいちゃん」


国王「叔父上とか・・・、以前叔父上がローエンスへ旅をしに行くと言って半年近く居なかった事があったがその時に何かあったかもしれないな」


執務室のドアがノックされ丞相が巻かれ封蝋のされている書簡を国王へ提出しにやって来た。


トロン「まいど」


丞相「呑気なものですね・・・、こっちは連日誰かのやらかしの対応に追われているのに・・・」


書簡を受け取り封を切る国王。


トロン「誰からなん?」


国王「叔父上からだ」


封の切られた書簡を丞相に手渡す。


丞相「はぁ・・・」


トロン「そない大きなため息つかんでも・・・」


国王「ため息の一つもしたくなるだろ・・・」


トロンが丞相から書簡を受け取り確認する。


トロン「はぁ、なんで外務大臣を人身売買いで逮捕できんねん⁉︎」


国王「こっちにホルハムが自供したとされる供述書が来ている」


トロン「おっさんは何をしたらあの口の硬かったアホから口を割らす事できのや・・・」


国王「そこ辺りはもう一人の協力があったと書いてあるぞ」


トロン「あのにいちゃんか・・・」


丞相「デルスがドラン邸に送った内偵をバルテクス卿が引き取ったと聞きましたが・・・」


国王「その事でデルスから事情は聞いた」


トロン「何があったん?」


国王「どうもロイ殿の連れている仲間の夜回りにひかかったらしく、幻覚魔法で夢の中に入れられたと報告された」


丞相「身体への外傷は全く無かったそうですが、精神を完全に狂わされていたそうです」


トロン「えげつな・・・」


国王「まあ、俺が一筆書くだけで後は叔父上が引き受けてくれるみたいだから良いんじゃないか?」


トロン「今までの苦労はなんやったん・・・」


国王「まあ、お前もいい経験だと思うしかないな」


トロン「そんなんで済まされへんわ!、骨まで折られたんやぞ・・・」


丞相「ファリン様でしたかな?、ローエンス王国元第二王女様ですね・・・、良い仕事をしてくれました」


トロン「お前なんか、グリフィスに蹴られて死んでしまえ!」


丞相「そう言えば・・・」


トロン「話変えんなや」


丞相「ドラン邸に珍しい大きな鳥が居ると聞きましたが・・・」


トロン「ああ、あのでっかいキラキラした鳥やろ?」


丞相「噂を聞きつけた学者達が、私の所へ何度か陳情にきましたがドラン子爵にあの鳥を研究所に差し出す様に国から要請しろと言ってましたが・・・」


国王「流石にそれは無理が過ぎるだろ」


丞相「聞けばあの鳥はファリン元王女が育ててるらしいですよ・・・」


国王「剣姫の怒りを買わぬうちに学者共には布告を出しておく・・・」


トロン「丞相も苦労しますなぁ・・・」


両肩を落とす丞相。


国王「兎も角、そろそろローエンスとの一件の幕引きをしないとな」


翌日の早朝、外務大臣ワルドネルド邸は近衛兵によって囲まれていた。




もうちょっと続きます。

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