第二十六話
ファリンに小石でやられた彼が出てきます。
アヴァルが手荒い歓迎会を受けたその夜。
デルスの元に男が一人訪ねて来る。
男「何だか昼間に面白い事があった様ですね」
ニヤニヤと笑みを浮かべてデルスと話す男
デルス「トロン笑い事では無いぞ、あれは一方的な虐殺に近いな」
トロン「まさかあの怪物と訓練出来るなんてさぞ楽しかったでしょうね」
デルス「まあ、確かに彼女とやれたのはこれからの騎士達にとっても良い経験だったかもしれないな・・・」
遡る事数時間前。
ファリン「ロイ、止めないで!、もう無理」
必死に羽交い締めにしているファリンに引き摺られているロイ。
ロイ「ダメですってデルス団長の仕事が増えちゃうのでダメですって!」
その光景を見ていたデルスがロイを思って許可を出す。
ロイ「ファリン、今はアヴァルの歓迎会ですから終わってからですよ?」
ファリン「分かったわ!」
鼻から息を出して興奮したまま訓練場に向かう三人。
三人が着く頃には終わってると思われた歓迎会はまだ続いていた。
デルス「やはり短期間とはいえ三人の弟子ですな」
騎士「団長、何処から連れてきたんですか?、あいつ打ち込んでも回復してしまって全然有効打にならないんですよ」
ファリン「ロイ仕込みのやり方はやっぱり卑怯だ・・・」
ロイ「卑怯では無いです、使える物を使ってるだけです」
デルス「我が団員の中にも回復魔術を使える者は居ますが、流石に何度もは限界がありますが・・・」
ロイ「魔法ですからね・・・、彼オドが無いから魔術効かないんですよ」
デルス「まさか・・・」
ロイ「試しても良いですよ?」
デルスが思わず唾を飲み込み判断を下すまでに躊躇する。
そしてロイの一言で新人歓迎会過去一番の苛烈さとなって行く。
ロイ「死なない限り回復させられます、大丈夫ですよ」
ニコリと自信満々に煽るロイ。
その顔を見てデルスが騎士隊に命令を出す。
デルス「攻撃魔術の使用を許可する!」
その言葉でアヴァルに対しての攻撃に魔術が飛んでくる。
飛んできた炎の魔術をまともに貰い、一瞬止まるアヴァルだが自身にダメージが入って無い事に気がつくと魔術を放った騎士へ向かい突出して行く。
騎士「嘘だろ⁉︎」
驚愕の表情でまともにアヴァルから一撃を貰い倒れる騎士。
魔術を詠唱していた騎士は思考が停止したかの様に一様に驚きを隠せずに立ち止まっている。
アヴァルが一人の騎士を倒し、次へ目標を変え詠唱をしていた騎士に向かうが背後から迫る騎士。
アヴァルが背後の騎士に気がつくと脚を止め腰を落とし背後の騎士の懐に潜り込みそのまま肩を落とした腰を膝を使い体全体で押し当てる。
アヴァルの肩が騎士の胸に当たり、アヴァルの体重が身体強化によって上乗せされて重い打撃となって突き抜けると同時に吹き飛ばされる。
デルス「新人歓迎会でここまで立ち回った新人は居ませんよ・・・」
その後アヴァルは流石に多勢に無勢、騎士達の訓練された連携の前には為す術がなく、あっという間に取り囲まれるが回復魔法で何とか耐え切った。
アヴァルはその後直ぐに近衛騎士団として活躍を期待され、年の近い第一王子の身辺警護まで任される様になった。
前代未聞の新人歓迎会が終わると満を辞してファリンが近衛騎士団とやり合うのだが・・・
トロン「あれは相手にしては駄目な人間ですよ?」
デルス「お前さんの言っていた意味がわかったよ」
トロン「僕もこの仕事に着いて色々やばい人間見て来たけど流石にあの距離で目があってまさか小石で肋を折られるとは思いもしなかったし、あれ殺す気で投げられましたよ?」
デルス「お前が何者かはあちらは知らないしな、死んだら花の一輪もあげたのに」
トロン「冗談はやめて下さいね?、本当冗談にならないので」
デルス「で、頼んでおいたのはどうなった?」
トロン「本当に人使いが荒い人でですよね、僕はまだ痛みが残ってるんですよ?」
デルス「治療班で回復したんだろ?」
トロン「骨折は治っても痛みは続くの知ってますよね?」
デルス「治ったんなら大丈夫だ」
トロン「この鬼上司」
デルス「で、どうなんだ?、向こうと密約を交わしていたのは」
トロン「外務大臣が動いていた所までは掴んでます、ただその先はまだ動いていません」
デルス「父上の情報通りか・・・」
トロン「もしかしたら今日の一件が伝われば何らかの動きは出て来ますね」
デルス「多分、ロイ殿もそろそろモールス共和国にそろそろ動きたいはず・・・」
眉間を摘み疲れた顔のデルス。
デルス「踏み込むか・・・」
トロン「垂れ込みますか?」
デルス「そうだな、奴に誘拐教唆が掛かっていただろう、あれを使え」
トロン「誰にやらせます?、それともお父上にお願いします?」
デルス「今回は内務大臣にお願いしよう、最近安定していて政敵が嗅ぎ回られて迷惑しているみたいだからな、この辺りで一度締めたがったていたぞ」
トロン「では、それとなく流しておきます」
デルス「俺は国王に一筆書いてもらうよ」
トロン「あ〜、無いとやっぱり特権使いますよねぇ」
デルス「当然だな、あれが有るからあいつは持っている様なものだ、無くなればただの変態だ」
トロン「では、僕は戻ります、一筆お願いしますね」
デルス「分かった」
執務室を出て行くトロン、机に残された積み上がった書類。
デルスが家に帰ったのはそれから二日後に事だった。
◇
国王の玉璽が捺された逮捕状を持って警備隊と近衛騎士団、内務大臣が外務大臣メンフィスの元に現れたのは翌日の事だった。
トロンがバルテクスに報告後バルテクスから内務大臣へと動きが伝わり内務大臣とデルス二人からの要請により国王が夜の内に逮捕状を用意した。
ロイ「何だか呆気ないですね・・・」
ドランによりロイ達にも情報が共有されたがまだ詫び品の納め先は未定となっていた。
ドラン「そもそも、こちら側が全く動いて無かったのに、ローエンス側で動いたのはどうしてでしょうかね?」
ファリン「多分、ローエンス側も予想してなかったからボロがでたんですよ」
ドラン「つまり、ロイ様とファリン様の結婚自体が予想外と言う事ですね?」
ファリン「予想外も予想外、私まだ結婚する気も無かったし、一生独身のつもりだったわ」
ドラン「一生はどうかとして第二王女様でしたら引く手数多では?」
ファリン「立場しか無い、望まれないで出来た王女に行き先は知れてるわ、それなら一生辺境で良いと思ってたのよ」
ドラン「その立場を利用しようとしたわけですか・・・」
ファリン「ローエンス側もノークアミス側も来年もしくは再来年辺りを計画してたみたい」
ドラン「なるほど・・・、外堀を埋める前に城が無くなったわけですな・・・」
ファリン「しかも、ぽっと出の少年にね」
ドラン「でもその少年と楽しそうにいらっしゃるという事はファリン様としては良い出会いだったという事ですね?」
ファリン「そうね、まあ叔父様の手の上で転がされっぱなしだけどね」
クスッと笑うファリン。
カップのお茶に口をつけるロイ。
ドラン「兎に角、こちら側の対応がまだ決まっておりません、その上頂かなくても良い物を持って来て頂いてる可能性が大いにある為、もう少しお待ちいただけると助かります・・・」
ロイ「分かりました、アヴァルの事もありますのでよろしくお願いします」
ドラン「ありがとうございます」
ファリン「さて、アヴァルと遊んんでくるわ」
ノークアミス側が動き出したのは翌日であった。
次回は動き出したノークアミス王国です。




