第二十四話
あの物語の主人公の話です。
行動の自由を得たロイ達は王都外れにある教会で何処へ行ってもやっている臨時治療院を開こうとしたが、そこは王都、しっかりと同じような場所が機能していたので孤児院でファリンと二人遊ぶ事となった。
ファリン「ロイが居れば、子供達が無茶しても大丈夫でしょ?」
ファリンは無茶前提でロイを引っ張って行く。
こうして訪れた場所での孤児院の慈善事業を行うのだが・・・。
ファリンが子供たちと遊び、ロイが見守っているとファリンが一人の男の子を連れて来る。
ファリン「ねえロイ、この子ちょっと見てあげて」
ファリンが手を引いて男の子は黒髪に目の色が青白く顔色も余り良くない男の子だった。
ロイが男の子の手に触ると何時も通りロイが回復魔術を施すのだが、ロイの回復魔術が反発して弾かれる音がする。
ロイ「あー、ファリン、この子はどうやらオドを受け付けない体質見たいです」
ファリン「という事はロイの回復魔術が聞かないって事?」
ロイ「どうなんでしょうか・・・、もしかしたら・・・」
ロイが男の子に回復魔法を施すが・・・、同じように弾かれる音。
ロイ「どうやら魔素抵抗が極端に強い子なのかもしれません」
ファリン「魔素抵抗?」
ロイ「はい、普段私たちの体には自分の中で作られ血と一緒に体を巡っている『オド』、自然の中を漂っていて動物が外から取り込む『マナ』の二種類ある魔素は説明してると思います」
ファリン「そうね、オドにはそれぞれ生まれ持った容量あった量しか使えないのよね?」
ロイ「ある程度は訓練で容量を上げる事は出来てもそれ以上は限界がありますが、この子はどうやら特異体質の様で体にオドが無いみたいなのです」
ファリン「え?、そんな事あるんだ・・・」
ロイ「はい、多分何とかマナを体が取り込んで成長しているみたいですが・・・」
ファリン「それでこの子の魔素抵抗が強い理由は?」
ロイ「これは私の推測に過ぎないのですが、体内にオドがあるとそのオドに反応して魔術が使えます、自然の中にあるマナを体に取り込むことで魔法が使えます、回復魔法と魔術はそのマナやオドと反応して体内の回復を手助けする事をしているのです」
ファリン「つまり、普通ならあるはずの物が無いからそれを出来ないという事?」
ロイ「そうですね、そしてこの子は産まれた時か母親のお腹に居る時からは分かりませんがオドを作りだせない事により代わりの少ないマナを体に巡回させて生きているのだと思われます」
ファリン「マナはどうやって?、私も苦労したからわかるけど、赤ちゃんの時から何て出来ないでしょ?」
ロイ「どうやら私達人間はごく少量ではありますがマナを取り込んでいるみたいなんですよ、その取り込む量を増やす切っ掛けがあの訓練なのです」
ファリン「今では無意識に出来るけどあの時は辛かったわ・・・」
ロイ「この子は体内に持っているオドやマナが少ない為に反応するはずのオドやマナが無い、なのでいけるはずのオドやマナがいけなくて戻ってくる、それで抵抗してるみたいです」
ファリン「なるほど・・・、で助けてあげられる?」
ロイ「もともとオドが無いので代わりのマナを取り込めるようにするしかないのですが・・・」
ファリン「あー、マナに対する抵抗がなくなるわけね・・・」
ロイ「そうですね・・・、ただこの子はこのままだといづれ近い内に命を落とす可能性が高いです」
ロイの説明で自分の先を知る男の子とファリン。
ファリン「この子を助けるにはどうしたら良いの?」
ロイ「魔法の抵抗を許容して体内にマナを循環させるようにするしかないですね、以前同じような子供まあ私と同じ位でしたが・・・、その子は出来なくて亡くなりました・・・」
ファリンが男の子の方に手を置き目を見つめる。
ファリン「みんなと一緒に遊びたい?」
男の子「遊びたいけど・・・」
ファリン「みんなと一緒にお出かけしたい?」
男の子「出かけてみたいけど歩くとすぐに疲れるし・・・」
ファリン「そこのお兄ちゃんが治せる方法知ってるけどどうする?」
男の子「直したい・・・、けど・・・」
ファリン「けど?」
男の子「出来るの?、お医者さんもわからないって治らないっていわれて・・・」
ロイ「オドが無い事なんてほぼ無いですから、オドが無ければ死んでしまうそれが常識ですからね」
ファリン「死んじゃうのが分かってんなら一度頑張ってみよう、出来ると思って頑張ってみよう、みんなと一緒に遊べるように頑張ってみよ」
ファリンが男の子を抱きしめて涙をながしながら説得をする。
それにつられて泣き始める男の子。
男の子「やってみたい、まだみんなと一緒に遊べてない、まだ死にたくないよ・・・」
ファリン「うん、頑張ろう・・・、一緒に頑張ろう・・・」
こうして孤児院での思わぬ出会いがあった。
二人は孤児院の院長に暫く預かる事を伝え、院長もそれならと了承をする。
ドラン子爵に話をつけ、その日からロイと男の子の訓練が始まった。
ドラン「所であの男の子の名前はなんというのですか?」
ファリン「はっ!、聞いてない・・・」
ファリンが慌てて男の子に名前を聞きに行くと・・・
男の子「名前ないです・・・」
二人に衝撃が走った・・・。
ドラン「ははは、良くあることですよ、特に孤児院に生まれて直ぐに預けられると名前は付けられないですから」
ファリン「どうしてですか?」
ドラン「どこの孤児院も日々の生活や仕事でそれどころではないのですよ、おいとかねえとかバタバタしてる内に成長して出て行きますから」
ファリン「名前が有るだけでもありがたいのね・・・」
ドラン「まあ、雇先でつけて貰ったり、ある程度成長して入ってくる子供は名前はありますよ」
ファリン「では、ドラン様が着けてくれませんか?、あの子の名前」
ドラン「私ですか?」
突然のファリンからの命名を言われ少し考えるドラン。
ドラン「アヴァル・・・、アヴァルで良いではないでしょうか?」
ファリン「アヴァルね、アヴァル」
アヴァル「アヴァル・・・」
ファリン「そう、今日から君はアヴァル」
ドラン「アヴァル、今は辛いかもしれないがロイ様やファリン様と出会えたのは何かの運命かもしれないから、頑張りなさい」
アヴァル「はい、ドラン様」
ドラン「うん、しばらくはこの屋敷に滞在しなさい、私もなにかの縁だ出来るだけやってあげよう」
アヴァル「ありがとうございます」
アヴァルが二人に頭を下げてロイの元へファリンと二人で向かって行った。
ドラン「彼も二人によって運命が回り始めたのかもしれないな・・・」
ドランとアヴァルの出会いはノースアミス憧れの話の始まりになった。
この後アヴェルはロイの元でマナを無自覚で体に循環させられるようになり、身体強化の魔法までファリンに叩き込まれる。
ロイ曰く「才能だけならファリン以上」と言わせた事によりファリンの闘志に火が着いてしまい、ロイがアヴァルに謝っていた。
持ち前の才能をロイ達と別れた後も磨き上げ、その才能をドラン子爵に認められてドランの養子となる。
身体強化を生かした格闘術を習得しドラン邸に遊びに聞いていたバルテクスに見つかり、騎士団を受験、見事主席での合格にドランも喜んでいた。
身体強化魔法と格闘術、その上魔術が聞かない体質を生かして近衛騎士まで上り詰めた、そして運命の出会いが待っている。
王城での警護を終え帰宅する為に単騎ドラン邸に向かっている途中に突如魔法が発動したのを感じ取り、現場に向かうと馬車を取り囲む10数人の顔を隠した者達を発見。
瞬く間に取り囲んだ10数人を制圧し、馬車に乗っていたご令嬢を救出したのがバルテクスの孫、フェルフィール。
ノークアミス王国「神鳥の髪飾り」の主人公二人であった。
これを切っ掛けにアヴァルの身分は子爵家の養子から伯爵家の養子に、そして公爵家の婿養子と変化していった。
その後、バルテクスが退いた王都警護隊隊長にまで就任し、夫婦仲良く余生を過ごしたアヴァルだが最後までファリンとの勝負は勝てなかったとぼやいていた。
次回はそろそろ話が進みそうです。




