第二十三話
まだドラン邸での話になります。
(ごめんなさい、まだ引っ張ってしまいました・・・)
バルテクス「まぁ、なんというか本当にすまん!」
特別滞在証明が発行され、バルテクスがドラン邸を訪問した時だった。
侍従長に案内され、通された部屋には光が入らず開けられた扉からの光が部屋に入った唯一の光だった。
その部屋に縛り挙げられ転がった見知った格好の人間が一人。
その人間がどんな人間なのかを見た瞬間理解したバルテクスが背中に悪寒が走る。
バルテクス「弁解をさせて貰えるだろうか・・・?」
バルテクスの背後には訪問の知らせてを受けてやってきたロイとファリンが居た。
ロイ「多分、間違いだとは思いますが・・・、事情を聴きましょう・・・」
場所を移動し、応接室へ。
部屋の空気はバルテクスが今まで感じたどの空気よりも重く沈んだものだった。
バルテクス「本当にもう分けない」
開口一番頭を下げるバルテクス。
バルテクス「やつは多分、わしの息子の近衛兵団長からの密偵じゃ、特徴がそのままだからな」
ファリンが「あなたが差し向けたわけでは無いと・・・」
バルテクス「わしがそなた達の情報を秘匿する利はあっても、探る利が見当たらん」
ファリン「それもそうね・・・」
ロイ「まあ、どうするかはバルテクス卿、お任せします」
床に転がる密偵を見るロイ。
ロイ「多分この人はもう使い物にはならないでしょうから・・・」
バルテクスが唾をのむ音がする。
場所をドランの執務室へと移動し、対面して座る三人。
そこへ黒い猫がファリンの腿の上に乗り丸まって寝始める。
バルテクス「余り見ない種類の猫ですな・・・」
ロイ「この子はナイトメアですよ、私の旅の寝ずの番をしてくれてます」
ファリンがメアを愛おしそうに撫で始める、メアは気持ち良くゴロゴロとのどを鳴らして嬉しそうにしている。
ロイ「当然、ナイトメアなのでお仕置きの方も得意なので、今回も手違いとはいえ私達もやらざる得ませんでした・・・」
バルテクス「こちらの手違いではあるので二人には矛先を治めて頂けると助かるのだが・・・」
ファリン「バルテクス卿からの謝罪だけで十分よねロイ」
ロイ「そうですね、この話はこれで手打ちとしましょう」
バルテクス「重ね重ね、その寛大な心に感謝する」
バルテクスが待たせていた騎士たちにメアによって捕まった影を回収させ、本来の目的であった特別滞在証明を二人に渡す。
特別滞在証明は手のひらサイズのバッジの大きさで必要に応じて首から下げ、ノークアミス王国での滞在中は面倒な入場手続き等を飛ばすことが出来る。
それぞれの都市や街でも限定の物はあるがそちらは紙や木札で出来ていて王家発行の物とは違うものとなっている。
バルテクス「この証明をこの国に居る間は身に着けていてくれ、それがあれば例え警備隊や近衛兵に止められても直ぐに開放される証明だからな」
ロイ「ありがたく使わせて頂きます」
バルテクス「所で何やら邸内でみなが忙しそうにしているが、なにかあったのか?」
ファリン「ああ、私の飼ってるゴールドウィングというグリフォンの変異種が飛ぶ練習の為に外で羽根を動かしているのですけど、どうもここの侍女さんの出身地ではその羽根が貴重らしくて、それを聞きつけた他の侍女さんや侍従さん達が拾いに来てるんです」
バルテクス「なるほど・・・」
ファリン「なんでもその地方では「神鳥」なんて呼ばれているらしく、ここへ来た時も感激で倒れたぐらい、びっくりしてたんですよ」
ロイ「昨日ちょっと私と出かけていて、その後帰ってきたらしきりに飛ぶ練習をしてるんですよね・・・・」
ファリン「抜けた羽ががあっちこっちに行ってしまって欲しい方が居るので集めて回ってるんですよ」
バルテクス「なるほどな・・・、わしにも一枚くれないか?、娘と孫娘にプレゼントしたいんだが・・・」
ファリン「良いですよ」
集められた羽根の中でも汚れの無い綺麗な羽根を2枚バルテクスに渡す。
バルテクス「ありがとう、家に帰って額縁に入れてプレゼントするかな」
ここでロイがふと何かを思いつく。
怪しい腰袋をゴソゴソと探り何かの塊を取り出す。
ファリン「ロイ、程々にね、程々に・・・」
ロイ「何を感じたかは聞きませんが、私だってそんなにホイホイと非常識な物は作りませんよ?」
ファリン「作ったから聞いてるのよ!」
ロイが何かを呟きながら取り出した塊を手の平に乗せてマナを込める。
するとロイの手の平の塊がヘアピンとなって現れる。
ファリン「何そのお手軽に作ってみましたみた的なありえない魔法は・・・」
ロイ「ああ、ファリンのイヤーカフや指輪も同じ魔法ですよ?」
ファリン「以前も思ったんだけど何でそんな魔法使えるのよ?」
ロイ「いや、これぐらい出来ないと『嫁が来てくれないぞ』と言われて毎晩寝る前に作っては作り替えてを繰り返して覚えさせられました」
ファリン「つくづく非常識なお師匠様ね」
ロイ「褒め言葉として貰っておきます」
ロイが作り出したヘアピンにウィンの羽根を一枚合わせる。
固着魔法展開・・・
ロイが作り出したヘアピンとウィンの羽根がくっついて簡単なヘアアクセサリーとなる。
ドラン「神鳥の髪飾りって所ですな」
ロイ「どうぞ」
バルテクス「わしにか?」
ロイ「ええ、お孫さんにあげて下さい」
バルテクス「ありがとう、迷惑かけておるのに・・・」
ロイ「ああ、お孫さんに手渡したらお孫さんのオドを一旦流してくださいね、それまで誰も触らないように」
バルテクス「何故じゃ?」
ファリン「ロイ・・・、まさか・・・」
ロイ「防衛魔法を付与してますから、もし何か有れば防護壁が出現して守ってくれますよ」
ファリン「やっぱり・・・」
ロイ「何でそんなに呆れるんですか、今回はミルリルで自重して作りましたよ?」
ファリン「ミスリルだって希少金属なの!、それに魔法を二つ重ねる事自体もう非常識なのよ!」
バルテクス「騎士50人返り討ちも十分非常し・・・」
バルテクスが思わず口を手で塞ぐ。
ファリン「何か言いましたか?バルテクス卿・・・」
ドスの効いた声で睨むファリン。
ファリン「とにかく今後は私に何を作るかを言って、私が許可した物以外は作っては駄目です!、良い?」
ロイが苦虫を噛んだ顔をする。
ロイ「わかりました・・・」
不貞腐れながら答えるロイ。
ファリン「よろしい、で?、何故作ったの?」
ロイ「立場的に狙われるのが分かってるならちょっとでも安心かなって・・・」
ファリン「はぁ・・・、まあそうね、王族の争いに名前が上がるということは、命の危険もあるって事だし・・・、仕方ないか・・・」
ロイから神鳥の髪飾りをドランが持って来た箱に入れる。
この神鳥の髪飾りは直ぐに効果を発揮しする。
バルテクスがドラン邸から直ぐに孫娘のフェルフィールの元へ行き神鳥の髪飾りに手を触れさせる。
すると神鳥の羽根は真珠の如く輝きを放ち直ぐにフェルフィールのお気に入りとなる。
その煌びやかな神鳥の髪飾りは直ぐに貴族達の目に留まり、羽根だけでも欲しがる貴族や噂を聞き付けた商人達がこぞって手に入れようと躍起になった。
フェルフィールは後に夜会の帰りに命を狙われるが魔法が発動し事なきを得る。
その時に偶然通りかかった仕事帰りの騎士と恋に落ち、子爵の養子と身分差もあったが騎士はバルテクスが目を掛けていた騎士だった為、伯爵家に養子となり直ぐにフェルフィールの婿となった。
お互いがお互いを思う良き夫婦の手本とまで言われたフェルフィール夫妻を見習いノークアミスにてウィンの羽根は良縁ののちに夫婦円満の羽根と言われるようになる。
ドラン子爵邸では、親しい友人や目上の慶事に献上する事で王家からの評価良く末長くその家が存続をした。
ドラン子爵はのちに「ウィン様の滞在が我が家にとってまさに繁栄の転機となったのはまさに神鳥様」と言い残している。
次回はやっと街に出られますが・・・




