第十六話
ここからノークアミス編の始まりです。
段々ファリンがロイに色んな意味で近づいて行きます・・・。
ノークアミスへの道のりは全然順調では無かった。
派手な一行なので当然直ぐにその辺の盗賊に狙われる。
出る度に片付けてはいるのだが、護衛に任せているので時間が掛かるし怪我人が絶えない。
ファリン「もう、いちいち面倒くさいからあいつら置いて行きましょうよ、荷物は私達が持ってるんだし」
と怪我人を治療しているロイへ突撃して言い放ったのだからついて来たお付きの人々は戦々恐々になる。
ロイが回復を担っているので何とか保っているこの謝罪隊からロイが抜けてしまうと死人が出て当たり前になってしまい全滅は目に見えている。
従者「ファリン様、お願いしますそれだけは、それだけは・・・」
ファリンの足元にしがみつき嘆願する従者。
ファリン「じゃあ、次に盗賊が出たら私にもやらせなさい」
侍女「それはなりません、貴方様は降嫁したとはいえ王女なのですから」
ファリン「じゃあ、置いてくわ、貴方と一緒に居ては目立って仕方ないし、遅いくなるだけじゃ無い」
従者「侍女長、もうファリン様に手伝って貰わないと持ちませんよ・・・」
ファリンと従者に挟まれ困る侍女長。
ファリン「早く答えを出して頂戴、時間が勿体無いわ」
ロイ「まあまあ、ファリン、落ち着いて」
ファリン「ロイが落ち着き過ぎるのよ」
ロイ「侍女長さん、ファリンが参加しても大丈夫ですよ、僕が居ますしね」
侍女長が諦めた顔をする。
侍女長「分かりました、お二人にお任せします・・・」
こうしてノークアミスに入るまでに一週間が消費された。
ノークアミスに入ってからは、ローエンス王国の威光は全く通じず、通る人達は迷惑そうに視線を送る。
エルベムからローエンスまでと同じ様に教会の敷地を間借りして宿泊する予定にしていたのにやはり着いて来た人達に茶々を入れられる。
ここでもファリンと従者侍女達の感覚の違いが衝突する。
教会の敷地を間借りして馬車で寝泊まりが当たり前になったロイ一行と、宿を取って宿泊するのが当たり前の侍従侍女達、ロイがそろそろファリンの限界が来そうなのを察知して侍女長を呼び出して話をする。
ロイ「ファリンがそろそろ貴方達に対して限界まで来てます、貴方達の言い分も分かりますが、そろそろ折れてくれませんか?」
侍女長「ですが私達は私達の言い分もあります、貴方は平民出身で普通の事なのかもしれませんが、ファリン様は王族だった方、身分変われどそのお体には王族の血が流れているのです、王族の血が流れているのならばそれなりの振る舞いと生活をすべきなのです」
ロイ「では、今日ここで貴方達は王国にお帰り下さい、非常に足手纏いで迷惑です、ノークアミスには二人で向かいます、貴方達は私達以外の人達に迷惑を掛けている事を認識していますか?」
侍女長が黙ってしまう。
どうやら多少の認識はあったみたいで、分かってはいるのだけど、今まで自分達のやって来た事が正解だったのでそれを押し通していただけだった。
ロイ「ファリンは王族ですよ?、貴方達の見て来た王では無い、平民が求めてる王族なのですよ」
侍女長「平民が見たい王族?」
ロイ「平民はね、転んで手を貸してくれない王族より、手を貸してくれる王族を望んでるんですよ、一緒に笑って一緒に食事をして、一緒に感謝してくれる王族を、王様を求めてるんですよ、威厳で平民の腹は満たされませんよ?」
ファリンが教会併設の孤児院の子供達と遊んでいる。
その顔は何処にでも居そうな少し幼さが残る少女そのものだった。
ロイ「ああやって、一緒に遊んでくれる、一緒に過ごしてくれるからこそ、平民はその人を敬い、その人の為にと我慢もしてくれるし戦ってもくれるんですよ」
ファリンと一緒に遊んでいた子供が転び肘を擦りむき泣き出した。
ファリンがロイに気がつき泣いている子供を連れて来る。
ロイがその子供に回復魔術をして怪我を治したらファリンと一緒にまた遊び出した。
ロイ「ここから先は国外なのです、ファリンが元王族と知らない人ばかりです、そろそろ認識を変えて下さい、まだ戻れます、戻っても何らかの懲罰はない様に取り計います、なので大人しく従うか、帰って下さい、ファリンの名前に傷が付きますよ?」
侍女長「分かりました、皆と相談しきてます」
ロイ「より良い返事をお待ちしております」
侍女長が宿泊先の宿へ護衛と共に歩いて行く。
翌日、侍女長がロイとファリンを訪ねて来る。
侍女長「やはり、ロイ様とファリン様の言伝のみでは、信用が足りないと申す者が多く、確約が有れば戻りたいと皆申しております」
ファリン「では、王太后様の一筆が有れば良いのですか?」
侍女長「そうして頂ければ、皆納得がいきます」
ファリン「ん〜、私とロイは荷物あるから馬車から離れなれないし・・・」
ロイ「ウィンが飛べれば、1日で戻る事は可能ですが、多分鞍が無いと吹き飛んでしまうでしょうね・・・」
ファリン「羽ばたく練習はしてるみたい、昨日ニールが教えてくれたよ?」
ロイ「仕方ないですね、私とファリンが一筆が書いて、それを護衛の方で馬を一番上手く操れる方に持っていって貰います」
侍女長「護衛一人で大丈夫でしょう?」
ロイ「とりあえず。王城まで届けられれば後は郵鳥便か何かで届けてくれると思いますよ」
ファリン「そうね、一筆特急と書いておくからとりあえず届ける事に集中して欲しいわ」
侍女長「分かりました、では護衛と相談して直ぐに手配させて頂きます」
その後直ぐに馬を連れた護衛の騎士がやって来る。
ロイが何やら馬と護衛に魔法を掛けて二人の署名が入った王太后への手紙を渡す。
その手紙を胸にしまい、馬に跨りローエンスへと駆け出して行った。
ファリン「ねえ、ロイ」
ロイ「何ですか?」
ファリン「手紙持ってった騎士に何かしてあげた?」
ロイ「あ〜、身体強化を馬にしましたよ?」
ファリン「あとは?」
ロイ「防御陣ぐらいですかね」
ファリン「じゃぁ、大丈夫かな」
ロイ「大丈夫ですね」
周りでその会話を聴いていたお付き一行は不安で仕方無かったがロイはアミュレットを護衛に渡していて、そのアミュレットに付与された身体強化、防御陣、疲労回復の影響が馬にまで及ぼして王都まで3日で辿り着き実しやかに伝説となった。
手紙を届けた護衛は余りの強行軍に乗ってきた相馬に怖がり確認の為に別の護衛達が乗ってみたが特にこれといって他の馬と変わりなく結果的にアミュレットに掛かった付与が強力すぎて一時期国宝認定まで議題に上がった。
こうして護衛の精神的尊い犠牲の上、手紙は直ぐに王太后へ届けられ、返信がファリンの元へ郵鳥便が飛んで来た。
ファリン「侍女長、王太后様からお許しが出たわ、王城へ戻りなさい」
ファリンが侍女長へ王太后からの手紙と許可証を渡し、侍女長がそれを受け取る。
お付き一行は慌しく帰り支度を始めると同時にロイ達も旅支度を始める。
ロイ一行は旅支度を終え、出発しようとした時に孤児院の子供やシスター、街の人々が名残惜しそうにロイ達を見送る姿を目にした侍女長は帰り道中に自分の行動を反省していた。
こうしてロイ達はノークアミスの王都へ身軽となって旅支度を進む事ができる様になった。




