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聖盾(せいじゅん)の魔法使い  作者: 嘉七
ローエンス王国編

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第十三話


会場の声「おぉ」


場内から歓声が沸く。

光に包まれたネイルの体からゆっくり光が引いていく。

やがて光が収縮しネイルの体内に吸収され消えて行った。


ファリン「お母さま、お体は大丈夫ですか?」


ネイルの側によるファリン。

座って居た車いすから立ち上がりファリンの手を取るネイル。


ネイル「大丈夫、大丈夫よファリン、ほら」


目の前を歩きだし、喜ぶネイル。


正妃「顔色も昔みたいに戻ってますね」


ネイルの手を取り涙する正妃。


ネイル「ありがとうございます正妃様」


泣きながらネイルに抱き着くファリン。


エルベム「さて、これで献上されたエリクサーが本物であると証明した事になる、わしの義息子のロイとファリンの婚約に反対するものは居ないな」


場を制す様な口調で仕切るエルベム卿。

しかしバイルが食い下がる。


バイル「先ほども言いましたがすでに隣国との婚約は話が進んでいるのです、それをこちらから一方的に無しにするにはそれ相応の対価が要ります」


ロイ「対価ならここに」


ロイが上着のポケットから七色に光る瓶を二本を台に置く。


会場の声「エリクサーがもう二本、しかも上着から出て来たぞ・・・」


場内がどよめく。


エルベム「なんじゃ、まだあったんか、いくらでも出してくるな」


呆れた様子のエルベム卿。


ロイ「今の所はこれで最後です」


含みのある言い方で返すロイ。


エルベム「そうか、さてロイが出したこの二本を隣国に渡せば婚約撤回の対価としては十分かと思うがどうかなバイル」


バイル「た、確かに一本でも十分な所を二本渡すなら対価としては十分ですね・・・」


仕方なく了承するバイル。


エルベム「では、後は使者として当事者のファリンとロイに届けさせよう」


バイル「そ、それは・・・」


エルベム卿の提案に慌てるバイル。


エルベム「なんじゃ、そなたが行くのか?、それとも何か不都合があるか?」


バイル「いや、無いですが・・・」


そこで他の貴族から意見が出て来る。


貴族「エルベム卿、確かに使者としてファリン姫が行かれるのは筋が通っておりますが、そこのロイとかいう男は全く信用出来ません」


エルベム「それも当然じゃな、わしの家族となっておってもそれは書類上の事だしな」


エルベム卿がロイを横目で見る。

ロイがなにか厄介事を感じ取るがどうする事も出来ない。


エルベム「新たにわしの義息子となったこのロイ・エルベムはかの「聖盾ライ・ザッハ」の孫で唯一の弟子じゃ」


ライ・ザッハの名前が出た途端会場が今までにないどよめきが起きる。


エルベム「ロイ、お前ライの「聖標」を預かっておるか?」


ロイは首から下げていた聖銀製のプレートを見せる。

執政官が確認すると確かに聖峰教会公式のプレートにライ・ザッハの名前が刻まれている。


エルベム「ロイ、そのプレートにオドを流せ」


ロイは言われた通りにプレートにオドを流すと、プレートが白銀に光り出す。


エルベム「見ての通り、ロイはあのライ・ザッハの血縁者じゃ、今、皆が見た通りプレートが光りそれを証明した、誰かまだ疑うものがいるか?」


エルベム卿の前にひと際屈強で大柄な男が現れる。


男「お久しぶりですエルベム卿」


エルベム「さらにでかくなったか?モスルン将軍」


モスルン「すでに成長は10年以上前に止まっております」


エルベム「冗談だ、相変わらず堅苦しのぉ」


モスルンの肩を叩きながら再開を喜ぶエルベム卿。


モスルン「このロイという男、本当にあのライ・ザッハの孫なのですか?」


ロイを睨みつけるモスルン。


エルベム「ああ、そうじゃ、わしはこやつと手合わせして引き分けた」


歓声が上がる場内。


モスルン「では、その実力私が図りましょう」




突然、将軍との手合わせが行われる事になり、謁見の間に居た全員が闘技場に移動する事になった。


ロイ「本当に、こうなる事、知ってましたね義父上」


エルベム「はははっ、まあ良いじゃないか、わしもお前の本気を見てみたいしな」


隣を歩くファリンが驚く。


ファリン「えっ、ちょっと待って・・・、手を抜いて叔父様や団長と引き分けてたの?」


困るロイ。


ロイ「いや、手は抜いてないですよ?、只、私の本職はあくまで聖職者、守護と補助がメインなのです、だからあの時は補助も守護魔術もましてや魔法も使ってなかったんですよ」


ファリン「なんで使ってなかったの?」


何となく腑に落ちない表情のファリン。


エルベム「それは人も、魔物も動物も真っ先に狙うのが補助や守護の者だからじゃ、だから使わずに訓練しておかないと剣だけで戦う場面もあるじゃろう」


ロイ「前に言いましたよね、私の剣は「守る」為って、だから守る為の剣を磨くために手合わせをしたんですよ、旅に出て手合わせが出来てなかったですし」


エルベム「まあ、ロイの実力はこれからわかる、安心してみておれ」


ロイが準備の為、階段を降りていく。

ファリンとエルベム卿は王族用の観覧席に移動し試合が始まるのを待っている。


エルベム「心配か?ファリン」


ファリン「ええ、国一番とされ、叔父様にも勝てるモスルン将軍と手合わせなのですよ?、心配しない方がおかしいです」


正妃「あらあら、ファリンはすっかりロイ様を好いてらっしゃるのですね」


赤くなるファリン、茶化す正妃。


エルベム「なに、見ておれ、あの聖盾と言われた男の孫で一番弟子、世界最強の盾を持っておるわい」


国王が観覧席に座り、手合わせが始まる。

ルールは相手の戦意消失か意識を刈り取るまでがルール。

国王が手をあげ声を掛け、手を下ろすと合図され手合わせが始まった。

始まった瞬間、モスルンが仕掛ける。

ロイが方丈を逆さに持ちツヴァイヘンダーとして迎え撃つ。

剣戟はほぼ同じ、両手剣で間合いを詰めるがロイのツヴァイヘンダーがそれを許さない、動きで間合いに入るが素早く持ち手を変え応戦するロイ。

しばらく剣戟でやりあうが埒が明かないと見るや魔術で対応するモスルン。

それをすべて避けてみせるロイ。


エルベム「盾を使わんのか」


ファリン「盾?」


エルベム「聖盾の由来の「盾」を使っておらんのじゃよ」


モスルンの魔法と剣戟を全て受けきって見せるロイ。


モスルン「全部防ぎますか、恐ろしいですね・・・」


再び距離を取り、詠唱を始める。

その瞬間、ロイが反撃する。


ロイ「させませんよ」


間合いを詰め、魔術詠唱を妨害するロイ、移動をしながらなんとか詠唱を続けるモスルン。

お互いの間合いを取りつつ一進一退の攻防が続く。


エルベム「そろそろ、使いだすかの・・・」


ファリン「何を?」


エルベム卿のつぶやきを聞き逃さなかったファリン。


エルベム「ロイがそろそろモスルンを追い込みかかる為の魔法じゃよ」


会場への歓声がひと際大きくなる。

モスルンが身体強化の魔術を無詠唱で唱える。


ロイ「やはり、それは無詠唱なのですね」


モスルン「君の本気を見たいからね、ここからはさらにペースを上げさせてもらうよ」


先ほどまでのせめぎあいからさらにテンポが上がる。

それを全て防ぎ切るロイ。


モスルン「まさか、本当にあのライ様の弟子だった事ですね・・・」


自身の攻撃が防がれたのに嬉しそうな顔のモスルン。


ロイ「まあ、会場の殆どは偽物だと思っていたでしょうね」


クスッと笑うロイ。


モスルン「笑えるほどの余裕があるなら全力を出させてもらおうか」


モスルンが立ち止まると、体に纏っていた身体強化魔術の色が黄色に変化する。


エルベム「よいよ、決めにかかる覚悟じゃな」


エルベム卿が前のめりになり、この先の展開が待ちどうしくなる。


ロイ「では、私も答えましょう」


ロイの周りに光の壁が現れる。


モスルン「絶対領域魔術を無詠唱ですか・・・」


呆れるモスルン。


ロイ「いや、絶対領域魔法ですよ?」


ロイの周りの魔力壁が赤白い色から青白い色へと変化する。


モスルン「これは、本当に最後に一撃を入れないとダメそうですね・・・」


モスルンがロイに向け最後の攻撃を行い始める。

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