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聖盾(せいじゅん)の魔法使い  作者: 嘉七
ローエンス王国編

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第十二話

開けられた宝石箱の中身を見て理解したのは二人だった。

中身を見て七色の瓶の正体に気がついた国王が思わず立ち上がり宝石箱に近づいて行く。

慌てて近衛兵が立ち塞がり国王を止める。


近衛兵「お待ち下さい国王様、罠が仕掛けられているかもしれません、お持ち致しますのでお待ちください」


近衛兵が七色の瓶を持ちに来る前にファリンが箱から取り出して国王の前に膝を着いて差し出す。


ファリン「ロイ・エルベムとファリン・ローエンスが王国に献上致しますのは幻の回復薬「エリクサー」でございます」


エリクサーの名前が会場に知らされると騒めきが大きくなる。


アヴァル「本物か?」


ファリン「はい、本物で御座います」


エリクサーは死以外のあらゆる全ての病気、怪我、毒を回復出来る最高の薬であり、それ一本で国家の同盟を結ぶ事が出来る幻の薬である。


バイル「エリクサーがそう簡単に手に入るはずが無い!、偽物だ!、そんな偽物を献上してもお前の婚約話は無くさんぞ!」


献上品がもし本物ならファリン10人分以上の価値のある。


ファリン「ではこちらではどうでしょう」


ファリンがもう一つの宝石箱を開けると赤白く煌る鉱石の原石が現れる。

こちらは貴族なら誰でも知っている。

その鉱石を持つ者は不純を寄せ付けず、貴族とのして最高の名誉と威厳を持って繁栄をもたらすとされる鉱石。


ファリン「ヒヒロイガネの原石で御座います」


現れたヒヒロイガネの原石と共鳴して、ファリンが付けている左手の薬指の指輪も煌る。


アヴァル「ファリン、まさかお前のその指輪は・・・」


光だした指輪を見て驚きを隠せない国王。


ファリン「はい、そこに居るロイ・エルベムが私に婚約指輪として頂いた物でございます」



会場がより一層騒がしくなる。

ファリンは会場の騒々しさを他所に話し出す。


ファリン「エリクサー二本、ヒヒロイガネの原石、以上を持って私とロイ・エルベムとの婚約をお認めになっていただけないでしょうか」


バイル「なりませぬ国王様、この献上品確かに本物の可能性はあるかもしれませんが、まだ真偽の程がわかりません、しかもそこのロイとか言う男は身元がハッキリしない男、どうやって叔父上に取り入ったか判りませんが、聖職者紛いの服装でこんな献上品を持つ事など出来るはずがありません」


ファリンとバイルの板挟みで考え込む国王。

そこへファリンが提案する。


ファリン「では、ここへ叔父上をお呼びしましょう」


ファリンがロイに指示をする。


ファリン「ロイ、出して頂戴」


ロイ「了解、転送門展開」


ロイが法丈を床に立てる、魔法陣が展開される。

その瞬間、魔法陣の展開を見た近衛兵が一斉にロイを殺そうと剣を抜き制圧に取り掛かろうとした。


キーンッ


乾いた金属音が謁見の間に鳴り響く。

近衛兵の持っていた武器が全てファリンによって破壊され、近衛兵がその場に倒れる。

ロイの展開した魔法陣の中央に扉が現れる。

そして、扉から現れたのは正装したエルベム卿だった。


エルベム「何やら物騒だなぁ、出て来たら兵士が倒れとるではないか」


バイル「エルベム卿!」


バイルが驚きの顔をする。


エルベム「おー、久々だなバイル、兄上も元気そうだな」


久々の再会で喜ばせるエルベム。


アヴァル「相変わらずだな弟よ」


丞相が慌ててエルベム卿に意見する。


丞相「御前であるぞ、礼儀をわきまえよ」


アヴァル「良い良い、私と弟の中だ不問にせよ」


エルベムが辺りを見廻しロイに声をかける。


エルベム「ロイ、転がってる奴に回復をかけてやってくれ」


ロイ「分かりました」


ロイが法丈で再び魔法陣を展開する。


ロイ「回復陣展開」


白い魔法陣が場内を包み倒れた兵士達から光が浮かぶ。

やがてファリンにやられた近衛兵が気がつき立ち上がると目の前にさっきは居なかったエルベム卿が立っており慌てて、退場していく。


エルベム「さて、わしが何故ここへ来たかは大体予想はつくが説明して頂こうか」


一連の流れがエルベム卿に説明されると考え込むエルベム卿。


エルベム「バイルの言う事も最もだ、このエリクサーが本物と証明出来れば良いのだな?」


バイル「そう言う事になります、ただ本物だとしてもファリンの婚約は認められません、既に隣国とも話が進んでいるのです」


エルベム「勝手に本人了承も得ずに進める婚姻が認められるか」


バイル「王家の婚姻は本人の意思など関係無いのです、いかに国と王家にとって優位で有意義な関係が結べるかなのです、そこに本人の意思など元々無いのですよ」


エルベム「そう言うお前さんはこの国一の美女と呼ばれた妻を娶ったな、気立もよくお前に尽くして美人な妻だな」


自分の妻を持ち出され焦るバイル。


バイル「今は妻の事は関係無いのでは無いですか?」


エルベム「どうかな?、辺境軍近衛兵団副団長の許嫁で婚約式まで済んでおったのをお前さんが横から掻っ攫ってたじゃろ」


自分の過去を暴露され焦るバイル。


エルベム「王族に睨まれ、仕方なく家の存在と領民を思うが為に駆け落ちまで考えておったのに、白紙にして結婚したお前の嫁はさぞ恨んでおるだろうな、結婚式でのあんな花嫁は見た事なかったぞ」


その話に正妃が反応する。


正妃「バイル、その話は聞いていませんよ?」


バイル「あ、いや、お母様・・・」


正妃「どおりで会っても笑った顔を見た事ないと思ったらそんな事情があったなんて・・・」


エルベム「男爵家同士での結婚に王家がしゃしゃり出て来ては勝てるわけ無く、今だに副団長は独身を貫いておるわ」


正妃「バイル、後でしっかり話しましょう」


バイル「はい・・・」


意気消沈のバイル。


エルベム「まあそれは置いておいて確かに話が進んでおるなら厄介じゃが、ここは一つこのエリクサーが本物であるかの証明せねばならんな」


ネイル「では私が証明の実験台となりましょう」


側妃ネイルが車椅子に乗って現れる。


ファリン「お母様、良いのですか?」


ネイル「ファリン、あなたが信じて婚約したロイさんが持って来た物を信じないでどうするのです?」


正妃「お待ちなさい」


ここで正妃がネイルを止める。


正妃「お久しぶりね、ネイル」


ネイル「お久しぶりでございます正妃様」


ネイルの手を取り再開を嬉しそうにする正妃。


正妃「確かにあなたが回復すれば本物となりましょう、ですがエリクサーは回復途中でかなり体に負担がかかると聞いています、只でさえ良くない状態でここで更に何かあったら、あなたのご両親に申し訳が立たないわ」


ネイル「正妃様、お心づかいありがとうございます、しかし私の娘が信じた人が持ってきたものそれを私が信じて、回復して見せねば娘が好いて選んだ人との将来が無くなってしまうのです、ですから正妃様、今回だけは私の少ない我儘を聞いていただけないでしょうか・・・」


涙ながらに正妃に嘆願するネイル、その目に覚悟を見た正妃も覚悟を決めた顔をする。


正妃「わかりました、貴方の我儘を聞きましょう」


国王に振り向き正妃が告げる。


正妃「国王様、貴方の一時の気の迷いで私の親友をここまで追い込んだのです、今回は私の裁量で決めさせていただきます」


戸惑う国王。


アヴァル「しかし、本物で無かったら・・・」


正妃「それを証明すると言ってるのです!、私の大切な親友が体を張って娘の為に証明すると言っているのです、これ以上誰が証明を示せるのですか!」


正妃の圧に押される国王。


アヴァル「・・・、わ、わかった、側妃ネイルよ献上されたエリクサー一口をそなたに与える、身をもって証明をいたせ」


ネイル「国王様、ありがとうございます、この身を持って証明させていただきます」


一本のエリックサーの封が開けられる、銀杯に一口注がれるとすぐさまエリクサーの瓶の栓を封印する魔術使い。

銀杯に注がれた一口のエリクサーは七色に光る。

ネイルの前に献上され、銀杯を受け取るネイル。

それを心配そうに見届けるファリン。


ネイル「大丈夫ですよ」


ロイがファリンに声を掛ける。

ネイルが国王に銀杯を捧げ、自らの口に持って行き、銀杯からエリクサーに口をつける。

エリクサーを飲み干すとネイルの体の周りを光が包み込み始める。





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