結衣と悠貴 月宗SIDE
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————「今日から君たちの兄になる花柳院悠貴だよ。よろしくね?2人もいっぺんに妹ができるなんて嬉しいな」
まだ幼さの残る面立ちの悠貴が2人の妹に向かい笑いかける映像が見える。
「お兄様?わぁ!嬉しい!こんな素敵なお兄様ができるなんて!」
頬を上気させてぴょんぴょんと飛び跳ねる幼い桜子の横で、スカートを握りしめて悠貴をじっと見る結衣がいる。
「……?結衣ちゃん?どうかした?大丈夫だよ、怖くないよ」
「結衣、もうお兄ちゃん、いるもの。」
結衣の言葉にニコニコと笑いながら無理やり手を引いて行く悠貴の静かにキレた顔を最後に映像を閉じた。
「お前さえ居なければ!!!」
雲雀に押さえつけられ、俺の前で跪かされているのがプライドに障るのか激昂した悠貴が叫ぶ。
「は!俺が居なくとも、結衣がお前に惚れる事はない」
「先に出会ったからという理由だけで特別になった化け物に言われたくないね」
やや冷静さを取り戻したのか真っ直ぐに俺を見て言う。
その様子に雲雀が後ろから頭を押さえつけ無理やり平伏させる。
————「兄様、もうやめましょう」
着替えが無かったのか、また消えるのを恐れたのか、儀式で汚れた巫女装束姿の桜子が悠貴に駆け寄り隣にぺたんと座り込む。
笹音の臣下を振り切って来たようで、離れたところで妖狐の集団が涼の構えた間合いに入れずに狼狽えている。
「兄様への最後のプレゼントのつもりだった。けど!笹音にあんな怪我をさせてまでしたかったわけじゃないっ!私は、兄様が好きで!!」
「桜子は黙っていて」
ピシャリと悠貴が言い、怯んだ桜子が目線を上げて驚いた顔をする。
————「姉さん…………」
結衣が階段を降りて来て、俺の横に立った。
「悠君…………私は、ずっと悠君から逃げて来た。それがあなたをここまで増長させてしまったんだと思う。悠君の気持ちを知りながら、逃げる事しかしてこなかったから」
俺の着物の袂を掴む手は震えているのに、その声は凛としている。
「私は……私はあなたが大嫌い。私が好きなのは月宗様だけだもの。彼と離れて現世に帰るなんて考えられない。あなたは私のお兄ちゃんでも恋人でもない。私が愛しているのは八咫烏のご宗主様だけなの」
そう言って天を仰ぎ見る結衣は、真っ直ぐに神々の観覧席を見て言う。
「何か願いを叶えてくれると言うならば、花柳院悠貴の記憶から、私を消して頂けませんか」
「何で!待って結衣ちゃんっっ!!!君みたいな子は僕の隣が一番いいはず!!」
「いらない」
大きくはない、けれどあたりに響く透き通る様な声で結衣が言う。
泣いてばかりいた、あの結衣が。
————「 可 」
天から諾の返答があり、悠貴がずるっとその場に倒れ意識を失った。
そんな悠貴に一瞥もくれず続ける。
「桜子、あなたは何も出来ない私が憎かっただけ。私が別の道を見つけたら、貴方には何も残らない」
唖然とした桜子をその場に残し、結衣を抱き上げ羽根で隠す。
華奢な身体で俺にしがみついて微かに震える結衣を強く抱きながら、また甘い匂いが強くなったなと思い苦笑する。
「やべぇな……これ以上惚れるってあんのか……」
「もうお里に帰りたい……」
「ああ」
獅子丸に乗った涼風が天の観覧席に向かい手を振りながらついてくる。
今はただ、俺の手に八咫烏の至宝がある事に安堵して前を向く。
泣き虫で自信のない結衣が俺のために頑張ってくれた事が嬉しい。
全ての怖いものから守ってやりたいと思うのに、結衣は俺の為に殻を破っていく。
「さんざん甘やかしてやるから覚悟しろ」
「………………ん…………」




