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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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俺の花嫁 月宗SIDE


————「ママの踊りが見られなくなっちゃったから悲しいお顔なの?」


————「じゃあゆいがいっぱい練習してお兄ちゃんに踊り見せてあげるね!次遊ぶ時のお約束!」




 あの時の、あのガキの時の約束。

結衣の演舞に神々の観覧席から花弁と紙吹雪が舞い、観客席がどよめいている。


妖狐(ようこ)の里の貴賓席で立ち上がり唇を噛む桜子と、主賓席で唖然とする悠貴を認めて苦笑する。


「月宗、けしかけた俺たちが言うのも何だが、結衣ちゃんは一気に桜子ちゃんを超えたぞ。妖狐(ようこ)と狛犬の当主の顔を見ろ。あれは見惚れて時が止まってるぞ」


夜臣が他族の観覧席を見やりながら言う。

笹音(ささね)の呆気に取られた顔と、天道寺の惚けた様な表情に腹が立つ。


「ご宗主殿、ゆめゆめ花嫁様を手放す事のございませんよう」


時雨(しぐれ)殿、掌返しが過ぎますやろ。しかし可愛らしい子ぉやなぁ。雲雀(ひばり)に欲しいぐらいやわ。ご宗主が負けはったら是非ともうちに嫁いでほしいわ。無理やろか?」


時雨(しぐれ)のセリフに文影(ふみかげ)が軽口を叩く。


 この一瞬でうるさい三柱(みはしら)共を全て掌握した結衣は、獅子丸の背に乗りこちらに向かってくる。俺の元に。

会場中が俺の至宝に見惚れている事に苛つきながら、自分も結衣から目が離せない事実に苦笑する。


「月宗さま!」


天女かと見紛うほどの俺の宝が観覧席上空に現れる。手すりに足をかけて羽根を出すと、するりと俺の腕の中におさまった。


「見ていてくれた?」


「ああ、天女かと思った。あの時の約束を覚えていたのか」


「月宗様のお母様の舞衣装をお借りしたの。勝手にごめんね」


「いい。全て宗主の花嫁である結衣のものだ。」


「ふふ、桜子には負けちゃうかもだけど、見ていてくれたなら、よかった。」


何も気が付いていない結衣に神楽殿(かぐらでん)の方を見せるが、まだキョトンとした表情で俺を見る。


禍ツ魂(まがつたま)はお前が(かえ)した」


(かえ)す?」  


「もういないだろ。俺たちは何もしていない。結衣が舞い始めてすぐに浄化され天に還された」


パチパチと瞬いて神楽殿(かぐらでん)を見る最愛にキスを落としていく。


「みんな見てるよ……?」


「見せてんだよ!!!!!!お前これ被ってろ!!!!」


 羽織を脱いで頭から被せると、羽織の中で涼風(すずかぜ)とクスクスと笑い合う。


その時会場がどっと沸いたかと思ったら、ザワザワとした喧騒が広がった。


「月宗!陣営華!!」


 神による勝敗の審査結果を表す華が八咫烏(やたがらす)側と妖狐(ようこ)側に咲き、引き分けの結果に会場中が不信の声を上げる。


結衣の舞は俺たち眷属(けんぞく)神には癒しになる。神々ならなおさら。桜子のような祓いなど、俺達は皆できるのだから。


 誰もが……結衣以外は皆、結衣の勝利を疑わなかったにもかかわらず、神々は引き分けを下した。


「どう見ても、お(ひい)さんの方がお見事やった思いますけどねぇ。それでも引き分けにしはるんやなんて……まぁ、よう出来たお裁きどすなぁ。神さんも二幕三幕期待してはったんやろなぁ。ここで終わってしもたら、面白うおへんのやろ」


「父上、不敬やろ。……けどまぁ、勝負ついてても終わらせへんのやから、よっぽど退屈してはるんやろ。人生暇なんやろ、あの人ら」


雲雀(ひばり)さん!!オブラート!!」


当の結衣は俺の腕の中で首に腕を回し抱きついてくる。


「あれ…………?負けたんじゃないの??」


「ああ。誰もが結衣の勝ちだと思ったぐらいだぞ?引き分けた」


「わぁ!!涼風(すずかぜ)やったねぇ!!」


俺の肩に移動した涼風(すずかぜ)と俺越しに手を握り合う結衣は無邪気に喜んでいる。


「月宗、お前結衣ちゃんのおかげで首の皮一枚つながったな」


「ご宗主殿、負けはゆるされません」


「負けはったら、雲雀のお嫁にきてくれんかなぁ。無理やろか」


ごちゃごちゃとうるさい三柱(みはしら)共を目線で黙らせていると、光久がそばで跪く。


「月宗様、二幕(にまく)のご用意を。姫様は四つ守にお任せ下さい」


「ああ。結衣、ここで待ってろ」


なぜか首に回る腕がさらに深くなる。


「結衣?どうした……?」


引き分けと聞きほっとしたのか、微かに震える結衣を抱え直す。


「結衣はこのまま陣幕に連れて行く。四つ守は全員結衣の守りに付け。八咫烏(やたがらす)の宝に、誰も近づけるな」


「「「「 承知 」」」」



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