お茶会
何時間も沢山おしゃべりをして、美味しいスイーツもお腹いっぱいたべた。
人生初の女子会に浮かれてしまう。
光久さんがテーブルから少し離れて立ち、類君がガゼボの屋根で警護する。
岸では涼さんと小四郎君の姿も遠くに見える。
「こんな所で敵襲なんてあるはずもありませんのに……溺愛ですわね?」
冬乃さんがうっとりと言う。
「結衣に会いにきてやってほしいって丁寧なお手紙をもらったよ。大事にされてるみたいで結構結構」
マリーまで茶化してくる。
「マリーさんあなた、結衣って呼んでずるい!」
「マリーでいいよぉ」
「くっ!何この子、さっきから思ってたけど不思議ちゃんね!?」
かすみさんもよっぽどだと思うけど…………
「結衣で良いよ?」
「本当!?嬉しい!本来なら私結衣の女官よ!?」
獅子丸タクシーで広いガゼボをぐるぐるまわって遊んできた涼風が私の膝に戻り、獅子丸が隅で丸くなる。
「本当は嫁渡りをすませた時点で私の様な三柱家の者から女官が付くわね。
月宗は人見知りの結衣にいきなり私みたいなのを付けたくなかったんでしょ。
女官って、筆頭侍女よ?常に側にいて、まぁようするに取り巻きになるの。
私の他にも三柱の女がいつお声がけがあるかと首を長くして待ってるわよ」
「女官はいらないけど、お友達になってくれたら嬉しい……」
「~~~~~~っ!?」
「結衣は、人たらしだからねぇー」
「うちの夫が陥落するぐらいですもの。蛇の宗主を手懐けるなど普通ではありませんわ?」
そう言う冬乃さんこそ、おじ様に溺愛されていそうだけれど。
私の前のグラスに長いストローが入っていて、持ち上げなくても良いので飲みやすい。
涼風が月宗様の真似をして私の口にマカロンを運ぶ。
スプーンやフォークは使えないのか、手づかみでいけそうな物ばかりなのが楽しい。
「ふふ、涼風ありがとう。軽い物なら持てるから、大丈夫だよ」
頭を撫でてやるとにっこり笑った様な感じがした。
「ちょっとくまさんじゃあ暑いかな?本当に夏みたいなあったかさだね」
「地熱を利用しておりますの。年中快適な気温です。蛇は体温調節が苦手なもので、暖かな場所の確保は必須なのです」
へぇ、種族によって色々ちがうんだなぁ。
くまさんつなぎで汗をかき始めた涼風を着替えさせながら周りを見ると、マリーも夏用のワンピース、かすみさんも夏用の着物を着ている。
「レレさんが涼風の着替えを持たせてくれた意味がやっと分かりました」
フード大好き涼風のためにフード付きの白いTシャツと紺色のカボチャパンツ。
何着か入っているのは水に濡れてもいいようにだろう。
「これで涼しいね、浅瀬で遊んでおいで?ガゼボの周りは一段つくってあったから、涼風のお膝ぐらいなはずだよ」
ピコン!と嬉しそうにした涼風は、ハムっと指を咥えてブ、ブ、ブ、と指笛もどきな音を立てた。
隅で丸まって寝ていた獅子丸がその音を聞いて矢のようにかけてくるのが面白い。
「愛らしい天衛様ですのね、涼風様は」
冬乃さんが浅瀬で獅子丸と戯れる涼風をみやりながら言う。
「はい、私には、もったいないくらいで」
「天衛君はさ、いつも結衣から離れなかったのにこっちでは自由にしてるねー?ご宗主の器の違いかな?私が言うのも何だけど」
「月宗?あいつ結衣の事になるとてんでダメな阿呆鳥よ?まあでもやたら慎重だわね。八咫烏の里に結衣の居場所を作る事に、全神経を集中させてる感じ」
かすみさんが呆れた様に言ってイチゴのタルトを頬張る。
「まぁ、あの御宗主が?人は見かけによらないわねぇ。でもこの数時間だけで溺愛ぶりが分かるのもすごいわよねぇ」
冬乃さんまで。
遊んでおいでと言ったものの深い所に落ちないかハラハラと見守る私に気がついたのか、類君が降りてきて涼風の頭にとまった。
「よろしいのよ、男と女は惚れた方が負けですもの」
冬乃さんがにっこり笑って言う。
「それなら、もう負けちゃったかも。」
私の方が、焦がれる程好きだもの。
——「んなわけねぇだろ。お前の圧勝だよ。」
「月宗様!!」
バサバサっと音がして、空から月宗様と雲雀君が降りてきた。
二人とも今日は珍しくスーツだ。現世のお仕事だったのかな。
マリーと冬乃さんがしゃがんで跪く。
「狛犬の。結衣の侍女にどうだ?」
「もったいないお話ですが、私には母がおります故」
何?何の話?
「では、新設中の図書室の司書ならば。母御も一緒で構わない。建設から一切の管理を任せる。」
「行きますっっっ!!!!」
マリーがガバッと顔を上げる。勢いが凄くてビックリして月宗様を見ると、私を溶けるような顔で見てる。
「えっと……マリー?せっかくおしゃれな図書室を作ってきたのにいいの?」
「あ、言ってなかった?あそこ取り壊されるんだよね。ダンスホールになるの。だから私みたいなのしかやる人もいないし、私の好きに出来てたんだよ。なくなったら田舎に帰ってウェイトレスでもやろうかと思っていたんだけど、母を施設に入れるしかなくて……結衣が気に入ってくれたからチャンスあるかなーと思ってたのに、そこまで気が回らなかった様だね、うちの次期御宗主様は。嘆かわしい事に、犬ってのは頭を使うのが苦手なのよ。だから結衣の旦那さんすごい!!!」
「まだ旦那じゃない!彼氏!!」
「………………」
「うふふふ、ご宗主様、我らが姫をしっかり捕まえておいて下さいまし」
「紫波の奥方か。今日は助かった。結衣が気に入ったようだ。また呼んでやってほしい」
「ご随意に」
月宗様を認めた涼風がかけてきて足にベチョッとくっ付いた。
ん?ベチョッ?
「うぉい!お前びしょびしょじゃねーか!離れろクソガキ!」
口では酷いことを言うけれど振り払ったりはしない。
涼風も全く気にせず虫のようにぺったりはりついてる。
「ふふ、涼風おいで?またおきがえしようね」
涼風をタオルでくるんで拭いていると、かすみさんも類君を優しく抱き上げタオルでつつむ。
嬉しそうな類君が見られて私まで優しい気持ちになる。
獅子丸が体の水分を飛ばすのを見て、驚いた涼風がまた飛び出していきそうになり慌てて止めた。




