↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/106

朔の日


 ダンスの練習をしたり、マリーのところへ通ったりと相変わらずの生活。


胡桃(くるみ)の紅を握りしめて泣く私にマリーはケラケラと笑う。


「そんなにすぐ忘れようとしなくていいわよ」と。


 忘れたいと思う日もあったり、忘れたくない初恋の思い出にしようと思う日もあったりで、結局は毎日クルミを持ち歩いている。


 朔の日が近づくにつれて考えてしまう。


どんな顔をして月宗様に会えばいいのだろうか。

桜子は未だカラスの里にいると聞いた。

悠君はもういないというのに。


 そんなことばかり考えていたからだろうか、朔の日の前日に、私は高熱をだした。


子供の時ぶりの高熱に、類君はオロオロとし、涼風(すずかぜ)は不安なのか私の枕の横で丸くなって離れない。


「辛いだろうが、連れて行かなければならないんだ。場所だけ移して、あとは眠っていて構わないから」


おでこの布を取り替えてくれながら恭が言う。


返事すらままならない。

体も心も言う事をきかない。




◇◆◇




 ネグリジェの上からガウンをかけられ、恭に横抱きにされた状態で私は境目(さかいめ)屋敷に入った。


目が開けられず、あの人がいたのかすら分からないまま以前の部屋に通された。

レレさんとマキノさんの悲鳴が聞こえ、バタバタと看病の為の用意をしてくれている音だけが聞こえる。


「………………2人とも、ごめんなさい」


「「っお嬢様!謝らないで下さいまし!」」


2人が悲痛な声で叫ぶ。


——こんな風にまた迷惑をかけるつもりは無かったのに。


——考えて考えて、あの人の元気な顔が見られたらそれでいいと、区切りにしようと思っていたのに。


 彼から申し込まれていた昼食の予定は流れ、私はベッドから動けないでいる。


うとうとと短い睡眠を繰り返し、気がつくと外はもう夕暮れだった。

窓から流れ込む夕焼けが、白い壁を淡く染めている。


腕の中にレモン色のモコモコつなぎ涼風(すずかぜ)がいる。

レレさんにきせてもらったのかな。

つなぎを着る気持ちになってくれたのは嬉しいな。


「似合うよ、涼風(すずかぜ)

声が掠れて上手く言葉にならない。


布面があるから起きたのかよく分からないけれど、涼風(すずかぜ)はスリとおでこをくっつけてきて、そのまま大人しい。


 熱が全然下がっていない。

暑いのか寒いのかすらよく分からないのに悪寒がする。

サイドテーブルの水差しに手を伸ばしたけれど、重くて持ち上げられず断念した。


「………………お嬢様、お目覚めですか?紫波(しなみ)殿が待機しております……部屋にお通ししてもよろしいでしょうか」


マキノさんが遠慮がちに言うのにうなずいて見せると、白衣を着たおじ様とヨダカ君が入室して来た。


涼風(すずかぜ)がヨダカ君に飛びついて行く。


 白衣と言っても詰襟の変わった白い着物に、下は白い袴。

聴診器の様な器具を下げているのでちゃんとお医者さんっぽい。


「姫ちゃん…………おいちゃんが見るから、すぐ良くなるよ。ちょっと我慢な?」


起き上がろうとしたけれど、重い体は言う事を聞かない。

マキノさんが手伝ってくれてようやく上体を起こせた。


「声は…………上手く出ないか」


 ガラスでできたキラキラする聴診器を当てられて、目の腫れを見る様に下瞼(したまぶた)を引き下げる。


「ヨダカ、チビガラスを呼んでこい」


「はっ!」


ぴょんとまた涼風(すずかぜ)が私のもとに戻る。この子も私を心配している。


 おじ様は黙って私の脈をみて、また横になるのを手伝ってくれた。


「参りました紫波殿!」


「狛犬の里では姫ちゃんの食事はちゃんと出されていたか?」


「?はい」


「姫ちゃんは残さず食べていたか?」


「……………………それは、あまり……食欲が無いと仰って……」


「あちらで姫ちゃんは楽しく過ごしていたか?」


「……………………」


「………………分かった。下がっていい」


「はい………………」


しょんぼりした類君が退室して行き、おじ様がヨダカ君に何か指示をする声がボソボソと聞こえる。


 薬を作る音なのか、ガリガリとすりつぶす様な音がする。

おじ様ともお話ししたいのに、息をするのも億劫でままならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。