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眷属神の花嫁  作者: 雨香
第二章 お見合い編

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華やかな嫁渡り

 

 羽で飛んでいかれたらどうしようかと思ったけれどそんな事はなく、信じられない程大きい青幽(せいゆう)家の外門をくぐるとすぐに大通りに出た。


 綺麗な石畳の道に日本家屋が並ぶ。大通りはお店が多いのか、縁台や日除けの大傘などが軒に出ていて賑わっている。


自動車は通らないはずなのに道は広々としていて、お店の間口も広い。土地をゆったり使った日本家屋に黒い鉄の洋風な街灯が並ぶ。


「すごい……素敵だね」


「はい!月宗様がご当主になられてから整備されました!」


私の横を歩く類君が言い、先を行く淡雪さんが私達に手を振る。


「ここのお店は焼き菓子が美味しいの!お茶をしましょう!」


「はい奥様」


 店構えは全て統一された和風の家屋だけれど、内装はそれぞれ違う。淡雪さんの示したお店は完全に洋風な内装がされていて、大通りの軒先には装飾の施されたテーブルセットが並んでいた。

テーブルセットの材質と色が、街灯と揃えてあってシックでとてもオシャレ。


「素敵なお店ですね」


「そうなの。テラス席にしましょう。今日は暖かいから」


「はい」


 テラス席には1組の女の子達がいたけれど、淡雪さんをみて慌てて店を出ていった。


大通りに出されたテーブルには私達だけになって、私と淡雪さんが座り、傍にルーラさんと類君が立つ。


「おりこうさんね。あとで綿あめを買ってあげましょうね」


私の膝上の涼風(すずかぜ)に話しかける淡雪さんの声は穏やかで、パニックになっていた時の面影はもうない。


布面の涼風(すずかぜ)にも不思議がらず、手を叩いて喜ぶくまさんを優しく見つめる。


 出された紅茶とケーキをとても綺麗な所作で食べる彼女はやはり和装の方が似合う気がする。


ピンとした背筋。紅茶のカップを持つ手がお手前を持つ所作のそれだもの。


過去を思い出さないでいられるように、わざと洋装のドレスなのかもしれない。


街の人たちは皆和装なのでドレスは目立つ。

彼女もドレスを着慣れていない感じがする。


 その時、袴姿の八咫烏(やたがらす)の剣士が大勢やってきて、大通りの左右に警備員のように立った。近くに立った剣士さんがギョッとした顔をして私達を見ている。


奥の方から歓声が聞こえ、沢山の人達が店奥から出てきて沿道に並んでいく。


私のせいなのか、淡雪さんを避けているのか、このお店周りだけポッカリ穴が空いたように人がいない。


 大通りの奥から見えたものに息をのむ。


————花嫁行列

————桜子の嫁渡り。



ここから逃げ出したいのに足が動かない。

ダラダラと変な汗が流れて、息が苦しい。


 先頭に、月宗様。

すぐ後ろに人力車に乗った大振袖姿の桜子。

その周りを四つ守さん達が護っていて、後ろにずらっと終わりが見えないほど長い八咫烏(やたがらす)の剣士達が並ぶ。


 私の時とは違い、妖力なのか淡い紙吹雪が飛び、空に消えていく。

大声援の中、紋付袴姿の月宗様がゆっくり先頭を歩いてくる。


「姫様………………」


 類君が青い顔をして私をみてる。

どんどん近づく月宗様に悟られないように目をギュッと閉じて下を向いてやり過ごす。腕の中に涼風(すずかぜ)を隠して。


————「っつ……………………」


あの人の息遣いが聞こえた気がした。

私の耳は、いつもあの低い声を聞き取ってしまう。


「あら姉さん。————止めて」


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