愛おしい日々
類君が側にいて、ヨダカ君もたまに来てくれる。
(ヨダカ君は八咫烏側に来た医師団員でもある)
二人のお兄さんに囲まれて、涼風がとても楽しそう。
私と二人だけの時よりも、遊びのバリエーションも増えた。
「もーーいーーよ」
なぜかいつも私を探す隠れんぼ。
子供達の楽しそうな声が遠くに聞こえる。
————「おい。なんでいつも俺の羽根に隠れんだよ。毎回そうだからあいつらいっつも俺を探すだけでいいじゃねぇか」
なんだかんだ文句を言ってもちゃんと隠してくれる。
「隠れんぼは、簡単なのがいいの」
小さい頃、みんながやってるのをみて、母に一度お願いした。
ちゃんとみんなのようにじゃんけんからはじめて、負けた私が探す役。
10数えたところまでは良かった。
そこから世界にたった一人で取り残された気分になった。
母しかいないのに、母は隠れてしまった。
見つけられなかったら、わたしは一人?
かくれんぼって、見つからない場合はどうやって終わりにするの?
「ここに隠れる理由になってねぇだろ」
「…………この場所が、すきだから」
「……………………そうかよ」
「うん」
「俺は今試されてんのか…………?」
月宗様のお部屋は純和風。
私のお部屋の廊下を曲がった先にある。
これだけ聞くとわりと近いと思うけれど、そもそも廊下が長いので結構な距離があって途中に中庭が二つもあるぐらい。
いつも襖は開いていて入り放題。奥には立派な日本庭園が見える。
ついばむみたいなバードキスが贈られる。
頭のてっぺんから始まって、頬も、瞼も。
子ども達がすぐ来るのが分かっているから大人のキスはないけれど、嬉しくて、焦がれて、叫び出したくなる。
カラスの愛情表現だと分かっているからなおさら。
「次の休みは街に出るか」
カラスの里の街。
遠巻きに見たあの大正ロマン風な石畳みの素敵な街並み。二人で歩けたらきっと楽しい。
「うん、行ってみたい」
「その前に朔の日があるな。めんどくせぇ」
「1日?まだ先じゃない?」
境目屋敷にみなが集まる日。
「いや、新月の日の方の朔だな。花嫁の意思を守る為にある決まりだから、パスできん」
なるほど。色々考えられてるんだな。
「ここがいい」
「ああ。美味いもん食って帰ろうぜ」
羽根と畳の間から小さな手が入り込んできてペタペタと私を触る。
「おいクソガキ、無理やりこじあけんじゃねぇって言ってるだろ」
ぴょこんと布面のお顔が入り込み、観念した月宗様が羽根を戻す。
「涼風様!タッチはしましたか!?」
類君が涼風の頭にとまり、涼風がはーいと大きく手を挙げる。
その後ろでにこにことヨダカ君が見守ってる。
「ヨダカ、こちらの生活はどうだ?」
「はい、お陰様で不自由はございません。そ、その、僕を現世の学府にいれてくださるって本当ですか!?」
「ああいいぞ?ある程度妖力のあるお前なら何があっても誤魔化せるしな。実力は誤魔化してやらんから勉強しろ。詳しいことは雲雀に聞けばいい」
にっこり糸目の美人顔がホワホワしちゃってる。長いまつ毛まで真っ白で可愛らしい。
「その髪は目立っちゃうねぇ。美少年すぎて……」
「染めてもいいが……まぁそれも鍛錬だな。常に認識阻害の妖術かけてろ」
「鍛錬します!!!」
どっかいっちゃうの?とヨダカ君をキョトンと覗き込んだ涼風ににっこりと笑いかける。
「涼風様、講義が終わりましたらここに帰って参ります。僕と遊べるようにちゃんとお昼寝をして下さい」
お兄さんだなぁ。11歳なんだって。
涼風とヨダカ君が両手を繋ぎぴょんぴょん飛び跳ねる。涼風の頭の上の類君が慌ててる。
「涼風様、ブランコにいたしましょう。姫様とご宗主様は大切なお話があるそうです」
ヨダカ君が優しく言い、類君をそっと自分の肩に乗せ涼風を抱き上げる。
私達にペコリとお辞儀をして去る背中越しに涼風が私に大きく手を振ってる。
「アイツ!見込みあるな!」
キラーーンと目を光らせすぐにガバッとキスされ驚く。
しょ、少年に気を遣われた!!?
「糖分たりねぇ時はこれに限る」
「はは、私は甘くないよ?」
「めっっっちゃ甘いぞ?」
そうなの?気持ちの問題かな。月宗様に糖分を食べさせるのは好きなのでキョロキョロと探したけれどテーブルには何もない。
「生クリーム、あればよかったね?」
「お前、どういう意味で言ってんの……」
「どういう意味って?」
「俺の鋼の理性が…………」




