オリエンテーション 3
先生が倒れ込んだと同時に私の金縛りは解けて、体が自由になった。
倒れた先生の口からズズズと青黒い長いものが出る。
「えっらい無防備やなぁ。輪切りにして欲しいんやろか。僕料理結構得意やねん、こないに遅いと千切りにしてしまうわ」
「な、何」
人間の口から出ているとは思えない太さの蛇がズルズルと出てくる。
ズボッと最後の尻尾が抜けると先生の口が元に戻っていた。
呆気に取られて目が離せないでいると、ダンッとすごい音が響き、天井から白く光る矢が降って来て青黒い蛇の尻尾が床に縫い付けられていた。
ひきつるようにうねる蛇が至る所に身体を打ちつけている。
私の目の前に涼風が浮き、手のひらを前に出して静止している。
何となくわかる、これは怒ってる。
「ジャリ坊、落ち着き」
雲雀君が言うけれど、涼風は微動だにしない。
「大事なお姫さんに傷はつけへんよ。こいつには伝言役になってもらわんと」
涼風があの光る矢を出しているの?
「す、涼風、私はもう大丈夫、おいで?」
涼風に努めて優しく話しかけると、その場でグルグルっと高速で前転し、空を蹴って蛇の元に突っ込んで行った。
バコンッッッッッといい音がして、涼風が蛇の頭を鉄の棒で殴り、すぐに私の元に駆けて来て腕の中に収まるとおとなしくなった。
「わはははは!ジャリ坊、気ぃすんだか?」
雲雀くんがゲラゲラと笑い、私の腕におさまる涼風を優しく見た後光の矢を素手で引っこ抜いた。
「蛇、隠し通そう思うなよ。我らの当主は既に承知や」
モロモロとした闇のカケラの中に沈む蛇になおも話す雲雀君は本当に楽しそう。
獲物をいたぶる獣みたいな目。
「さ~~~、ご宗主が心配で押しかけんうちにちゃっちゃと用事おわらせへんと」
パチンと指を鳴らすととたんに周りがガヤガヤとし始めた。
座り込んでいた先生も、記憶がないのか頭にはてなが沢山浮かんだ顔をしてそそくさと説明会の準備に戻っていった。
説明会の間中涼風は私の膝にいて離れなかったけれど、その後の研究室まわりには大人しくトートバッグのふくらみになっていてくれた。いい子すぎて手がかからない……。
雲雀君は完全に学生の顔をして常に私の横にいて、涼さんは少し離れた部屋の外で女子と楽しそうだった。
雲雀君が、あれで警戒円解いてないから大丈夫とよく分からない事を言っていた。




