四つ守
————「月宗様、往来でいかがわしいですよ」
「だまれ光久、ひっこんでろ」
黒く空がかげったとおもったらバサバサっと羽音がした。周りを見回そうと思ったけれど月宗様の羽根に囲われて何にも見えない。
「全く……術を解きますよ。羽根はおしまい下さい」
「………………」
月宗様の羽根が目の前から消えて、周りを見ると着物を着て羽織を羽織った男の人達があたりを取り囲んでいた。
「四つ守、参上致しましてございます」
「ああ、しばらく護衛に付け」
「「「「承知」」」」
「結衣、こいつらは俺の部下だ」
ざっと跪いて頭を下げられて面食らう。
皆黒い羽根が生えていて、刀を脇に差してる。
すごく目立つのに往来の人々がスルーしているのは何かの術がかかっているのだろう。
「えっと……花柳院 結衣です。宜しくお願いします」
やっと立ち上がった四人のカラスさん達の存在感がすごい。
「矢鞍光久と申します。我ら四つ守、月宗様の護衛兼側近でございます」
うわぁ、美形さん。
スラっと細身の美人系イケメンさん。真っ直ぐな黒い長髪を高いところで結っていて忍者映画に出てきそう。
「俺は涼さんね。よろしくね、姫」
パチンとウインクした涼と名乗った方は四人の中では1番大人に見える。35くらいだろうか、大人のお兄さんといった感じ。
この方も黒髪だけれど短髪で、優しい目元の色気がすごい。
「雲雀、結衣が結界の外に出る時はお前がメインで護衛に付け」
「結界の中から出すなとは言わへんのなぁ」
「結衣の自由にさせる」
「ホンマに溺愛やなぁ」
はんなりとした京都弁を話す雲雀と呼ばれた人は灰色のフワフワした髪をガシガシとかき、珍しい物でも見るかのように月宗様を見ている。
「雲雀、挨拶を」光久さんがピシャリと言うと、ようやく私の方を向いた。
「ほぇ~~~綺麗な子ぉやなぁ。右柱雲雀や、よろしゅうな」
「あ、よろしく、お願いします……」
「1番デカくて1番弱いのが小四郎」
「俺可哀想っ!………………いじめかっこ悪い!!」
月宗様が最後に紹介してくれたのはヘーゼル色の髪をした体の大きな男の子。
この中では1番年下に見える。
カラスなのに、みんな黒ってわけじゃないんだなと妙な事に感心してしまう。
「こいつは結衣と同年だ。気安いから、顎で使え」
「ひでぇ!!でも姫様!なんでも言ってください!!」
体は大きいのに人懐っこい柴犬みたいで笑ってしまう。
「ほんまに第一天衛つれてはるわ」
雲雀君の声にはたと気がついて涼風を抱き上げる。
「涼風です。宜しくお願いします」
涼風は私をキョトンと見てから四人の方を向き、腕の中で頭をぺこっと下げた。
「涼風、結衣が境目屋敷にいる間お前は毎日こいつらと稽古しろ」
「ひぇ!俺より既に強そう…………」
「小四郎、鍛錬しなさい」
「涼風さん…………何卒手加減を…………」
ぴょこぴょこと楽しそうにした涼風がふわっと飛んで小四郎君の肩におさまった。
大きな男の人の肩車が気に入ってるみたい。
「こしろー」
ばっっっと四つ守さん達が涼風を見る。
「しゃべらはるん?」
「喋りましたね」
「しゃべったねぇ」
「涼風!スゲェじゃん!」
「たまに喋んだよ、涼風は。第一天衛なんて俺も初めて見るし、他とは違うのかもな」
「ちゅきむね」
「おう。お子様ははよ寝ろ」
小さな恐竜君が楽しそうで嬉しい。
風呂敷包みの結び目を大事そうに握る姿が可愛い。
「なんでみんな涼風が第一天衛ってわかるの?」
「あー、書いてあるからな」
「書くって、どこに……?」
「布面」
涼風は今恐竜着ぐるみを着ているけれど相変わらず布面はしている。パンのヒーローのお面は恐竜のトサカみたいな三角部分に引っ掛けて後ろ側についていて、お面を2枚付けている状態。
「これ?この刺繍のこと?」
涼風の布面には水色の刺繍柄が施されている。
文字…………には見えないけれど。
「神代文字だな」
人を番号で呼ぶ事に違和感があるけれど、神様界隈では普通なんだろうか。
「涼風って、呼びたい…………」
「大御神様も認めたんだ、結衣の好きにしていい」
小四郎君の髪を引っ張って遊んでいた涼風が、私の腕の中に戻ってぎゅうと首に手を回してきた。
小さな子どもの体温は暖かく、ただの器なんかじゃないと証明してくれている様で力が抜けた。




