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魔導学園ラブロジック!-トキメキはチカラ。-  作者: 花塩樹圭
第三章 魔導狩り

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14/21

澪誘拐

オープニング曲「トキメキってください」

https://x.com/HanashioKikei/status/2040632557730193424?s=20

ツイッター(現X)に動画があります

コピペで飛んでください


挿絵はAI生成のモノ(場合により手直しアリ)

絵は描けませんので…

 梅雨入りが近いことを知らせるようなジメっとした雨が夜半過ぎから降っていた。それでも今朝も活気に満ちた人の流れは色とりどりの傘と共に校舎までの坂道を登っていく。大樹もまた、その流れの中でビニール傘を差して歩いていた。

「ふわぁぁぁぁぁ…今日は何させられんだ…」

 いつものようにあくびする大樹の背後から、バシャバシャと水たまりを踏み散らして何かが駆けてくる音。それは荒い息遣いと共に大樹の横を通り過ぎようとしていた。雨に打たれて濡れそぼった金髪の女子生徒。

(ん? 朝比奈か?)

 彼女は通り過ぎざま大樹の存在に気付き、振り向いて大樹の目の前に駆け寄った。

「あっ、ひろっちだっ!」

 朝から厄介なヤツに出会っちまった、と思ったが、すぐさまその考えは捨てざるを得なかった。

「大変なのっ! 澪がっ! 澪がっ!」

 紗々羅がボロボロと涙を流していた。涙のせいなのか雨のせいなのか、トレードマークのメイクもぐしゃぐしゃに崩れ、しかしそれも厭わず大樹の両腕を掴み、整わない呼吸で、何かを訴えようと声を張る。

「どうした。落ち着けよ」

「落ち着いてなんからんないよ! 澪がっ! 澪が攫われちゃったのっ! どうしよう、ウチ、ウチ」

 いつもの軽い白ギャル紗々羅はそこにはいなかった。

「どういうことだ。説明できるか?」

「今朝、澪は当番が無いからって、ウチと一緒に登校しようって! そしたら、歩いてたら急に白い車が止まって、ドアが開いて、男が3人降りてきて澪を捕まえて! 何すんのよ!ってウチ、魔導でぶっ飛ばそうとしたらソイツら懐中電灯みたいの、ピカってさせて! そしたらウチの構文、全然結べなくて! それで、それで澪が連れてかれちゃったの! どうしようひろっち⁈ ウチ、ウチ…」

 これほど取り乱す紗々羅を大樹は初めて見た。いくらなんでもこれは芝居ではない、と思った。大樹は紗々羅の両肩を掴み、しっかりと目を見た。

「分かった。けどまずはここでこうしていても始まらねぇ。朝比奈はすぐ職員室へ伝えてこい」

「うん。分かったよ。行ってくる!」

 紗々羅は大樹の手を離れ、校舎へ向かって雨の中を一直線に駆けていった。

 周りで登校途中の生徒が集まりガヤガヤする中、大樹は全身の身の毛がよだつのを感じる。

「白鷺…ッ!」

 大樹の瞳孔がカッと開いた。そして持ち主を失ったビニール傘が1つ、開いたまま歩道に転がっていた。


◆


 廣塚市大ヶ美(おおがみ)。かつては大きな自動車メーカーの鉄板プレスで部品を供給する中小の工場で賑わっていた。だがメーカーの工場が撤退、それに伴い下請けとしての仕事が取れず、多くの工場が閉じざるを得なくなった。その内の一つ、周囲には草が生い茂り、機械も放置されたままの廃工場の前に、白いワゴン車が横付けされていた。色を失った空から降りしきる雨の中、周囲は今なお稼働している工場から規則的かつ無機的な音が断続し、濃灰色の空に溶け込んだ無人の建物の間を響いて渡っていた。

「マルキチ。外の様子はどうだ?」

「異常ねぇです」

「気ィ抜かねぇでしっかり見張ってろよ」

「了解です、タクさん」

 廃工場の中には男が5人。その奥に澪が地べたに座らされていた。猿ぐつわを噛まされ、両手両足首には手錠が掛けられている。肉厚のフレームはずっしり重く、光の加減でギラリと無機質な反射を見せるそれは、澪から逃げ出そうという意思を奪っていた。屋内には鉄パイプや角材など、以前使われていたであろう物が雑然と放置され至る所に転がっている。ジットリと肌にまとわりつく重い空気。割れた窓からは雨の音だけが流れ込んでいた。

挿絵(By みてみん)

(何なの?この人たち… どうしてこんな奴らに…構文も結べない…構文さえ結べればこんなヤツらなんか…)

「この女、望陵のヤツだろ?」

「魔導が使えるくらいで調子ノリやがって。気に食わねぇんだよ、コイツら」

(…! この人たち、魔導狩りっ⁈)

 『魔導狩り』と呼ばれるアウトローたち。『ディストーター』と呼ばれる、魔導の構文を歪め発動させない装置を使って魔導使いたちを狙っては恐喝・暴行を繰り返している。集団で行動するが組織立ってはおらず、警察もその足取りを掴むのに苦労していた。

「まぁボンボンからの依頼だ。相手が誰だかは関係ねぇ。『あっち』も付き合ってやれって言っていたしな」

「望陵のヤツらが乗り込んできたらどうするんす?」

「魔導使いが来たところでコイツがありゃ楽勝よ」

 タクと呼ばれたGジャンを来た男がポケットから出したのは懐中電灯に似た筒状の物。先日のひったくり犯が持っていたものと酷似している。

(アレって…ディストーターっ⁈)

「こないだのヤツは笑ったな。魔導が使えないと分かった途端にへっぴり腰になってよ」

「結構持ってたっすね。絞ればもっと取れたんじゃないっすかね」

「まぁな。ただコイツ、たまに接触悪ぃんだよな。前に出ないことがありやがって、泥ブッかけられたぜ? まぁ結局ボコボコにしてやったけどよ」

 この手の輩にありがちな武勇伝。これまでの悪行が自慢げに次から次へと飛び出してくる。誰も彼も自分の「戦果」を嬉々として話し、それに負けじと次の者が、と続く。

「ジョーさんよー、コイツ、もうヤっちまいましょうぜ。オッパイもデケェし、揉みがいありそうですぜ? ちっとくらい」


ヒュッ カツッ


 ブヨブヨに太った男が澪に手を伸ばしたとき彼の目前をナイフが横切った。壁に突き刺さったそれを見て、その場で立ちすくむ。澪もまたそのナイフに驚き、身をすくめた。

「手ェ出すんじゃねぇ、デブ! まだ俺タチゃ金握ってねぇんだ。手に入るまで余計なマネすんじゃねぇ!」

 「デブ」は太った男の呼び名らしい。この中の誰しもがそうした呼び名を持つが、本名ではないだろう。

「でもよぉ、マワしても構わないって言われてんだろ?」

「だからテメェはバカだって言われんだ! パコってん時にソイツが来たら、テメェはフルチンで戦うつもりかよ!」

「あ、あ、そ、そうか」

「今回はボンボンがかなり積んでんだ。仕事は確実に済ませる。テメェはおとなしくそこで女を見張ってろ」

「ボンボン、どういうつもりなんすかねぇ? イイ女がいるって言ってたっすけど、コイツのことなんじゃねぇんすか?」

「さぁな。金さえ握れりゃ俺ァ女なんかどうでもいい」

「なぁジョー。ボンボンに払えんのか?あんな金額。アイツ高校生なんだろ?」

(高校生っ⁈ まさか望陵(うち)の生徒じゃないわよね…)

「ヤツは今までも払いは良かった。今度も払うだろうが、まぁ出せなきゃ絞るだけさ。親の口座からでも引っ張ってこいってな」

「逃げたらどうすんすか?」

「学校にでもチクってやりゃいい。アイツ、魔導エリートやら目指してんだろ? ウラの悪事をバラされたかねぇだろう」

(魔導エリートって…望陵(うち)の生徒のこと…? そんな…)

 ジョーと呼ばれる男。この中ではリーダー格のようだ。彼は革ジャンの内ポケットからナイフをもう一本取り出す。

「ジョー、お前ナイフ2本持ってんのか」

「ったりめぇだ。確実に仕留めんならこんくらい用心するに越したこたねぇ。ま、2本目を使ったことはまだねぇけどな。今日もコイツ1本で十分だろ」

 武器らしい武器を持っているのはジョー一人。だが照明のない工場の中、割れた窓から差し込むわずかな光でギラつくナイフの刃に澪は怯える。威嚇としては十分だ。

(なんで私がこんな目に…誰か…助けて…)


◆


 その頃、望陵学園校長室。文弥は電話を掛けていた。携帯電話(スマホ)を耳に当てる手とは反対の左手はズボンのポケットの中。そのポケットは膨らんで見えた。

「…私だ。白石君、落ち着いて聞いてほしい。 …澪が何者かに攫われた」

「文字通りだ。一緒に登校していた女子生徒が職員室へ飛び込んできて、そう言っていたのだ」

「校長の私が慌てては話にならんだろう」

「調べて欲しいことがある。今言った女子生徒の証言では『懐中電灯のようなものを使った』とある」

「ああ、間違いないだろう。そしてその形状から察するに、以前警察への技術プレゼンでプロトタイプが提出された、モクバ社の試作品、またはそれの劣化コピー版だと考えらえる。白石君には警視庁へ問い合わせ、現在そのプロトがどう管理されているか、そしてモクバ社のデータ管理の状況を調べてもらいたい」

「そうだろうな。ユスリ・タカリ程度と高を括っているからこういうことになる。これを機に根絶やしにしておきたい。背後関係があるならそこも、な。だからまずはディストーターから辿っていく」

「いや、相手が魔導狩りなら魔導士はいないだろう。ならば捜査一課で十分だ。もう県警には話をつけてある」

「そうしてくれ」

「ああ。頼んだぞ」

 電話を切った文弥は、今度は校長机の上の内線の受話器を上げた。

「2-B担任の胡桃沢先生と保健の杉崎君を、大至急校長室へ呼んでくれ」


◆


「おそくなりました」

 内線電話から1分後、杉崎が校長室のドアを開けた。さくらはすでに待機している。

「二人とも、状況は分かっているな?」

「はっ」

「承知しています」

「胡桃沢先生。クラスの方は?」

「現在自習にして待機するよう指示してあります」

「白鷺君のことは?」

「生徒が動揺せぬよう、まだ話しておりません。ただ、当事者である朝比奈の口を封じるというわけにもいかず、そのままにしておりますが…」

「それは構わん。他に変わったことは?」

「神代大樹が登校しておりません。彼には電話などの連絡手段がありませんので依然連絡がつかない状態です。朝比奈紗々羅によると、彼女は今朝、通学中の神代へ白鷺の件を伝えていたそうで、しかしながらその後は接触がなく、彼が登校したのかも分からないと言っております」

「彼が白鷺君を探しに行った可能性がある、と」

「否定できません」

「なるほど…」

 文弥の口元が微かに笑った。

「杉崎君。白鷺君の魔力が暴走する可能性は?」

「限りなくゼロです。彼女の魔力値の急上昇は登校したときのみ、と、条件が限定的ですから」

「分かった」

「霧島校長。澪ちゃんには魔力測定器をつけてもらっていて、おそらく今日も付けていると思います。携帯電話に接続された緊急警報回線から伝ってキャリアからおおよその場所は特定できるかと思います。彼女が携帯電話を手放していなければ、の話ですが」

「魔力異常が出た場合に使われるあれか。なるほど。そうなれば技術的なことも含め、そこは杉崎君に担当してもらうのが手っ取り早い。私から県警へ連絡を付ける。あとを引き継いでくれ」

「わかりました」

「校長。隊を動かしますか?」

「ははは、さすがにそれはオーバーキル(やり過ぎ)だ。国外の魔導勢力でも入り込んだなら別だが、今回のやり口からしてせいぜいチンピラの集合体程度だろう。逆に胡桃沢先生には職員室で待機、白鷺君の居場所が特定でき次第県警と同行、現場へ向かってもらう。我が校の生徒確保が最優先だが、必要があれば『チカラ』を行使しても構わん。幕僚へ上奏しておく」

「了解しました。職員室で待機、白鷺の居場所が特定でき次第、県警と同行します」

「よろしく頼む」

「では霧島校長。私は実技棟のラボへおりますので」

「分かった」

「では、失礼します!」

 さくらは校長室を出る際、ピッと敬礼をした。

 文弥は背もたれへ寄りかかり、目元を押さえ

(…大樹君。澪を頼んだ)

 それからおもむろに身を起こすと電話機の外線ボタンを押し、県警本部長直通の番号を押した。


◆


 さくらの言った通り、2-Bは自習となっていた。他にも対応に当たる教師の担当クラスは自習となっている。

 教室では紗々羅はずっと泣きっぱなし、クラスメイトが宥めていた。その教室の片隅で、松尾と安部が顔を突き合わせていた。

「せっかく白鷺はんには『怪力キャラ』設定付けといたのに、アカンかったな」

「学外の者だと通じないのでーわ?」

「そこはぬかったわ。アイツらの動きが思ったより早かったのう」

「ジンダイがまだ来てませーんが。まさか」

「行ったやろ。『お姫様』を助けにな」


◆

エンディング曲「厚底サンダル」

https://x.com/HanashioKikei/status/2050184791463743534?s=20

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