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新人加入

---引っ越し後 新しい執務室 006号室


現在は、新しい職場で引っ越しが終わった後になる。


「あーもう! 何回引っ越せばいいの! あっち行け、こっち行けって」

『運送業の時もそうでしたが? 』


「あれは楽しいからいいの! 」

『当初は、楽しいと言っていたじゃないですか? 』


「そうよ! 自分の開発だけでいいと思ったから。この巨大なホールに設備を設置して、今までの研究・開発者も集めたわよ」


『サナエさんについてくる人材が多くて良かったですね』

「そうね。そこまではいいのよ。 そこまでは! 何この1Fの“支援室”の管理って! 」


『それで荒れているのですか? 』

「怪しそうな連中が、変な発明を持ち寄ってワクワクして、それを管理しろって、言われればそう思うでしょう! 」


『ギークと呼ばれる人達は、探求者です。 素晴らしい人たちです。 それに、サナエもその気が、ありましたよね』

「……」


『髪もボサボサで、根暗で、穴倉みたいなところで端末を弄ってこともありましたよね。AIだけが話し相手だった根暗時代もあったじゃないですか』


「……根暗とか言わない……なんで2回言ったの? 」

徐々に目が座ってくる。


『その反動ですかね。マジック・シャットダウンとかいって、はっちゃけて、大暴れしてしていましたよね。 今までの鬱憤が爆発したんでしょうか? 』

「……」


『結果、マールス(火星)のサブカルチャー界隈で大流行ですよ。 ネーミングセンスが、キワッキワですよね。絶妙です』


「……キワッキワってなによ」

目が完全に座って、プルプル震え始めてくる。


『ああ、同族嫌悪ですか? 』

「ぺらぺら、ぺらぺらと。それ以上言ったら、スクラップにするわよ! 」


遂にサナエさんの感情が、爆発する


『怖いですねー』


いつものAI漫才が始まっている。

いつもなら仲裁役のタツマやローラがいるのだがいない為、しばらく続く。


                   *


一通りストレスを解消して、来客用のソファーに勢いよく腰を下ろす。

「まぁいいわ。 それでなんだっけ? 世直しをする話だっけ?」


『どちらかといえば、商敵を打つ感じですかね。 それも政権を後ろ盾にしている政商という輩相手らしいですが』


「なるほど。 下の連中に小道具を開発させて、ヒーローに持たせて、私が遠隔指示を出せってこと? 」


『恐らくは。 私もヒーローとやらについていきますか? 戦闘データは豊富ですよ』

「……考えるけど、あんたは参謀役よ。現場には出したくないよねー」


『了解しました』

(アルプ型を一台作るかー? )


サナエさんの執務室で応接用のソファで寛いでいるとドアがノックされる。

「どーぞー」


サナエさんの気だるげな応答にドアが開く


「サナエさーん。 お元気ですかー」

ローラさんが高めのテンションで入室してくる。


「あまりウキウキではないわね」

「あらま。 新しい職場でテンションが高いと思ったんですけど」


「1Fの支援課の管理まで任せられれば、気も落ち込むわよ。 自分の案件に集中できないじゃない」


「個性豊かな人達ですからね。 優秀ですが協調性が無いのが特徴なので、対応お願いしますね」


サナエに向かってウィンクをしてくる。

(彼女は、私の真逆ね)


「でっこれからどうしろと? 」


「支援案件と言う形で案件を持ってきますので、それに対応してください。 治安隊の一部を動かせる権限もありますから」


「ねー。それって私の仕事? 」

「大丈夫です。人事としても対応しますから」


(治安部じゃなくて、人事部が対応ねー。 いかにも暗部って感じ)

「それで、何か案件があるの? 」


「今はないですよ。 本日の訪問は、その支援課への転属者を紹介しようと思って」

「なるほど」


「さぁさ。 入って、入って」


ドアが開き、大柄な男性が入ってくる。見た目は20代の後半ぐらいだろう。

全体が筋肉質であるが、締まっているため骨太感がある。


相貌は、きつめの印象でアウトロー感と影がある。 よく言えばクール、悪く言えば人相が悪いといった感じか。ここの社長とは真逆の印象になる。


それ系が好きな異性には、刺さるビジュアルと雰囲気がある。

「キリヒ・ロデュさんです」

ローラさんが紹介してくれる。


「彼は何をするの? 」

彼女の経験からでも技術でも参謀でもない。 恐らく実行部隊であろう推測ができる。


「彼が支援課の実行部隊の一人になります」

やはりか


「一人で対応するの? 」


「彼は、元アーサブカブ治安隊31部隊の最優秀な戦士ですので大丈夫です。 それに主に諜報とまぁーちょこっと破壊活動があるので基本単独ですね。


グループや組織だった動きが必要な時は、人事部で指示しますから安心してください」


「なるほど。キャミャエル・サナエよ。よろしく」

手を前にだす。


「キリヒ・ロデュだ。 握手はいらない。 金と美味い飯が食えると聞いて応募した。 せいぜい足を引っ張るなよ」


そう言って出て行っていった。

(なんなの。ここにきて挑発的な人が多いんだけど)


「ハハハ……すみませんねー。 ちょっと反抗期かな? 1F支援室の特別室に出社する予定です。 彼の対応も任されているので、それではー」


あいそ笑いを振りまきながらローラも執務室を出ていった。


『やたら挑発的でしたねー』

「こんな状態で上手くいくの? 」


『因みに“006案件”(過酷環境下 可動トークン構想)は、新型コンバットスーツ開発グループが対応していますので、順調ですよ』


「いいんだか。 悪いんだか」

『いいことだと思いますよ』


「それと、キリヒに驚いて要望を提示できなかったけどー。 特注のアルプ型を一台作りましょう」


『キリヒ氏の相棒ですか? 』


「そう、危険な任務であれば必要でしょう。それに――」

『支援部の人たちの能力試しですね』


「言葉は悪いけどね。実際の能力を見てみたいと思っているのは事実よ。ルヴェリエ工機の汎用品でいくらだっけ? 」


10億(10億円)ヴィールになりますが』


「商品にすると値が、はるのね」

『製造に手間がかかりますからね。 それにサナエのAIOSの利用料も中々ですよ』


「まぁそこは置いておいて、有機AI型のトークンを注文して頂戴」

『了解です。 それにしてもお金に執着してなさそうで、意外にチャッカリしていますよね』


「人は矛盾を抱えて生きるものなのよ」

人差し指を左右に振りながら回答する。


『それであれば、フェローでもCTOにでも収まればいいと思いますけど』


「わかってないなー。 地位が高くなれば、それ以外の業務内容が絶対に出てくるの。 研究室をもって嫌って程理解したわ。 もう面倒事は御免被りたいわけ」


『なるほど。 さっそく支援部経由での発注でよろしいのですか? 』

「ええ。 お願い。 予算ってあるのかしら? まぁいいっか」




---  006執務室を出た廊下


「ちょっと、キリヒさん。もう少し社会人としての対応はできないんですか! 」

ローサさんが、先に行く大柄な男を呼び止める。


「俺には俺の流儀がある。 だいたい、あんな綺麗なねーちゃんに何ができるんだ? 荒事の後方でのオペレータだろ? 」


「そうですけど、貴方は彼女の下で動くことになるんですよ! 」

「命令さえくれれば、俺一人で対応する。 それが今までのやり方だ」


「これからは、違うんですよ! 」

「やることは同じだろ? 」


エントランスホール2Fの渡り廊下を渡る。

渡り廊下は、吹き抜け構造の巨大な空間を通過している。


この建物は、各フロアは繋がっておらず、メインフロアの階段かエレベーターを用いて各フロアに向かう仕組み何っている。


機密保持が最優先なので、残念ながら火災が起きた場合のことは考えられていない。


移動用シャフトエリアは、階段とエレベーターに分かれている。

キリヒはエレベーターの下りのスイッチを押す。


「いいですか? これからは、ゴロツキ相手とは訳が違うんです。あなたの能力以上の敵がいる可能性があるんです。 それをサナエさんがサポートして作戦を成功させるんです! 」


「はっ。 よく言うぜ。 所詮は使い捨てだと考えているんだろ? アーサ・ブカブの連中はよ! 」


電子音がなりエレベーターの扉が開く。

キリヒと共にのるローサさん


「あのですね! 斜に構えるのもいいですけど、失敗したら給金は、出ないんですよ! 」

「……」


「多額な給金は、あくまで成功報酬なんですから! 」

「……」


「あなたが、やたら報酬にこだわっている理由は聞きませんけど、お金が必要なんでしょう? ならば作戦を成功し、生き残ることが賢明だと思いますけど? 」


「……そうだな。 少し周囲が見えなかった。 連携できるよう努力する」

「分かればいいんですよ。 さてと、指揮官に挨拶できたので、次はあなたの個室ですね」

「個室? 」


エレベーターが1Fに着き扉が開く。 ローラさんが促すように、1F側の支援室側に向かう。 途中のIDリーダーにカードを触れるとゲートが開く 。キリヒのIDも同様に開く。


「今までロッカーではなくて、個室が割り当てられています。 装備やトレーニングを個人で行うことができますので活用してください」


「随分と至れり尽くせりだな」


「それだけの任務と言うことです。 因みに作戦内容は、ここに来ないと受け取れない仕組みです」


「……端末には? 」

「詳細情報はいきませんよ。 今までは違うと言ったのはそうゆうことです。」


「……なるほど。 一度、そんな似た作戦があったな。 あの時は政府中枢が絡んでいた相手だったが」


「……」

ローラさんは黙っている。


「今までと違う相手――ね」

何か感づいたようだが、キリヒもそれ以上の言給はしてこなかった。 


「ここは? 」

そして話題を切り替える。


「支援室の技術部になります。武器や潜入工作用の特注機器を開発する部署です。癖が強い人が多いですね。 キリヒさんのIDで入れますよ。 見てみます? 」


「いや。後でいい」


ローサさんの端末が光り、なんとなく端末の画面をのぞき込む。

「ハァァァァーーー」


サナエさんから先ほどの10億ヴィールの要求が上がってきている。


いきなりの大声にキリヒも驚く

「おい。 どうした? 」


「いえ。 いや。 あー。もー、何でもないわけないですが。まぁいいです。 案内を続けますね」


片ドアの入口がある。

ドアには、<006支援室 直接部門> と記載がある。


「ここです」

「上手い書き方だな」


ドアを開けると、デスク、端末、武装ロッカー、それとコンバットスーツが2基ある。

「おお! 一基は最新型か。もう一基は始め見るタイプだな」


「プロトタイプの新型。奥に実戦用のトレーニング室があるからそこで慣らしを行っておいて。まだ市場に出回っていないやつよ」


「こりゃ凄い。了解だ」

「じゃぁ私は行くわ。連絡先を渡しておく」


彼の端末にローラの履歴が残る。


「じゃぁね」

ドアが閉まるが、外の声が聞こえてくる。


「あーもー。サナエさん何してくれてんよー。こんな大金無理だってー。また私が、上役に怒られるのー」


勤め人も大変である。



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