最終局面
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ラクシュミ地域で2番目に大きな都市になる。 空港・鉄道・アウトバーンをなどのインフラが充実し、地方の中核都市を担っている。
ここを経由してラクシュミの極西地域に物資や人が流れていく。
郊外まで合わせた人口は8千万を切るが、この辺りから都市の管轄領地が広大になる傾向があり、郊外であればそれほど人口密度を感じない都市である。
中心部は相変わらず、未来的な建築によるハイウェイや高層建築物が林立するが、郊外になるといつも通りのバラックや平屋建てが目に付く。
“ヤンサ暴動”は、アウターと呼ばれる郊外で発生した一大事件であった。 住民が突如狂気に振れたように暴れ出し、暴動へと発展する。
当初は公共治安隊を襲うなどして、いつもの暴動と思われた。
公共治安隊も装甲車や発砲し状況の鎮圧を図ることになるのだが、銃に撃たれても怯むことなく、襲ってくる群衆により、多大な被害を生むことになる。
周辺の公共治安隊を30ほど潰した後、今度は住民同士で戦争を始めることになる。
公共治安隊から奪った銃や装甲車、車両を用いて内乱の様相になっていた。
暴動のさらなる拡大を恐れ地域行政府は、インナー地区からも治安隊が出動して、アウター地区制圧を行うことになる。
このときにアーサ・ブカブ社の治安隊も出動しており、社員の救出の名目で制圧に乗り出している。
しかし、インナーの治安隊をもってしても、大規模な群衆の前に返り討ちにあっている。
銃撃にもひるまず、ナイフや角材で銃を持っている治安隊に集団で向かってくるのはまさに恐怖そのものとのこと。
暴動は5日ほど続くことになる。
倒しても、倒しても、暴動者が減らず、その勢いは増すばかりであった。
当時から誰かが、暴動の種の投下し続けているのではないかとの憶測もあった。
そして1週間の暴走が鎮圧した後の現場検証に入るのだが、あれだけの大きな暴動に関して、明確な扇動者が確認できなかったことにあった。
最終的な死傷者は、一万名を超えることになり、この地域始まって以来の暴動となった。
しかし、それだけの暴動にも関わらず、インナー地区治安隊も直ぐに捜査を打ち切り“民族独立戦線による暴動”として幕を下ろしている。
意思を持たないような、攻撃と突撃、不可解な事件は、このように過去の記憶として刻まれている。
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現在は昼になる。空港からの荷物をカーゴに載せてアウターからインナーに向かって走らせている。
クリエヴァが運転し、ローラとキリヒが両隣に乗っている。 普通なら車内の華に多少は、高揚もするだろうが、業務とキリヒの性格上それほど浮かれた雰囲気はない。
「ここら辺もかつての激戦区だ」
クリエヴァが、口にする。
周囲には何もない荒れ地である。奥の方にバラックが見えるが、大きな広場の様になっている。
「死体の山が出来ていたからな。誰もこの土地の上には住みたくないのだろう」
車内は重苦しい雰囲気である。場所はとてもワクワクするような場所ではない。
彼女の左腕を落とした土地でもある。
「以前はもっと住宅が密集していたんだけどな。こんな場所が、間隔をおいていたるところにあるんだ」
「死体は、どうしたんだ? 」
キリヒが尋ねる。
「感染症の疑いもあったからな、現場で火葬してこの下に埋まっている。 そんな場所の上には、住みたくないからこうして広場として残っているんだろうな」
「……」
西方地区はあまりに過酷すぎる現実に、ローラは閉口する。
「だろうな。5日間戦闘しっぱなしなら、死体量も相当だし、牧師を呼ぶ暇もない。 集団で火葬だろうな」
開けた空間数だけ、悲惨な情景があった。当時の戦闘の過酷さがうかがえる。
車内は少し重い沈黙の雰囲気になる。
「ところで、あのリジェネレイターと戦って改めて核心した。あれは間違いなく、奴がらみだ。 あの時と状況というか感覚が同じだった」
クリエヴァが、話を続ける。
「今は、ヤンサ治安部の支部に向かっているのよね? 」
ローラが、キリヒに質問する。
「ああ。 ローラはヤンサ治安支部で待機してもらう。 その後、ブラウニーを拾って待ち伏せ作戦だ」
「やっぱり……出てくるの? 」
「間違いなくな。 少なくとも俺が敵なら、そうする。 しかし、ヤンサ治安支部であれば安全だ。 あそこは駐屯軍程度なら排撃できる自動火器があるからな」
ローラが、キリヒを不安げに見つめている視線にクリエヴァが気づく。
「安心しろ。こいつの目的は、データの回収だ。 例のリジェネレイターは、我々の仕事だ」
クリエヴァが、ローラを安心させるように言葉をかける。
ヤンサ治安支部の前に到着し、彼女を降ろす。
「IDを見せれば問題ない。話は全て通っている」
そう言ってローラを下ろし、カーゴは出発する。
「人事部も大変だな――それに彼女。 お前を心配してたぞ? 」
「“ナンバー006”部隊だからな。 部下が死んだら、査定にも響くからな」
「まったく――まぁいい。 しかし、“ナンバー006”部隊というだけで、事務方がこんな荒事に巻き込まれているのか? 」
「本人に自覚があるかは知らんが、上層部からの俺の監視役ってところだろうな」
やれやれとした顔つきで、クリエヴァの質問に回答する。
「くっくっくっ。 愚連隊の31部隊は、相変わらず信用されていないな」
何か嬉しそうに語ってくるクリエヴァになる。
「自覚してる。 問題を起こしまくっているからな」
31部隊の面々は、一歩間違えれば重罪人という命知らずのならず者ばかりだ。だが、圧倒的な作戦成功率を誇るがゆえに、裏の荒事処理には重宝されている。
そして、その荒事の後処理に間接部門がかりだされることが多い。つまり、彼女はキリヒが、やり過ぎないための御目付掛かりといったところだろう。
(故に彼女を死なす訳にも、傷つける訳にも行かない )
荒れ果てた旧市街の合流ポイント。 道路脇に、ポツンと立つ一機のトークンがあった。ブラウニーだ。
なにやら紙を掲げている。
<With you >
「くくっ……相変わらずユニークかつ優秀なトークンだな」
クリエヴァが感心している。
「どうでもいい事ばかり憶えるのもどうかと思うけどな」
トークンの目の前に止まり窓を開ける
「どちらまで? 」
『地獄以外ならどこででも 』
ブラウニーは、小洒落た返しを求めているのだろうか?
「まったく――安心しろ。 地獄には寄り道するだけさ。 俺達の旅路は、まだ先がある」
『おや、いい返答です。 では乗せてもらいましょうか』
“乗ってくれ”と言う前に勝手に乗り込んでくる。 車輌は再びインナー地区へと戻っていく。
『お久しぶりですね』
「別れたのもそんなに前じゃないだろう。 でっ。首尾はどんな感じだ? 」
『下水道から抜け道に至るまでセンサーとバクドローンの配置が完了しています。 ヤンサ治安部の方々は、優秀でいらっしゃる』
「当然だ。私が鍛えたんだから」
『ええ。それに、隊長のことも尊敬されているようですね』
「リジェネレイターのデータは確認した? 」
『はい。ヤンサ治安部も全員確認済みです。脅威との評価です』
「だろうな」
『ターゲットを確保したら、恐らく――』
「ああ。出てくる可能性が高いな」
「あの化け物を何体所有しているか、不明なのが気持悪いがな」
クリエヴァが、車両の外の平坦になっている土地を見ながら回答する。
「確かにな……」
ここでリジェネレイターを大量投入されたら、“ヤンサ暴動”の二の舞いに成りかねない。そしてメトナ医療法人は、郊外であってもインナー地区。 人口密集地域にある。
「今、自由に動かせるのは30名がようやくだ。 ヤンサ支部の部隊も遠征やら支援業務で出払っている。さらに支部防衛もある。 前回のような軍団で襲われたらひとたまりもないな」
クリエヴァの顔にも焦りがある。
「そこは祈るしかないな。 しかし、いくら狂人と言えど、今のヤンサであの化け物を暴れさせるか? あまりにも目立ちすぎる。 相手もそこまでことを大きくしたいとは思えんがね」
キリヒが、応じる。
「常識が通じる人間では、ないのだろう? 」
この不安は、相手が見ないことに起因している。 疑心暗鬼。 何が起こるか分からない状況下での活動はストレスが溜まる。
『因みに巨大リジェネレイターが出てきてもガンシップは、使えませんね』
ブラウニーからのクリエヴァへの質問が飛ぶ。
「ああ。 あれだけ密集している住宅街の真ん中。 周辺への被害が大きすぎる。 偵察までだ。 まったくメトナ医療法人の場所が悪すぎる」
『戦闘前から中々追い込まれていますね』
「とはいえ、いつものことだがな」
最終決戦に向けて状況が整いつつある。




