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チーヌー アウター地区

ティエンフーは間違いなく、イシュタル帝国の首都である。


未来と都市を彷彿とさせる空間利用から建築物の洗練されたデザイン、影もあるが繁栄部分が色濃く出ている。


片や副帝都チーヌーに関しては、どうであろうか? 

人口数はティエンフーより更に多く3億とも5億ともいわれている。


チーヌー平原までを管轄区域にしているため、多くの人数を内包できる実態があるが、その存在は 魔都の名にふさわしく、複合多民族国家を代表するかのような都市模様を形成している。


法律はあるが、治安がない。


洗練された建物群は、都市中心部こそあれ、郊外の方では、貧民窟・違法建築群・貧民要塞城が多数存在している。一つのコミュニティが違法都市を形成している風景が見られる。


躯体の大きさによる、暴力と略奪が頻発しており、麻薬、銃、風俗を中心とした混沌とした社会が形成されている。


チーヌー政府への暴動も度々あるものの、イシュタル帝国 西方 方面軍による出動により迅速に壊滅させられることになっている。治安は飛び切り悪いと言ったところだ。


そんな郊外を目指して移動中の3名

「……何ここ? なんか凄く嫌な風景しか見えないんだけど」


周囲には上半身肌や薄着の男性がうろついている。サイボーグ化した人間もかなり見受けられる。治安が悪くなるほど強化が必要なのだろう。


都市部では、人体と見分けがつかないサイボーグ化が流行っていたが、ここではむき出しの金属筋がよく分かる。


「ここは下町だからな。こんなもんだろう? 一般的な光景だ」


「なんでこんな下町方面に治安隊のオフィスがあるのよ! 」


「ローラはどう思う? 」

質問を質問で返すキリヒ。


「分からないから、聞いているんでしょう! 」

少しローラが苛(いら)つく。


「予想だよ。予想だよ」

キリヒが、半笑いで応じる。


「……治安隊の人間の住居に近いから? 」

「俺もそう思う」


「……」


「それと働きやすさもあると思う」

「働きやすさ? 何それ」


「都市で悪事を働いた人間は、当然都市から逃げ出すよな? 」

「……」


「問題は、どこに一番逃げるからだ」

「ハァなるほどね。 目的地に早く到着できる場所かつ住居に近い場所ね。りょーかい」


「まっ。都会の上級職には見えづらい現実だよな」


笑いながら外を見る。 古そうなレンガ造りや木造の住宅が、所狭しと建てられている。

しかし、住宅の周囲には必ず鉄柵があり、容易に自宅にアクセスできない状況にしてある。


この地域の治安の悪さが、現れだろう。 そんな光景が脇を流れながら車両が進む。 ギャングの襲撃もなく、実に順調……とは、行かないのが彼らである。


突如して進行方向の身が側の建物が爆発する


ブラウニー(戦闘型トークン)の急ブレーキにより爆発には、巻き込まれずに済んでいるが、道の進行方向は、煙塵が巻き上がり埃で前が見えない。


急ブレーキと大きな音でコーヒーをこぼすローラさん。

部長と会うための一張羅にコーヒーの染みが付く。


「……」


「おやおや、またイベントか? 」

キリヒのテンションが上がっている。


治安最悪の場所での走行を想定しているため、すでにコンバットスーツ装備は装備している。


『生体反応確認。 全高10フィール(1フィール=30cm: 3m)……人間ですか? 』

何やらトークンが、おかしなことを言っている。


“いやーママ! 私は! この街で一番美しいの! 高身長モデルなの! ”

耳が割れるほどの大きな声が聞こえる。しかし、男性のような声である。


「よっしゃ」

戦闘装備のキリヒが、銃を持って車両から降りていく。


埃が晴れていくと3mほどの巨大な女装した男性が現れる。 長い髪は、三つ編みにされて赤いリボンが付いている。


しかし、左手にミニガンを装備しており、体の半分はサイボーグ化と肉体部分も相当の筋肉質になっている。


ローラさんは、その男性の姿ときつい風体に目を丸くし凝視し、唖然としている。

「……あ……あれは? 」


『ふむ。 体は男性、心は女性といったところでしょう。 多様性ですね』

性別はどうでもいい。 多様性の前に何故にミニガンを装備しているのか? 


“私の美貌が分からない世界なんて消えちゃえ!! ”

ミニガンが発光し周辺にばらまかれる。周囲にけがをする人間が続出する。


カーゴにも数発当たり、着弾を車内響くが、びくともしない。

『7.62mmですか。この車両を破壊するには22mmが必要ですね』


何を言っているんだ。このトークンは?


弾幕の中コンバットスーツ姿のキリヒが対象者に進んでいく。そして大男に話しかける。

「いっよう! ヘンタイ! また暴れているのか! 」


「……お前は――私の美貌を台無しにした男ねー。今日こそ殺してやる。死ね! 」

いきなりロケット弾を発射する。


しかし、着弾前に爆発する。多腕型コンバットスーツによる精密射撃により、ロケット弾を撃ち落としたようだ


『キャミャエル型AIによる多腕の制御が素晴らしい。芸術的な精密射撃です』

ブラウニーが、興奮しているように叫んでいる。爆音と衝撃がカーゴまで伝わる。


「……」

ローラの目がだんだん死んでいく。


(おかしい。私はアーサ・ブカブ社の本社人事部の課長級のはず、なぜにこんなイカレタ世界にいるのだろうか? これは夢だ。そうだ夢に違いない)


“馬鹿にするんじゃないわよー”

大男とキリヒのバトルが始まっている。


巨大な体躯であってもサイボーグ化した筋力で豹のような瞬発力がある。

しかし体が大きい為、周囲に当たりやすく、怪獣映画の様に建物が壊されていく。


(くっそ、あのオカマ野郎。以前よりも強い! )

執拗なミニガンの弾幕がキリヒを襲っている。


“私はあんたにやられてから美を磨いたの! 今までの私ではないわ”

搦め手でロケット弾を発射し、キリヒの周囲を吹き飛ばす。


“これで隠れる場所も少なくなっていく。死になさい! ”


二人の激戦が目の前で行なわれている。

「……う……う。帰りたい」


刹那、こちらに流れロケット弾が着弾しカーゴが横転する。

「うみゃぁぁぁぁぁぁ」


『まったく。男の子の同士の一騎打ちでも楽しんでいるのでしょうか? 巻き込まれた方は、たまったものではありませんね』


ブラウニーは、ヤレヤレ感を出しながら、ローラの方をチラリと見る。


カーゴは横倒しなっている。シートベルトはしているため座席に固定されているが、目を廻している。


『ローラもボロボロのようですので、ここらで終わりにしましょう。先方との待ち合わせの時間もありますし』


おもむろに横転したカーゴからブラウニーが、這い出る。

車両破壊用の13mmハンドガンを構え、大男の動きを予見し弾丸を一発打ち込む。


ミニガンの給弾ベルトを破壊する。


急に弾幕が張れなくなる大男。

“お……お前! 卑怯だぞ! 2対1か! ”


「いいから、やられておけ! 」

マグナムライフルで左腕のミニガンとサイボーグ化した腕を破壊する。


悲鳴を上げて倒れる大男。


≪余計なことしやがって≫

キリヒからブラウニーに悪態の無線が入る。


≪会議の時間に遅れます。アホな事してないで、さっさと行きますよ≫

「ちっ」


≪それとカーゴを起してください。まったくローラが、目を廻しています≫

「了解だ」


ブラウニーがおもむろにカーゴの運転席に入り、目を廻しているローラさんを担ぎ出す。

それを確認し、キリヒとブラウニーとでカーゴ車両を、起こす。


コンバットスーツのパワーは何気に凄い。


『流石最新型。素晴らしい性能です』

「あのねーちゃんの発明は、スゲーもんばかりだな」


ローラさんも目を覚ましたようだ。


「あれは夢? そう夢……なのでこれから、サナエさんとランチに――」

何かブツブツ言っている。


そんなことを構うことなく、カーゴの扉を開け、キリヒとブラウニー(戦闘型トークン)が、乗り込む。


『シートベルトしていて、地面に叩きつけられず良かったです。 安全装備をしてくだい。直ぐに目的にむかいますので』


周囲には、流れ弾で負傷した住民もそれなりにいる。


『騒々しい場所ですね』

「いつものことだ。運転を引き続き頼む」


『けがをした住民は? 』

「ここは自己責任の世界だからな。まぁなんとかするだろう」


過酷なチーヌーアウターの下町。


「あ……ぁぁぁ」

前回に引き続き、荒事確定な現状であり、とばっちりが、多いローラさん。

もう、呻くことしかできない。


彼女の気持ちを少し落ち着かせ、カーゴは目的地に向かう。


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