新ミッション 開始
006案件の執務室にいつもの5名が集まっている。
「次のミッションか? 」
キリヒが尋ねる。
「そうなるわね」
サナエさんからの回答。
『ターゲットは? 』
ブラウニーからの質問がある。
「先日、ここから盗まれた“ナンバー000案件のデータ”の奪還よ」
『データであれば、既に拡散しているのではないでしょうか? 』
ブラウニーが質問してくる。
セレンが執務室の壁面に情報を投影する。
説明と質問への回答はサナエさんが行っている。
「盗まれたのは、1辺3フィール(1フィール=約30cm:1mぐらい)の立方体の情報媒体。 特殊な強磁界を掛けないと情報を取り出せない仕組みになっているわ。
重さは3ファンド(1ファンド=450g:1.5kg)程度。 犯人は陸路での逃走が考えられるわ」
「やけにデカいな? 」
キリヒが怪訝に質問する。
「盗難防止だって、不必要に大きくしてあるそうよ」
『この大きさであれば航空機では、目立つとのことですか? 海上は如何でしょうか? 』
ブラウニーが質問してくる。
「内陸への移動になるので、恐らく海上はないと思う」
『内陸ですか――となると、おおよその目的地は、想定ができるのでしょうか? 』
「予想では、帝国副帝都。チーヌーの可能性が高いわ」
「あそこか」
キリヒが呟く。
「また、ゴミゴミしているところですね」
ローラさんが、会話に加わる。
『行先が分かっているということは、犯人の目星はあるのでしょうか』
「上からの情報では、ヴェスパー社の可能性が高いとのことよ」
「あーヴェスパー社ですか――」
「ここのライバル会社だったか? 同僚のサイボーグ部隊もあそこの技術が入っていたよ」
キリヒが反応する。
「まぁサイバネティクス技術に定評がありますからね。人体改造系は強いですね」
ローラが捕捉をする。
それらの発言を流しながら、サナエさんが話を続ける。
「チーヌーのどこかで媒体の受け渡しが行われるはず。それを阻止して情報の奪還ってわけ。 追加で、社長からの勅命で最悪は破壊しても構わないとのこと。 その場合、報酬は60%減額になるペナルティ付きだけど」
「破壊させねーよ」
キリヒが、力強く宣言する。
「まっ。私はどっちでもいいですけどねー」
ローラは我関せずの発言をする。
「残念だけど。ローラ。 あなた6等級でしょ? 会社経営陣よ。 ペナルティの対象になるわ」
「いや……いや、いや。おかしいでしょう! エッ60%って――月収? 」
「あなた年俸制でしょ? 」
「はー。頭おかしいんじゃないですか! 年収の40%で暮らせって言うの? 」
「破壊したらね」
「破壊させませんよ」
キッと睨んだ表情を向けてくる。
どうやらモチベーションも上がったようで何よりである。
「さてと、モチベーションも上がったところで、今回の作戦の説明を実施するわ。セレンお願い」
セレンが、画像を投影して説明をしていく。
『了解。 車両は陸路でチーヌーに入ると想定されています。恐らく武装していることが考えられます』
「荒事だな」
『本来、航空機で先回りと行きたいところですが、車両の運搬があります。そのため――――』
一旦、セレンの発言が止まる。 何かのデータを受信したのだろうか。
『なるほど。 航空機の利用が可能です。 なので航空機で先回りしてもらいます』
「へー航空機が使えるんですねー」
『場所は、チーヌーの旧市街地を中心としたヴェスパー社お抱えのマフィアの巣窟内になるでしょう』
「ヴェスパー社お抱えのマフィアって――」
ローラさんが、セレンに質問する。
『向こうさんの31部隊のようなものです。かなり荒っぽい部隊のようです』
「ただの荒くれ者の集団だ」
キリヒが言い切ると、ローラの眉間に皺が寄る。 しかし、彼女を無視してセレンが説明を続ける。
『ただし大まかな場所だけで、ここにはヴェスパー社以外にも、地元の輩からなる強盗集団や犯罪者集団もいるため侵入には細心の注意を』
「テンション下がるんですけど」
「武装トークンもいる。 安心しろ」
「……」
『以上です。質問はありますか? 』
誰も質問をしてこない。
『了解です』
「じゃぁさっそく準備して―」
キリヒ、ローラ、ブラウニーの3名が執務室から外に出ていく。
*
執務室に残ったのは、サナエさんとセレンになる。
『大丈夫でしょうか? 』
セレンが、サナエさんに言葉を掛ける。
「大丈夫じゃないの? 」
『荒事は確実ですよ』
「まぁ、キリヒやブラウニーもいるし、最新のコンバットスーツもある。 実働部隊の心配よりも、こちらは、006案件の心配よ。現状は? 」
『
・人工筋 軽量型パワードスーツ進捗率50%
・006案件 “過酷環境下 可動トークン構想”進捗率40%
・高性能光学センサーの開発進捗率40%
と言ったところです』
「人工筋 軽量型パワードスーツが出来ないと、可動トークン構想もおぼつかないのね――これは厄介ね」
『それと、高性能光学センサーの進捗が、結構、進んでいますが、本業もお忘れなく』
「分かっているわよー」
何かと厄介ごとを抱える006案件の面々。 すでに便利屋の域に来ているが、給料のため、今回も荒事に首を突っ込むことになりそうだ。




