A班 救助用機体5021 カイル隊員9-3
奴等の開発した『薬』がどれほどの物かは分からないが、重傷を負った上官をここまで回復させる…否、もうすでに完治しているに等しい所まで活性化させた。
上官を殺す…最悪死んでも良いと、見境なく投与した…のであれば、人を人とも思わない、惨い仕打ちが出来る奴等だ…凛さんに、それが投与されていない訳が無い。
「我々が思っていたより早く…体内で成長するかも知れません。が…まだ何日間か…あると考えましょう」
気休めにもならない言葉しか、出て来なかった。
「江島さん…」
ん?と俺と上官は滝中君を見る。
「江島さんはどうですか?」
「彼女は…研究員の一人だぞ?」
それなのに口を割るとは思えなかった。
「どの江島さんも…ですか?」
「…ん?」
「江島女史は…元第二の所属で今は研究員で…」
上官の部下としても凛さんの近くに居た。
「味方かと思ってました」
「俺の部下として紹介したからか?」
「いえ。あの方、対応『ザザッ…』が一日でコロコロ変わるので…」
なんだ?時折ノイズの様なモノで彼の声が…聞き取りにくい。
「親しくないから…とかはないか?」
「それにしては『ガガガッ』雰囲気も…」
「気分や側にいる人間で変わるから…なぁ…条件によっては…」
滝中君と上官のやり取りを見ながら、耳がおかしくなったかと擦る。
江島女史…俺も何度も会っては…居る。
イヤリング…ハイヒール…白衣…。
しかし、何かをハッキリと眩しく感じたり、認識していたはずの…彼女の何かが…思い出せない。
それ以外は…俺は特に雰囲気が変わった等の違和感を感じていない。
「味方『ガガガ』に…」
やはり、滝中君の声にノイズの様なモノがかかっている気がする。
態度からして、上官は感じていない様だ。
俺だけ…。ジャンの銃を避けた際、鼓膜でも傷付けたのだろうか…。
「カイルさん…」
「何だ?」
「僕の声、聞こえてますか?」
「あ、あぁ…さっきので少し鼓膜がやられたらしいが…大丈夫だ」
「手当はしたのか?」
「いえ。…違和感程度の事ですので」
怪我で離脱など、しては居られない。
「とにかく、江島さんがまだあっちの味方なのか、こっちの味方でもあるのか分かりませんが、あの方を探してみませんか」
「手がかりの無い今だ…。それも有りか。部下としての彼女は確かに凛を見てくれていたのだから…な」
「では、彼女は滝中君と俺で探します。上官はここに居て…怪我人のフリを」
「あぁ。頼む。何かあれば連絡を。こちらも司令の状態が変われば連絡する」
滝中君と俺は礼をし、退室する。
その替わりに、外で待機していた隊員達を入れた。
「本庄上官を…頼んだぞ」
「隊長は…任せてくれ」
大規模な奇襲が無い限り、ここは安全だ。
「カイルさん…」
少し歩いた先で、滝中君が立ち止まる。
「江島さんは『ガガガガガ』どこでしょうね」
ノイズに耳を押さえ、顔を顰めてしまう…。
「やっぱり…聞こえてないですね…」
「否、大丈夫だ。…江島女史の居場所だな」
少し眉間に皺を寄せた彼に、取り繕うように弁解する。
そう、ただのノイズだ。
上官の声はクリアに聞こえた。
大丈夫。
今はまず…彼女を探さなければ…。




