A班 救助用機体5021 カイル隊員9-1
執務室には俺と本庄上官、滝中君が席に着いた。
他の隊員達は救助された司令官の警護、治療にあたる者と執務室の前を警護する者に分かれた。
「まず、君達が疑っている様な事はない」
本庄上官はソファに着くなり、開口一番にそう断言した。
「三日前…か。検査室の方に一部屋研究所がある事を知り、即座に捜索する為に司令官の所へ行った。彼とはここを立ち上げる前からの知り合いで…凛の事も相談したかった。研究所を捜索した結果、救助した生徒達を実験台にしていた事が分かった」
「岡少年ですね…」
「岡君だけではない…女生徒2人もだ。反応が無かった者は保護者へ返されたと記されていたが…本当かどうか…今となっては分からない」
上官は手を前に組み…眉間に皺を寄せた。
「DVDとその資料から…あの一部屋で出来る規模ではないと考え、第二の…柳の管理下である寄宿舎が怪しいのではないかと…司令官と潜入を決めた。今の隊の状況から、出撃命令は第二がメインだ。翌朝に襲撃の情報が入った為、執務室に司令官を残し俺は潜入した。」
そこで、上官はあの部屋を発見して…誰かに後ろから殴られ、気絶させられた後に執務室へ連れていかれたと言う。
「潜入したのは二日前の朝…ですよね」
「あぁ」
「そして昨日の早朝にあなたは発見されました」
「そうだな」
「一日近く…空白がありませんか?」
「俺が殴られて…、撃たれた状態で発見される朝までの間だな」
「はい」
「…何があったか…覚えていないんだ」
彼は息を深く吸い。ソファの背もたれにもたれる。
「覚えているのは司令官の目の前に連れていかれ…彼への脅しの為に俺は撃たれた」
「撃った者の声は…覚えてますか」
「それも分からない。何か…薬を打たれた後だろう…朦朧としていた」
時系列は…曖昧な所は有るが、大体分かった。
新しい研究の事は…関わっていない…。
俺が願った通り、襲われる寸前に知った…。
上官の話が正しいとして…だが。
だが…本当に?
懸念を拭いきれない俺を感じ取ったのか、すっと上官が立ち上がり、上着を脱ぐ。
「ど…どうされました…?」
狼狽する俺と滝中君を、見下ろしながら…。
ん?見下ろしている?さっきまで…車椅子で、昨日包帯姿で治療室で寝ていた…。
「見ろ」
服の下の包帯を解く。
「…司令官の前で、俺は三発の銃弾を腹、腕、胸に受けた」
包帯の下のガーゼは血が滲んでいる。
「発見された時意識は無く、重症だったはずだ…」
ガーゼも全て剥がし、上半身裸になる。
「そんな…」
「…さっき滝中君をシャワーに行かせている時、体に痛みが無い事に気が付いた。まさかと思い、腕の包帯を取れば、縫った糸はあるものの…傷は塞がっている」
上官の胸部と腹部に、糸だけが残された彼の体は…50過ぎに見えない。
俺と…同じか…それ以上の筋肉と張りがあった。
上官もたまには訓練しているだろう…しかし、これは。
…隣に座る滝中君も息を飲んでみている。
「お前達隊員と同等か、それ以上の訓練をしている様な身体だろう」
「傷と…筋力…もしかして」
「記憶の無い間に…、確実に俺は『何か』を投与されたのだろう…」
「これで…その『何か』に副作用が無かったら…」
「副作用があった所で…あいつ等には関係ないだろうが…」
「隊員達に投与すれば…」
本庄上官は衣服を整え、ソファに座る。
「しかし、俺に対する実験の結果をあいつ等は知らない。2人以外には知らせないし、俺は車椅子で移動を続ける」
上官が煙草に火を付けようとして…滝中君に視線を向け…止める。
「2人も…この事は他言無用だ」




