A班 救助用機体5021 カイル隊員8-5
「こんな…近くに…」
上官が頭を抱える。
…探していた司令官は、拷問を受けていた。
四肢を焼かれ、胴体には無数の打たれた裂傷…。
息をしている事が奇跡の様だった。
同時に発見されたアンドレアは…死んでいた。
腕も無く…バラバラにされて。
ストレッチャーに乗せられて運ばれる司令官の横で、俺はアンドレアを拾いビニール袋に入れる。
肉の腐敗臭と糞尿の匂いが混じる部屋の、床に広がるドロッとした液体の中…形が残っている顔を持つ。
頬の肉が俺の手の力で剥がれ、液体の中に戻って行く。
ぽろぽろと白い虫が中から溢れ出し、その上に次々と落ちて…うにうにと動いた。
「何が運が良い…だ…」
ここは…所長の部屋だった。
研究に関するモノは持ち出したのか一切無い。
手術室の様な台と、メスや鉗子、吸引管に並び鋸やハサミが血塗られたまま置き去りにされ、その近くの司令官が置かれていた所には、鞭や拷問器具の様なものが散乱していた。
…司令官とアンドレアの位置的に、ジャンはアンドレアの遺体に気付かなかったのかも知れない。
知っていたら…。
知っていたら…どうなんだ…。
また笑うのか。俺を攻撃する材料にするだろうか…。
そんな事を考える。
司令官を…拷問したのはこの部屋の持ち主である所長か…ジャンなのか…。
どちらにせよ、化け物より化け物じみている。
肉の塊を拾うのに、膝を動かす。
白い虫がぷちっと弾けた。
『な。…同じだろ』
カラカラと車椅子の音がする。
本庄上官が近くに来たのだ…。
立ち上がり、振り向く。
『司令官用の場所以外は入れるID』…隊長クラスの情報が紐付けされているID。
それを彼の前に差し出す。
「これを持っていた本庄上官もここに入れましたよね?」
この現状を…上官も知っていたと言う…疑い。
「病室で…他のタイプも研究して居る事に触れて…らっしゃいました…」
「…そうだな。ここに入れるIDも持っているし、研究に関する情報も…知っている」
「…これを知った上で、止めなかった…って事でしょうか」
上官が加担していたと一瞬でも…認めたくない。
認めたくはないのだが…。
「情け無い奴だと…卑怯者なのだと事実を知られたく無かった」と言った上官の、言葉の意味を…。
知っていて、見過ごしてきたかも知れない状況を、ハッキリと確認したかった。
「上官が撃たれた時の…話を聞かせて貰えませんか。そして俺の疑惑に対する…真義を教えてください」
「お前が俺を疑う気持ちも分かる…だが、ここでは落ち着いて話など出来ないだろう…一度執務室に戻ろう…話はそれからだ」
「分かりました」
滝中君を引き連れ、上官が去っていく。
俺は一度自室へ戻り、シャワーを浴びた。
服も新しい制服に着替え、汚れた物を全て換え整える。
そして…ジャンが投げたライターを見た。
隊員が消火した後に見つけた…ライター。
少し焦げて黒い…アンドレアのライターだった。




