A班 救助用機体5021 カイル隊員8-4
「ま、だからよ。俺も『自分の目的、大義名分があれば殺しても仕方ない』」
俺のこめかみに銃が突き付けられる。
「だろ?」
油断した。
…軽い調子のこいつに。
「いやぁ、俺もさ、あんたには一目置いてたんだよ。忠犬君」
「さっきから忠犬だの猛犬だの…お前も柳隊長の忠犬だろ」
油断した俺自身に、腹が立つ。
「…俺は隊長の忠犬じゃねえ」
「2人で復讐をしたいんだろ…」
「そう思われてるわな…」
「違うのか」
「違うね」
軽口を叩いている様でも、いつ引き金を引くか…気が気ではなかった。
「…ま、別になんでも良いんだがな。俺に得が有れば」
「復讐が目的な訳じゃないのか…?」
「復讐?俺が?」
「エリア4の…」
「あぁ。さっきも言ってたな。出身地がどうのこうの…」
空いている方の手で、煙草を吹かしている。
俺は思い違いをしているのだろうか…?
「ま、俺には関係ないね…」
そう言って奴の指に力が入った。
反射的に頭を横にずらす。
耳に音と弾が掠った痛みが走るが、躊躇なく銃の横を打撃する。
弾道の先に滝中君が居なくて良かったと思う。
取り落した銃を拾うことなく、ジャンは俺に向かってきた。
振りかぶってくる拳を避け、右足で上段蹴りを出すが…避けられる。
地面に着いた際、すかさずそれを軸足に変え、左足を腹目掛け振る。
回し蹴りの形になった俺の足を、両手で止めるジャンに流石だと思う。
相手も俺も態勢を崩さない。
冷静に見ていると…ジャンは強い。
隙を伺うが…どうにも…無い。
本当にこれが、あの第二基地でみたジャンなのだろうかと考える程に。
ここで見るジャンも横暴で暴力的だったが、目の前の奴はそれとも違う。
装っていた…のか?
「…救護班の割には良い蹴りしてんな」
「…元は軍隊所属なもんでな…」
「スカウト組か…」
「…お前と柳隊長は志願者なんだろ」
「ファイル見ただろ」
「あぁ…」
「何か気付く事なかったか?」
「お前と…柳隊長の年齢が一緒だって事か?」
ジャンがニヤリと笑う。
「タイプーCの…影響だよ」
戦闘態勢を止めて、立つ。
「俺らを襲ったヤツ等がタイプーCだ。…隊長がああなったのはその所為だ」
タイプーCは影響が出るのが速いと言う。
「それが復讐に駆られる原因か?」
「いや。んなもんどうでも良い」
「じゃあ、何故」
「…同じ事をされりゃ分かるんじゃね?」
ジャンの目線が俺ではない方に向く。
そこには車椅子姿の本庄上官と滝中君が立って居た。
後ろには隊員達も控えている。
「柳隊長はお前を恨んでる。心当たりはあるだろ?」
一歩下がるとライターを取り出す。
「…もしかして心当たりすらねえって事…ねえよな?」
「俺には…分からない」
上官の言葉にジャンが呆れと怒りで引き攣った…何とも言えない顔をする。
思っていた答えとは違った様だ。
ジャンは徐に、備え付けの冷蔵庫から透明な水の入ったボトルを出す。
飲むのかと思えば、床に撒いた。
水ではなく…アルコールだ。
「まぁ…じゃ、またな」
アルコールに濡れた床に火の着いたライターを投げ捨て、炎の影に姿を消した。
慌てて数人の隊員が消火作業をしたが、ジャンは逃げ足早く居なかった。
「寝室の…窓から逃亡したようです」
部屋を捜索した隊員が報告する。
四階建ての窓…近くの非常階段か…。
そこにも隊員を配置してもらうべきだったと悔いる。
廊下が騒がしくなり、様子を見に外へ出た。
…あの異臭のする部屋の前で隊員達が蹲っている。
後ろから青い顔をした隊員が口元を抑え、出てきた。
奥はどれほどの異臭なのか…。
青ざめた隊員がこちらに向く。
「…奥で…司令官とアンドレア隊員を…発見しました…」




