A班 救助用機体5021 カイル隊員8-2
全ての試験管には名前と共に日時が書かれていた。
「だいぶ古いのから最近の物までありますね」
「古いのが最近のより少ないのは…使った後だからなのか…?」
「何に使ったんでしょう…。と言うか、これは何でしょう…何の為に冷蔵保存を?」
「幸い人間とのハイブリッドは…生まれなかった…」
「え?」
「…反応がある人間との…人口受精だ」
グロテスクな話だが…その通りのはずだ。
「ここにあるのは…その…。その実験を?」
「多分な…このまま外に出しておこう…こんな実験させてはいけない」
当人が生きている以上、採取できるが…少しは妨害になるだろう。
それに、司令官を見つけて2人…否、2人に加えて研究所の所長と…江島女史を拘束すれば、研究は止められるはずだ。
「…さっきの部屋に行くよりも…ジャンを探しますか?」
「…そうだな」
臭気さえなければ…さっきの部屋も気にはなるが…。
否…こんな時に好奇心を出してどうする。
俺は一刻も早く司令官を見つけ、凛さんを救出しなければ…。
「行こう」
廊下に出て、真正面…真ん中の部屋の前に立つ。
IDで鍵を開ける…。
ノックは…必要ないだろう。
ドアを開けた。
「やっと来たのか」
目の前のテーブルの横で、さも待って居たかの様にジャンが笑う。
「良い部屋だろ」
「司令官の行方を捜している」
「だろうな」
「どこだ?」
「せっかちだなぁ…」
いつもよりラフな格好をしているジャンは、休日のワンシーンの様に持ったカップを口に持って行く。
「こちらは事を急いでいる」
「の割にはゆったり見学してたな」
内心ドキッとする。
「監視カメラ…付いてんの。気付かなかったか?」
「廊下に有ったのは知ってる」
「うろちょろしてんの、見てて面白かったぜ?」
そう言って笑いながらカップを両手で持ち、テーブルもたれる。
この部屋にモニターは無い。
「本当に見てたなら…俺達に気付いていたなら、出て来たら良かったじゃないか」
「別に。見られて俺が困るモンは無いからよ。待ってた方が面白れぇ…」
「ただ…」とテーブルにカップを置く。
次の行動が読めず、身構えるが…煙草を一本取り出し火を付けた。
「惜しかったんだがな…」
「何がだ」
「お前らが躊躇した部屋、あっこに置いといたんだがな…」
「何…を。まさか」
「何だろな」
くくくと笑う奴はまるで、いつもの苛ついている様な雰囲気は無く、むしろ楽しそうに笑う。
「お前…」
銃をホルスターから取り出し構える。
相手はラリっている。
おそらく、抑制剤の…。
「滝中君、俺の鞄に携帯が入っている。上官に連絡して応援要請をしてくれ」
「はい」
「おいおい、銃を向けなくても俺は何もしねえよ?」
「信じられるか」
「俺の役目は終わりかけ…だからよ」
「役目?」
「あぁ。」
奴はテーブルに腰掛け、足を組む。
俺達を眺める様に…。
窓を背に…窓?
「気が付いたか」
奴の横を走り抜け、窓に近付く。
隊列を成して、ヘリと戦闘機が離陸を始めていた。




