A班 救助用機体5021 カイル隊員7-1
嫌な予感があった。
ジャンの部屋に行くまでに、それは的中した。
車椅子に乗った本庄上官と隊員が4人、隊員専用の寄宿舎の前に立ちはだかった。
「言ったはずだ。滝中君の護衛を頼む…と」
「命令違反では…ありません。私は彼を護衛しています」
「隊員の独房だった場所へ連れて行くのがか?」
上官の顔からは呆れと少しの怒りがみえた。
「どうしてそれを…」
あまり時間が経っていないにも関わらず、場所まで知られて居るとは…。
「江島君に聞いたよ」
彼女に会ってしまった事が、マイナスに働いた様だった。
それに…本人に聞けと言った足で、上官へ報告するとは…思っていたよりも彼女の行動が速い。
まぁ…確かに、報告しないとは言われて居なかったなと、口止めをしなかった事を後悔する。
「カイルさんは悪くありません。僕があの…ジャンと言う隊員の人に会いたくて無理をお願いしました」
「怜君、君は我々が安全を確保する為にして居る事を無下にしている自覚はあるか?」
彼に厳しい目を向ける。
「君がフラフラとしていれば、第二の奴に襲われる口実を作っているのと同じなんだ。不確かな情報や考えで行動されては、こちらがいくら守ろうとしても無駄に終わるんだぞ。君に何か有れば、凛がどう思うか…考えてくれ」
滝中君の行動と俺の行動は、上官からしたら軽率な行動だっただろう。が、しかし…。
「それでも、凛が…酷い目に会っていたら…」
「凛の事は…まだ実験が実行されたとは限らない」
望みの薄い、楽観視した事を言っていると、彼自身分かっているはずだ。
それに…執務室での会話で、もう実行されてるものだと想定している事を俺は知っている。
「その独房で…彼女にプレゼントしたネックレスが切れて落ちていたと…江島さんに聞きました。…凛が…凛は暴力を受けています。それでも…ですか」
暴力を受けたと言う言葉で、上官が動揺したのが分かった。
「しかし、子供の君を危険に晒す訳にはいかない」
「凛に暴力を振るったのはジャンと言う隊員です。それにあの人は僕とカイルさんに「司令官が降りたか許可をした」と言いました…あの人が情報を持っているはずなんです。あの人に会わないと…凛が…どんな目に合ったかも…分からない…」
眉間に皺を寄せて俯く滝中君の顔は、今まで見た事の無い悲痛に、満ちていた。
「すみません…上官。必ず彼を守ります。なので…許してはいただけませんか。滝中君と協力して凛さんと司令官を捜索させてください…」
俺は頭を下げる。
日頃、反論はもちろん反抗などした事もなく、従順に従ってきた。
上官に従わない事などもっての外だからだ。
だが、今回…どうしても…滝中君の思い通りに…。
滝中君に協力したい。
「…凛が…どこに居るのかは…知っている」
「え…凛は無事なんですか?」
上官の言葉に滝中君が顔を上げた。
「無事…とはいかないだろう。しかも場所が場所だけに…俺もそこには行けない」
「どこなんですか…上官すら行けないとは?」
「この基地の本館の上階。…凛が居るのは司令官室の横の…司令官用の私室だと予想される。そこには司令官のIDが無ければ入れない」
「やはり…司令官を探すのに、まずはジャンを問い詰めましょう。アイツは絶対何か知っています」
上官の返事を待つ。
「分かった…」
渋々許諾が下る。
「これを…渡しておく」
上官のサインが入った発砲許可証と権限が載ったID…。
「何か有れば…やむを得ない場合のみ、発砲を許可する。後、司令官用の場所以外は入れるIDだ」
恭しく受け取り、鞄に入れる。
「俺はお前が思う様な…上司では無い。お前や怜君を本当はこの件から遠ざけたかった…情け無い奴だと…卑怯者なのだと事実を知られたく無かったからだ…。しかし、凛には変えられない…娘を頼む…」
上官が頭を下げた。
表立った捜索は上官達に任せ、俺と滝中君がジャンと接触する。
…ジャンは部屋にいるのだろうか。
奴の部屋に向かう為、寄宿舎のドアに入って行った。




