本庄 凛(ほんじょう りん)
柳隊長と話していたはずが、私は真っ暗な空間に居た。
前に見た夢と一緒だと思う。
あの時の人影は居なかった。
暗い中しゃがみ込んで、動きたくなかった。
ゲームなら早く終わればいい。
戻ればいい。
なのに、時は進んでいる様で、下半身に負った痛みと違和感が和らいでいく。
その代わり、お腹が気持ち悪い。
ここから出たくないなと思う。
怜に会いたいけど、四つ葉のネックレスは切れてあの部屋に置き去りになっているし、どんな顔で会えば良いのか分からない。
膝を抱えながら蹲る。このまま眠りたい。
真っ暗な中。
そうすれば、何も痛い事も嫌な事も無くなる。
あの人影は自分が要らないと突き付けられて、ショックを受けていたようだけど…私は要らなくて良い。
このままここに居させて欲しい。
もう、死んでいても良い。
生き返らなくていい。
このまま、真っ暗の中で。
何も考えずに。
過ごしていたい。
誰かがゲームならクリアしてくれる。
ゲームじゃなくて映画だったとしても、漫画だったとしても。
転生が何よ。
良い事なんてない。
やり直してハッピーエンドなんて、あらかじめハッピーエンドの決められた話なだけで、バッドエンドだってあるんだから。
私の物語はバッドエンド…。
これから植え付けられた化け物に食い殺されて死ぬ。
そうよ、今までだって何度も何度も死んできたじゃない。
今だって、泣きたいのに涙さえ出ない。
苦しいだけ。
…怜に。父に。
私に何が起こったか…知られたくないな。
何があったか…知られたら…2人はどう思うのだろう。
怖い。
怖い。
怖いよ…。
体の痛みなんて…忘れられないけど。
2人が悲しむ事が悲しい。
起こった事が痛い。
何も無かった事に出来ないのが痛い。
死にたい。
考えたくない。
何もかも。
これから先に幸せなんて無い。
何もかも壊された。
2人に言えない。
他の人にも言えない。
…私が悪かった?
2人にしないでって祥子さんに頼まなかった。
2人にした祥子さんは?
あの部屋に置いたあの人は…?
誰が悪いの…?
守ってくれなかった。
怜も父も。
止めてくれなかった。
アイツも。
全員憎い。
自分も。
助けてくれない全員。
お母さんは…?どこ?
居ない。
助けて。お母さん。
助けて。お父さん。
助けて。怜。
…誠也なら助けてくれた?
ううん…無理よね。
だって、誠也死んじゃった。
そっち行きたい。
『また来たのか。ここに』
誰?
『…戻れ』
誰よ。邪魔しないで。
『戻りなさい』
どうせここはゲームか何かの…作りモノなのに…。
バシッ
頬に痛みが走った。
「何がゲームだ!」
男の人の声。
「親が親なら娘も娘だな!」
怒鳴っている…すごく怒っている。
「柳隊長、暴力はおやめ下さい」
おじいさんの声?
男の人と、おじいさんが言い合っている?
「今、暴力を振るわれますと体内でどんな影響があるか分かりません」
「ふんっ…忌々しい」
「あなた様がこの娘を選んだのです。織田司令官が居ない今に我々は成果を。あなたは望みを。共に成し遂げましょう」
「…どうせなら、アイツの目の前で孵化させたい」
「えぇ、えぇ。お望みどおりに」
「所長…それまでこちらを打っておきましょう」
祥子さん?
腕に何かの感覚…。
「ほら、これで柳さんの癇に障る事もないでしょう?」
「…何が…ゲームだ…作り物だと…?こいつらには自分達以外の事なんて遊び…なん…だ…」
……声が遠のく…。
「我々も…ヤツ等…に…煮え湯を…」
………。
私はまた、暗い世界へ戻って行った。




