A班 救助用機体5021 カイル隊員6-5
女性の声がし、振り返ると廊下の方に江島女史が立って居た。
「そこで、何をしているんですか?」
手に畳まれたシーツを持っている。
「江島…さん?」
「第一のカイルさんじゃないですか。お久しぶりです」
紫のイヤリングをした江島女史は美しく笑い会釈した。
「ここは…どうしたんです?前は…こんな感じじゃなかった。それにこの子は…」
「えぇ、今は実験体の保管や実験の手術をここでしています。実験が多くなっちゃって…優先順位の低いのはここです」
「実験の…優先順位?」
「はい、後は失敗の処理です…あ、新副司令官には内緒ですよ。失敗したなんて聞いたら所長が怒られちゃうので」
江島女史があっけらかんと話す。
彼女はこんな感じだったか?
「岡は…」
「あぁ。彼は失敗でした。中に入れたまま生かしていたんですけど、やっぱり死んじゃって。第二基地の時みたいに暴走されたらやばいので孵化前に漬けたんですけど…卵の方がすぐ溶けちゃって、溶解度が下がっちゃって残っちゃってるんですよね。彼」
「なっ…彼も人間なんだぞ。それを実験台にした挙句…こんな…」
彼女を批難する。
が、微笑んでいた彼女から笑みが消える。
「それが組織のしてきたことでしょ?1年前止めたからって『ハイ終わり。』にはなりませんよ」
「それでも…無関係な子供に…」
「子供だから適応能力があるんですよ。体の細胞が凝り固まった爺や婆なんて使えませんよ」
悪びれた様子も無く淡々と話す。
「私を批難しても仕方ないですよ。私は指示された事だけをしているので」
どうせ主導権はくれませんし…とポツリと言い捨てて、去ろうとする。
「待ってくれ…ジャンを…第二のジャン・ゴードンを見なかったか?…」
本来の目的を辛うじて思い出し、声を振り絞る。
「あぁ。あの人を探しに来たのですか」
「来たのか」
「えぇ、さっき本庄さんの娘さんを入れてた時に…」
「凛をこんな所へ!!?」
滝中君が江島女史の持つシーツを掴む。
「離してください。…準備の出来る少しの間ですよ。なんですか。知り合いですか?」
滝中君の持つ手をシーツから振り払う。
カシャン…。
「本庄上官の娘と同じで保護対象者だ」
「保護対象者…ねぇ。お嬢さんもあの人も、もうここにはいません」
「ではどこに」
「お嬢さんは上階で見守られてます。部屋までは言えません。ジャンと言うあの人は自分の部屋じゃないですか」
彼女が落とした物を滝中君が拾う。
「あ。それお嬢さんのなんですけど…」
彼の手にはチェーンが切れたあの四つ葉のネックレスがあった。
凛さんへの…誕生日プレゼント。
「あの人が千切っちゃったみたいで。落ちてました」
「凛に…暴力を?」
「…暴力…まあ…暴力ですね」
「彼女に何をした…」
彼の手がネックレスを握り閉める。
「…それは本人に聞いてください。私に怒りを向けられても困りますし」
そう言って歩を進める。
彼女の後ろからこの騒ぎに気が付いたのだろう、研究員が3人廊下に出てきた。
「…滝中君、…ジャンに…会おう」




