A班 救助用機体5021 カイル隊員6-3
凛さんを救出するにも、司令官の捜索にも、緊急性を感じてはいるが、上官からはまず滝中君の安全を任されている事を説明するが、どうにも納得してくれる様子が無い。
「僕だけ安全に生きるなんて嫌だ!!」
そう叫ぶ。
「両親も居ない!誠也も居ない!僕には凛だけなんだ…頼むよ…カイルさん…」
俺の服を両手で掴み訴える。
第二基地での惨劇を思い出し、この子には兄弟すらも居なくなった事を思い出す。
握りしめた指の赤さと手の甲の白さに、思いの強さと…念が伝わってきて…。
俺はため息を付いた。
諦めと…情が移った事への後悔で。
「探すとしても、我々には情報網がないんだ。勝手をして上官に見つかれば俺も君から外されるだろう…」
「あの人に会いましょう」
「ジャンか」
「えぇ、絶対に何かを知っています。凛の事も司令官の行方も」
「しかし、どうする。ここから出れば部屋の前の第二のヤツらが報告に行って終わりだ。それ以前に出られるかどうかすら…」
「僕が囮になります」
「囮?すぐ追いつかれるぞ?」
「いえ…走ってではなく…僕を襲わせます…」
「何!?」
さっき襲われかけたのに?と驚く俺に彼は「だからこそ」だと言う。
自分が餌に成れるのだから、その間に油断したあいつ等をのせと…。
失敗すれば…俺が逆にのされ、自分が危険だという事を分かっていない。と諭そうとするが、無駄だった。
「危険も分かっています。カイルさん…」
「タイミングだ…タイミングが大事だ。それに、2人一度には無理がある」
「僕が1人を動けなくします」
とベッドの上に行く。
「これで」
毛布を引っぺがしぐるぐると巻き輪っかを作った。
「僕がこれで1人を捕まえたら合図するので、もう1人をヤッて下さい」
上手くいくものか?と心底心配になる。
幾度か試しにしてみる。
微調整を繰り返し、誘う文句やシミュレーションを重ねる。
それでも…俺は不安だった。
「大丈夫です。凛のお父さんの病室に行った時も上手くいきましたし」
確かにあの時は…上手くいったけれどと…悩む。
どうしてここまで、上手くいくと確信を持って言えるのか。
「本当に…上手くいくと思うか?」
「はい。上手くいかないとダメなんです。上手くいくと思わなきゃ…話は進まない」
それを言うなら、話は始まらない…だと思うが…。
…作戦は思いの外…と言うよりあっけない程上手くいった。
さっきの隊員に殴られたヤツが戻ってきていたのだ。
滝中君が叫んで呼ぶ事も、俺が招き入れる事もせずに事は運んだ。
交代を知ったそいつは、滝中君の警護が2人から1人になったと人数だけで判断し、部屋に入ってきたのだ。
自分側が2人だからイケるとでも思ったのだろう。
滝中君に襲い掛かった瞬間、彼が作った輪とシーツに絡まり身動きが取れなくなった。
俺を警戒していたもう1人は、振り向く間もなく俺の拳を顎に食らいのされた。
「お前ら…」
左側の頬を赤く腫らしたヤツが、シーツの間からモゴモゴと言う。
「ジャンはどこにいる」
「知るか!」
そいつに巻き付いたシーツを引っ張る。
絡まった部分に通っている首が締まって、ヤツの顔が赤くなった。
「やめ…」
「ジャン・ゴードンだ。知っているだろ」
「アイツは…」
少し手を緩める。
「アイツは多分、地下の…隊員用の独房…」
「そうか…じゃ、お前は当分起きないでくれ…」
そう言って締めた後、顎を目掛けて拳を振る。
気絶した2人を滝中君と共に縛り上げ、近くにあったタオルで猿轡もする。
俺との第一の交代は無いし、第二のコイツらの交代も夜までないだろう。
俺と滝中君は共に拳を合わせ、上手く行った事を称えた。




