A班 救助用機体5021 カイル隊員6-1
「何だって!?」
俺は思わず声を荒げた。
会議を終えた本庄上官を迎えに行った先で、正気の沙汰とは思えない事が告げられた為だ。
「失礼しました…」
「いや、お前の反応は正しい」
上官は車いすのまま、執務室の机に着いた。
本当は無理をさせたくはないが、それも仕方ない事と思える。
「今言った通り、織田司令官が行方不明の為…一時的に副司令の…細木副司令が司令官として就任した。そして副司令官が柳になる」
「それでは…今後…」
嫌な予感しかしない。
「と言うか…織田司令官が行方不明だというのも…怪しくないですか」
上官も同意見の様で頷く。
それに…。
「それに、凛さんは…?滝中君は検査結果が誤っていたと、研究所の所長がこちらへ送ってきましたが…」
「凛は…『救世主』を産む」
「救世主…ですか?」
上官の手に握られたペンが折れた。
「救世主とは…?」
「タイプーAと…タイプーCの…交配…化け物のハイブリッドだ」
「まさか…それをどうして…」
「人間とのハイブリッドは断念されたが、化け物同士の交配実験をしていた。そして、人間に植え付ける段階で、タイプーAの反応を持つ者では失敗し、タイプーCの反応を持つ者を探していたと…」
「凛さんは…二つの反応…」
「あぁ、怜君にも反応があったという話は…彼の服からの抽出で出たもので、再度検査をした際、無かったと…所長は無駄が嫌いな奴だ。だから…怜君を用無しと判断し、こちらに返した。柳も彼の事などどうでも良いのだろう。始めから…凛が狙いだ」
上官が暗い顔をしながら、憤怒に耐えていた。
「しかし…。救世主と言うのは…」
「その化け物のハイブリッドを誘導に使うらしい。…タイプーCの…他のタイプを誘うフェロモンを備えたタイプーA…他を捕食する強さを持ったハイブリッド。…それを…ある国に送り込み…化け物を集中させ…爆撃で焼き払うと…いう計画だ」
俺は上官の娘はもちろん…そこに居る人間はどうなるのかと問い詰めたかったが…本庄上官を詰問しても意味はない。
しかし…。
「そうすれば…あの化け物共は…全滅するんですか?」
疑問を呈する。
「…その…標的にする国が…そもそもの原因だと副司令と柳は主張している」
「…」
「人間が作り、送ってきたと。制御ができるモノなのだとな」
「根拠は…聞きましたか」
「ああ、その根拠が、今の実験の成果だと…」
上官が資料を差し出す。
コントロール可能なタイプーAが作り出せた事が根拠なのだと。
「これは俺がアンドレアから受け取ったDVDと研究室のパソコンから奪ったデータだ。本当なら隠したかったのだろうが…方向性を変えてきた」
「司令官が行方不明になったから…ですか」
「本当は俺を…殺そうとしたのも2人だろう。が、失敗した事で司令官に矛先が向き、凛にも…」
「司令官は生きてらっしゃると思いますか?」
「彼がこの組織を作ったんだ。スポンサーも彼でないと金を出さないだろう。今は彼が発見されるまでの仮の司令官…代理としてしか機能しないはずだ。…ただ…」
「成果を出せば…ですね」
「あぁ…」
「救世主の…誕生は…?」
ぐっと上官の息が詰まる。
俺も聞きたくはない。
本当は。
「今…既に植え付けられていたとしたら…1週間か…そこらだろう」
1週間。
長いような…短いような。
果たして、それまでに司令官を見つけ主導権を取り戻せるのだろうか。
そして…上官の娘…凛さんを助ける事が…?




