本庄 凛(ほんじょう りん)8-5
カチャカチャと音を立てながら、ジャンがベルトを締める。
それをベッドの…天井のシミを見ながら…私は…聞く。
深い水の中に入っている様な…重たい体。
自分に何が起こったのか…。
分かっているけど…知りたくない。
ここが本当にゲームなら、電源を切ってやり直したい。
あの…ネックレスが切れる前に。
貰ったあの時に。
でも、戻りはしなかった。
彼が去り、また鍵がかかる。
数分後に、紫のイヤリングをした彼女が戻ってきて、ベッドの上の私を見てため息を付いた。
「あーもう、また混じっちゃうじゃないですか…でもま、検査後で良かったです」
そう言って、私の腕に針を突き刺す。
針には管が繋がっていて、その先に透明な液体の入った袋が繋がっていた。
「そんな呆けてたならこれ要らなかったかもなぁ…」
そう言って後ろの隊員達に指示をし、ストレッチャーに私を乗せる。
「さて…行きますか。どうしてもあなたを使いたいらしいので」
カラカラと音を立てて、私を乗せたストレッチャーを押す。
「あなたも…本庄隊長の娘さんでなければ、柳隊長に…こんなにも目の敵にされなくて済んだでしょうにね」
さっきより輪をかけて朦朧とする私に、彼女は話しかけ続ける。
「まだ意識ありますか?…ありそうですね…」
時折、腕にトントンと刺激が来る。
「もうすぐ着きますよ」
エレベータの音がする。
到着音と共に微かに消毒液の匂いがし始めた。
「分かります?今からちょっと台に上がって貰いますよ」
台が揺れる。
「中にね…これ、入れて貰うんです」
何かを掲げている。
注射器の様な…筒の…何か。
「はい。開きますよ」
膝裏に布地の感触がする。
両脇に…誰かが居る…。
何の抵抗も出来ずにいる私の足を、機械が開いて…。
「うわっ…ちょっと…洗浄液ください…もう…これだから男は…」
水がかけられる…。
「でも、した後だから入れやすいかもですね」
下腹部に…何かが入る。
感覚があっても、何かは分からない…。
痛みも…なく…私は…。
「あ。意識なく…な…って…き……し…か…?」
…。
……。
………。
「気が付いたかね?」
目を開けると、眩しいくらいの…白い部屋だった。
窓の近くに人影が見える。
「まだはっきりとはしていないか…」
こちらに近づいてくる。
「我が隊の者が無体を強いたみたいで…すまないね」
ほくそ笑んでいる様な声色だ。
「あぁ、君の父上と滝中君だったか…恋人の。あの2人は無事に部屋で大人しくして貰っているよ」
名前に反応して私の手がぴくついた。
「ふふふ。いや、申し訳ない。些細な事だが…君が気にするだろう。2人にあの事は内緒にしてある」
なのでジャンを恨まないでやってくれと続けた。
長く男だけの生活をすると溜まる事もあるのだと…。
立ち上がり、殴りかかりたかった。
けど、体が動かない。
手や足に拘束具がつけられていた。
「君は今やこの組織で大事な体なんだ。暴れて怪我でもされては困るからな。拘束させてもらっているよ」
抗議の声も上げられず、動けず、頭もはっきりしない…。
何を私はされたのだろう。
「実験が…成功すれば…君は生きていられるんだ。成功を祈りたまえ」
実験?成功?
「君の中に居るのは…救世主になる生き物なんだから…な」




