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65 夜、兄弟side

「………ということで、ユージーン様とはきちんと和解できましたので、兄上は首突っ込まないでください。話がややこしくなります。

 俺も一応成人したんですから、自力で解決できる部分は自分で何とかします。」


「うん………そうだよね………」


「ここ数年兄上を避けていた理由も先程お話しした通りですから、適切な距離感を保っていただきたく………そういえば、ステラにも兄上を遠ざけている理由は話していなかった気がするな。それで話が拗れたのか?」


「やっぱり、鬱陶しかったかな………すまない、ヒュー。」


「まぁ、もう少し、控えていただければと。特に外では。」


「努力するよ………」


「………俺の方も、最近兄上の扱いが雑だった自覚はありますので。その………すみませんでした。」


「じゃあ、また昔みたいに話してくれるかい?手紙や言伝てではなく、直接顔を合わせて。」


「はい、ここ最近はずっとそうですし。………兄上の場合、間接的に伝えると変に勘違いして暴走する可能性も高いですから。」


「それは私ではなくて母上だろう?」


「暴走中の母上と俺が強烈過ぎて目立たないだけで、兄上の行動にも相当父上は頭を悩ませておられますよ。」


「自分も父上を悩ませている自覚はあるんだね………」


「魔術に関してはどうしても我慢できないので、兄上にとってのそれが家族だと思えば理解はできます。できるようになりました。

 ………俺だって、一応魔術以外も成長してるんです。心情を汲む努力くらいはします。」


「うん、ありがとう。

 ヒューを跡継ぎにと無理に推している者達に関しては、父上に相談して私が跡継ぎだともっと大々的に公表してもらえば少しは抑えられるんじゃないかな。」


「………公表、してましたか?」


「一応、領地内での掲示くらいは。

 私がヒュー関係で暴走するのをやめられたら改めて広く公表しよう、と父上に言われたんだが、その………今まで公表されることはなくそのままで………」


「兄上………」


「国には既に、私を次期伯爵に指名すると正式な書簡を送ってくださっているよ。

 ヒューも聞いているはずだけど、大方魔術のことを考えていて話が耳に入っていなかったとかじゃないかな。」


「う………それは、あり得る………」


「今度ヒューの所にそういうことを言ってくる者が現れたら私に教えて。父上とヒューの意向を伝えて、場合によってはこちらで対処するから。そういうことは私と父上に任せてくれ。」


「わかり、ました。ありがとうございます。

 ………何だか、突然兄っぽいこと言いますね。」


「私はずっとヒューの兄だよ?

 どれだけ逃げられても避けられても、それだけは変わらないからね。」


「過剰に避けていたことは謝ったではありませんか。」


「理由も改めて説明してもらったし、怒っている訳ではないよ。当分離れるつもりもないけれど。」


「日本やテメノスに行くことになったら置いて行きますからね?」


「たまになら問題ないんだろう?ヒュー達だけずるいよ。」


「遊んでいるわけではないんですが。

 ………でも、そうですね。カズマがシキを介しての連絡員になってくれています。ファウストの世界からも二人ほど。この世界にはまだその役がいませんから、ご負担でなければ兄上にお願いするかもしれません。」


「連絡員、というと?」


「主だって動いているのは俺達三人ですが、今は三人ともこの世界にいるでしょう?その間に日本やテメノスに何かあったら、カズマ達がシキに伝えてくれる。シキはそれを俺達に伝えるというわけです。」


「つまり、君達が三人ともこの世界にいない時にここの様子をそのシキという人物に伝える役だね。」


「はい。異世界にいる俺達の安否をシキから兄上に伝えてもらうこともできます。」


「それはとてもありがたいね。わかった、私が引き受けるよ。少なくとも王都にいられる間は。」


「ありがとうございます。

 同じ人物が連日あそこへ行くと魂への負担が大きいので、連絡員は複数人に頼みたいと考えているんですが、誰か良い候補は思いつきますか?

 室長にもお願いできればよかったのですが、ただでさえ調査で忙殺されそうな所にこれ以上仕事を増やすのは………」


「そうだね………なら、対策本部の皆でいいんじゃないかな?それなりに魔力の多い者達が集まっているんだろう?」


「成程、確かに魔力量的には皆問題ないかと思います。あの中で精神的に強そうな人は誰でしょう。」


「………性格に難がある人物なのかい?」


「いえ、ひたすらに鬱陶しいだけです。慣れるまでは面倒ですが、悪人ではありません。イアンはやめておいた方がいいだろうな………ん?ファウスト?」


「? ファウスト君がどうかした?」


「いえ、部屋を出たようなんですが手洗いとは反対の方向に………ユウトの部屋か。話でもしに行ったのだろうか。」


「話というと、やはり家族の同一人物を見てしまったことについてかな。二人とも、喪った家族を突然思い出させられたんだものね。」


「心配なのはわかりますが、しばらくは二人をそっとしておいた方がいいのではないでしょうか。」


「行かないよ、ニールにもあまり構いすぎるなって釘を刺されているから。自重しようとは………思っているんだけど………」


「まぁ、あまり長いようなら少し様子を見に行ってもいいと俺も思いますが………ファウストが移動してからどれくらい経ちました?」


「え?ええと………30秒は経ったと思うけど。」


「こういう時は何分くらい待てばいいのだろうか………30分は長いか?なら10分、いや5分くらいでも話は………」


「落ち着きなさい、ヒュー。

 ………私も、周囲からはこんな風に見えているんだろうか。妙な部分が似たものだね………」


「今で何分ですか?」


「今で一分。………ここから部屋の前まで移動する間にも、少し時間が経つんじゃないかな?」


「そう、ですね、では………俺は行きます!」


「ま、待ってくれ、私も行くよ!」

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