49 龍神村
49 龍神村
亀の卵をいただいた翌日、
ヌル達は旅を再開した。
ミサオ、たこわさび、フィロなど
村人が総出で見送りに来た。
ミサオ「本当にありがとうございました。
どうか、お気をつけて。」
ミサオは深々と頭を下げる。
たこわさび「お姉ちゃんたち!
また絶対に来てね!!」
たこわさびは、すっかり元気になっていた。
笑顔で上を向き、手を振っている。
フィロ「竜宮ウニを、ブランドウニにします!
絶対、食べに来てくださいね!!」
ヌル「はい!!綺麗な海!
楽しみにしてますね!」
4人は次の目的地である、龍神村を目指す。
龍神村は若干内陸側にある。
地図上で見るとそこは、9本の細い川が一つに
集まり一級河川のように太くなる、
特異な地形であった。
上空から見ると、9本の頭を持つ龍に見えるが、
その名前の由来だという。
川の名前は『九頭竜川』だ。
ヌル「龍神村か。
名前からして、なんかありそうだよね?」
歩きながらヌルは、クルムをチラリと見た。
クルム「龍神の卵と、水龍伝説がある村ね。
お宝の話は聞かないわね。」
レスベラ「水龍かぁ。
戦うのと釣るの、
どっちが楽しいかな!」
うまーる「竜はコワイんだよ…。」
ヌル(銀竜が実在したしなぁ。
ああいうのはカンベンしてほしいな。)
「けっこう近いんだよね?」
クルム「1日あれば、着くんじゃない?」
歩いていると、大きな谷に着いた。
不思議な光景が目の前に広がった。
空を漂う、虹色に輝く糸がフワフワ飛んでいる。
その糸が、空一面に広がっていたのである。
ヌル「雪迎えか…。凄い規模だな。」
レスベラ「これは何なんだ!?なんかの毛?」
クルム「なんかの絵本に出てきたわね。
天使の毛だったような。」
うまーる「天使さん!?見たいんだよ!!」
ヌル「残念ながら、コレは蜘蛛の赤ちゃんだよ。
風に乗り、新天地を求めて旅をするんだ。」
クルム「キモッ!!」
レスベラ「ううう。嫌だなぁ。」
うまーる「毒は?毒はないの??」
ヌル「大丈夫だよ。人間に害はないよ。
さあ、先を急ごうか。」
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谷を越え、しばらく歩くと、
だいぶ陽が傾いてきた。
ヌル「マズいなぁ。今夜食べるもんないぞ。」
レスベラ「まじかぁ。
草とか、木の皮しゃぶる
しかないんかなぁ。
それと、そろそろ大きな街に
行かないと、酒も尽きちまうぞ。」
クルム「冬のシカじゃないんだから。
そんなもん食えないわよ。
アンタ、少し飲み過ぎなんじゃないの?」
レスベラ「クルムもだいぶ、飲んだだろー。」
うまーるが、何かに反応した。
うまーる「いるんだよ!イノシシ!
近いんだよ!!」
うまーるが走り出す。
レスベラとクルムも追う。
レスベラ「まじか!!肉!肉わっしょい!!」
クルム「絶対に捕まえるわよ!!」
クルムまで走り出した。
クルムが全力で走る姿を、初めて見たヌル。
ヌル「速ええよ!マジかよ!!
やっぱり姉妹だな!!
てか、どこが貧弱なんだよ!!」
うまーるが、
火雷を使いイノシシを仕留めたようだ。
レスベラが超速で捌いた。
レスベラが捌いてる間、
3人はキャンプの準備をしていた。
ヌル「よし、今日は
痛みやすい内臓から食べよう!!
枝肉は、保存食に加工します!」
クルム「臭いの苦手なんだけど。」
レスベラ「美味しくしてくれよ!」
うまーる「手伝うんだよ!」
ヌルは川の水で捌いた内蔵を洗う。
ヌル「小腸は、モツ煮込みにします!
軽く下茹でして、新しい水を入れた鍋に、
酒とモツとハーブを入れて、
圧力をかけて煮込みます。
胃袋は茹でて、細切りにします。
酢と醤油でサッパリ!!
そこにさっき見つけた、
野生のエシャロットを添えてと。
酢モツです!
ハツ、レバー、大腸、マメその他内臓は、
ホルモン焼きにします!!
タレは、酒、しょうゆ、ゴマに、
謎のフルーツ(イチゴっぽいやつ)の
すりおろしで作ります。
モツ煮込みは、
圧力で柔らかくなったモツに、
砂糖、しょうゆを入れます。
ここで、俺がここ最近、
大事に育ててきた味噌を入れます!!」
ヌルは、小さなツボを取り出した。
中には味噌が入っていた。
うまーる「みそ?」
レスベラ「へぇ〜。ウン●みたいだな。」
クルム「ちょっと!余計な事言わないでよ!!」
ヌル(これ、クルムもウン●みたいって
思ってるよなぁ。)
ズボッ!
レスベラは味噌ツボに指を突っ込み、
指を抜き舐めた。
レスベラ「しょっぱ!!でも旨いな!」
ヌル「ああっ!もう!素手で触ると、
腐りやすくなるからダメだぞ!!」
ヌルは、味噌を入れたモツ煮込みを味見した。
ヌル(やっぱり、野菜が無いと寂しいな。
あとは、みりん。
にんにくと生姜も欲しいなぁ。
みりんは作ってみるかぁ。)
「今夜はモツパだああ!!
召し上がれ!!!」
モツ煮込みと酢もつが並び、
焚き火の上には大きく平たい石が置かれている。
ホルモン焼きは、溶岩焼きスタイルだ。
ジュウジュウ肉が焼ける音の
シズル感が堪らない。
肉とタレが焦げる臭いも鼻をくすぐる。
ヌルはモツ料理を食べながら、
イノシシの枝肉を燻製にした。
4人は久々に肉を食べた。
クルムとレスベラのモツ煮込みは、
赤く染まっていた。
レスベラ「酒とも合うなぁ!くぅ〜」
レスベラはオヤジ臭い反応だ。
クルム「なるほど。
臭みを消す工夫が随所に
凝らしてあるのね。
やるじゃない。」
クルムは久々のご馳走に舌鼓をうつ。
うまーる「すごい!!
内蔵肉って、
こんなに美味しくなるんだね!!」
4人は深夜まで、ホルモンパーティーを満喫し、眠りについた。
ヌルは夢をみた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ヌルの夢の世界
突然、ヌルの目の前にナナが現れ、
ヌルに話かけた。
ナナ「ヌルは最近、楽しそうだね。
もう私の事なんて忘れて、
そのまま楽しく過ごしたら?
旅なんて、やめちゃいなよ。」
ヌル「何を言ってるんだよ!!
俺は、1日だってナナの事を
忘れた日はないよ!
そんなこと言わないでくれよ!!」
ナーガとオニオも現れる。
ナーガ「ナナちゃんはともかく、
絶対に俺たちのこと忘れてるだろ。」
オニオ「いつも旨そうなもん
食っててズルインゴ。」
ナナ「可愛い仲間に囲まれて、
おいしい物食べて。
ほんとに魔王を倒す気あるの?」
ヌル「過酷な旅なんだよ。
危険がたくさんあるんだ。
食材が見つからない日は、
ほとんど食えない日だってあるんだ。
たまに、良い食材が獲れた日の食事くらい、
いいだろう?
俺が彼女たちにできる事は、労えるのは、
それくらいしかないんだ。」
ナナ「ヌルが行く先々で、たくさんの不幸な人が
出てるけど、大丈夫?
ヌルのせいなんじゃないの?」
ヌル「たしかに、俺が行く先々で、
悪い事が起きてるよ。
でも、俺は全力でやってるよ!
悩んで、考えて、ベストだと思う選択肢を
選んでるつもりだよ!」
ナナ「その選択が、本当に正しいって
言い切れるの?
けっこう死人出てるよね?」
ヌル「それは…。
たしかに毎回、助けられない人がいる。
頑張ってるけど、本当に全力で
やってるんだけど、届かないんだ。
間に合わないんだ。
俺がもっと優秀だったら、
そうならないのかな。」
ナナ「ヌルがちゃんとしてたら、
私たちも死ななかったかもね。」
ナーガ「そうだ!」
オニオ「ンゴ。」
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
ヌルが悪夢にうなされていた。
クルムがソレを察して、目覚めた。
クルム「また、悪夢にうなされてるのね。
まったく仕方のない子ね。
弱いくせに、
一人で背負い込むんだから。」
クルムが魔法をかけると、
ヌルは静かな寝息をたてた。
クルム「今日のは意外と美味しかったわよ。
明日のご飯も期待してるからね。
ゆっくり休みなさい。」
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翌朝、強い雨の音で目を覚ましたヌル。
土砂降りの雨だった。
幸い、気温は暖かく旅に支障は無かった。
しばらく歩くと、人の集落が見えてきた。
龍神村だ。
様子がおかしい。
道は土砂や流木が放置され、
建物は泥まみれで、異臭もする。
ヌル「水害だ!雨で川が氾濫したのか!?」
レスベラ「ひでえな。こりゃ掃除大変だな。」
クルム「とりあえず、
住民から話を聞いてみましょう。」
うまーる「悪臭で鼻が効かないんだよ。
なんかね、
土の匂いだけじゃないんだよ。」
ヌルは、家から泥を掻き出す作業をしている
女性を発見した。
30代後半くらいだろうか。
服装は質素だ。
復旧作業のせいか、疲労の色が見える。
ヌル「こんにちは!」
女性は、ヌルを見て驚いた。
女性「旅の方ですか?こんなときに…。」
ヌルは女性の顔を見て異変に気づく。
ヌル「どこか具合悪いですよね?どうしました?」
(疲労じゃない、これは…)
女性がよろけた。
ヌルは女性の肩を掴み、支えた。
ヌル(熱い!かなりの高熱だ!)
ヌルは自分達に免疫強化の魔法をかけた。
ヌル「どこか、休める場所は?」
女性「少し東に歩くと、高台に避難所があります。
ご迷惑おかけします。」
ヌル「いえいえ。」
ヌルは女性を背負い、
3人と共に避難所を目指す。
高台に着くと、大きな白い丸い岩が見えた。
岩には、しめ縄が結んである。
ヌル(岩を祀っている?)
「クルム、コレって…」
クルム「"龍神のたまご"ね。」
ヌルは、鑑定魔法で龍神のたまごを鑑た。
多孔質の石灰岩を用いた、人工物のようだ。
屋外だが、たまごの上には
カーシェルターのような、木とワラで作られた
屋根があった。
たまごの手前は崖になっている。
大きな地震が来たら、たまごが転げ落ちそう程、
ギリギリであった。
龍神のたまごの裏手が避難所になっていた。
たくさんの年寄りと子供が寝込んでいた。
ヌルは、村の若い成人男性の数が少ないことに
気付いた。
ヌル「何があったのか、お話できますか?」
女性「ここのところ、雨が降り続きました。
河川の水が増水し、
氾濫して村に流れ込みました。
そんなのが、ここ1週間で2度来ました。」
ヌル「みなさん、病気のようですが、
なにか心当たりはありますか?」
女性「昨日くらいから、みんなが高熱で苦しみ
出しました。
なんなのかは、わかりません。」
ヌル「うまーる、ネズミの気配はないか?」
うまーる「う〜ん。
生きたネズミは近くにいないけど、
土の匂いの中に、ネズミっぽいケモノの
匂いが、
少しだけするんだよ。」
ヌル「そうか。ありがとう。」
(間違いない。水害の後、5日ほど。
これはネズミ熱"レプトスピラ症"だ。)
ヌルは、検索魔法を使った。
ゴーグル神の知識が頭に流れ込む。
ヌル(間違いない。
幸運にも、軽症なら以前に
生成した"テトラサイクリン"で治るな。)
ヌルはテトラサイクリンの生成を始めた。
ヌル「男性の数が少ないように見えますが、
何かありましたか?」
女性「村の男たちは、6日前に川の上流へ調査に
行きました。
それが、帰ってこないのです。
3日前に、第二陣も捜索に出たのですが、
やはり戻りません。」
ヌル(上流に、なにかいるな。)
「わかりました、俺たちが見てきます。
みんな、
着いたばかりで休みたいとこ悪いけど、
上流に行ってみよう。」
レスベラ「わかった。」
うまーるとクルムは状況を察し、黙って頷いた。
ヌル「うまーる、道中は常に周囲の警戒を頼む。」
うまーる「わかったんだよ。」
4人は、上流を目指し出発した。
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ヌル「なぁ、この川、9つの川が
合流した大きな川だって話だよな?
1週間も雨が続いてるってのに、
水量少なくないか?」
クルム「そうね。
普段の水位は、おそらくあの草の
とこくらいまであるはず。
マズいわね。」
レスベラ「なんで、
雨が降り続いてるのに水が減るんだ?」
ヌル「おそらく、上流に土砂ダムができてる。
決壊すれば、鉄砲水がくる。
急いで対処しないと。」
うまーる「さっきから、少し大きなネズミさんを、
ちょいちょい見かけるんだよ。
たぶん、おとなしい動物なんだよ。
アレなんだよ。」
うまーるが指差す方を見ると、
少し大きなネズミが水辺を歩いていた。
ヌル「アレは…。たぶん、ヌートリアだな。
たしか、毛皮が良質なのと、
肉が食えるやつだなぁ。」
4人がしばらく歩くと、土砂ダムが見えてきた。
たくさんの倒木と岩が、川を堰き止めている。
そして、複数の獣人らしきケモノがいた。
ケモノ達は集まり、
何か儀式のような事をしている。
うまーるがイヤな気配を察知し臨戦態勢に入る。
うまーる「血の匂いがする!!
ヒトの血なんだよ!!」
獣人らしきモノたちの足元には、
手足が無い無惨な姿の人間たちの
遺体が転がっていた。
中には、息のある者も。
村人「た…たすけてくれ…」
ヌル「調査に行った村人たちだ!!
ヤツラは魔物だ!!気をつけろ!!」
4人は武器を構える。
頭がビーバーで、体がゴリラのような
大型の魔物が声を上げる。
ビーバー「お前ら、新しい生け贄がきたバー!!
こんどは、メスがいるバー。
ご馳走バー!!」
魔物は7体。
それぞれ動物の特徴を有したヒト型だ。
ヌル「ビーバー、ヌートリア、アライグマ、
ミンク、カワウソ、カモノハシ、
ミズトカゲ。
人語を使うキメラ。魔王軍か!
アイツらは、村を襲わずに、
なぜこんな回りくどい事を!?」
クルム「ヤツラは、儀式のようなことをしていた。
協力型の高位魔法よ。
この雨は、ヤツラの魔法で降らせてる。」
ヌル「土砂ダムを作ったのもヤツラか!!
来るぞ!!」
6体のキメラが、4人に襲いかかる。
ミンク「柔らかそうな肉ンク!」
素早い動きでレスベラに襲いかかるミンク。
ミズトカゲ「ナメルダケ。ナメルダケヨ。」
ミズトカゲは長い舌をチロチロ出している。
その舌は長く、先端はヘビのように
二股になっている。
舐めるだけと言っているミズトカゲも
鋭い爪をレスベラ目がけて振り下ろす。
レスベラ「イケメンになって出直しな!
そうしたら
足くらい舐めさせてやるよ!!」
レスベラが、飛びかかってきたミンクと
ミズトカゲを斬り伏せた。
アライグマ「ぐふ。ぐふふ。お嬢ちゃん。
洗ってあげるグマー。」
アライグマは、
うまーるを捕まえようと襲いかかる。
うまーる「一人でお風呂に入れるから、
大丈夫です!!
あんなにたくさんのヒトたちを。
許せないんだよ!!」
うまーるは子供扱いされたと
勘違いしているようだ。
うまーるはブチ切れて電気を帯びている。
うまーるはアライグマの攻撃を躱し、
火雷でアライグマを突き、スタンさせた。
ビーバー(3体やられバー!?
あの強さ、冒険者バー!!
こうなったら!!)
「お前ら!時間を稼げバー!!
俺にソイツらを、近づけるなバー!!」
クルムが風の魔法攻撃を
カワウソとヌートリアに仕掛けた。
カワウソとヌートリアは毒をくらい、
動きが鈍る。
カワウソとヌートリアは
レスベラに襲いかかるも、
レスベラに瞬殺された。
カモノハシは毒の爪を、
うまーるに向けて振り回す。
うまーるは難なく躱し、
カモノハシをスタンさせた。
ビーバーが、巨大なノコギリのような武器で
土砂ダムの破壊工作をしていた。
ビーバー「ヒャッバー!!
俺の魔法具『オーラヴ』の切れ味!
たまらねえバー!!
木がサックサク切れるバー!!
ヌル(ノコギリが小刻みに振動してる。
アレは"超音波カッター"!!)
「魔法具か!」
(この水が村を直撃するのはマズい。
俺たちに水が直撃するのもマズい。
どうする。
この状況をなんとかするには、
水の出口を増やして
水を分散させなきゃいけない。
あの土砂ダムの側壁にあたる部分を
破壊できれば、水を分散できそうだ。
弱い鉄砲水なら、俺たち4人は
強化すれば流されても助かる可能性がある。
村人たちは幸い、高台の避難所にいる。
どうやって壊す?
速さと破壊力。
そうだ!!)
「マズい!!決壊させる気だ!!
みんな、チカラを貸してくれ!!
強化魔法・筋力上級!!」
ヌルは自身と仲間の筋力を強化した。
レスベラ「チカラって、何をすりゃいいんだ!?」
レスベラは、うまーるがスタンさせたアライグマとカモノハシにトドメを刺していた。
ヌル「うまーる!!電力最大までタメてくれ!
コレを失敗したら、村は沈む!!
俺たちもみんな死ぬ!!
クルム!!魔力をタメててくれ!
レスベラ、刀を2本、
水平に持っててくれ!!
強いチカラで頼む!!」
レスベラ「お、おう。
そんなんでいいのか?」
レスベラがミヅハノメとサブの刀を鞘から抜く。
うまーるは集中し、発電し帯電している。
凄まじい電力だ。
クルムも集中して魔力を溜めている。
ヌルは、鍋を取り出した。
落ちていた直径20センチくらいの丸い石を
掴み、鍋に入れた。
ヌルは鍋を石に纏わりつかせるように潰し、
砲丸のようなモノを作った。
ヌル「クルム!!この砲弾を、
圧縮した空気で包んでくれ!!
うまーる!!
俺の体に電気を流してくれ!!」
クルム(空気の圧縮って何よ!?
オニギリ握るような感じでいいのかしら。)
クルムは魔法で砲丸に風を纏わせ、
圧縮して固めていく。
急激に圧縮した空気は熱を持ち、
やがて砲丸も高温になっていく。
うまーるの体に帯電していた電気が
ヌルの体に移される。
ヌルは集中し、自分の体に電気を留める。
ヌルは、レスベラが持つ2本の刀に
砲弾を挟むようにして持ち、固定した。
ビーバー「終わりバー!!死ぬバアアアア!!」
流木から漏れ出す水の量が増えている。
土砂ダムは今にも決壊しそうだ。
ヌル「みんな!!全力で生き延びてくれ!!
行くぞ!!
うおおおお!!」
(状況は絶望的だ。だけど俺は1人じゃない!
こんなに頼れる仲間がいる!
必ず、なんとかなる!!)
ヌルは自身と仲間の3人に
河童から手に入れた
『身体強化魔法・守備強化特級』を
かけた。
ヌルの掌から、激しく水蒸気と煙が出ている。
肉が焦げる、イヤな匂いが立ち込める。
急激に圧縮された空気が、魔法防御をしている
ヌルの掌を焦がすほど、砲弾を超高温にしていた。
ヌルは体にタメた電力を、
レスベラが持つ刀に流した。
バチバチバチ!!
レスベラが持つ2本の刀が激しく帯電した。
ヌル「行け!!即席のレールガンだ!!」
(反動は全て俺に向けるようにしないとな。)
ヌルが放った砲弾は、
土砂ダムを形成している流木よりも
だいぶ左側に着弾した。
砲弾の質量に音速の射出速度、
それと圧縮から解放された空気が大爆発を起こし、土砂ダムを破壊した。
土砂ダムを形成していた流木も決壊し、鉄砲水が4人を襲う。
ヌルは鉄砲水に流された。
ヌル(みんな、どうか死なないでくれ…)




