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わがまま義妹ルチルの悪役離脱計画!~転生先は、おかあさんの夢小説~  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
閑話

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閑話 わがままルチルの『天使の箱庭』改造計画!【後編】


 わたしは何日にも亘って熟考した、最強のアイディアを力説する。


「そこで、よ。今こそ清楚綺麗で近付き難い、神々しくも気高い、高嶺の花プロモーションを発動すべきだと思うの!」


 まずは、何を着てもギンギンギラギラ・スパンコール衣装にチェンジさせてしまう精霊たちを引き離さなければ話にならない。

 高嶺の花は、高潔で落ち着きのある装いが必須なんだから。


「そんなことよりさ、僕の言ったこと、ちゃんと聞いてた? ルチル。花は二輪あるんだよ。僕の頭を悩ませる存在は、目の前の花なんだけど……分かってる?」

「花?」


 オウム返しに繰り返せば、にっこり天使の笑みが返って来る。


 傍らを見れば、『花』ではなく、学園の闇獣襲撃以降なぜか大きく育つ特技を身に付けた『毒キノコ』が、不思議そうに上体を斜めに傾げる。と、くりんと顔をラファエルに向けた瞬間、ビクンと震えて焦り出す。


『にょっ!? ぱわぱわ乙女、わっちはちょっと散歩に行くにゃ!』


 わたわた不自然に動くキノちゃんが、光る胞子を落としながら、忙しく後方へジャンプしつつ離れて行く。その表情は、いつもののほほんとしたものではなく、どこか焦りを滲ませている。


「ふふっ、不思議だね。ルチルよりも、言葉の通じないキノちゃんの方が、僕の言葉を理解してるなんてね」

「いや、キノちゃんはラフィーの言葉は聞き取ってるわよ。キノちゃんの声を聞き取れるのが、わたしだけってだけで。けど、言いたいこと?」


 んん?

 キノちゃんが、なんだか身振り手振りでわたしに訴えてるわ。言葉は通じるのになんでジェスチャー?


「ルチル? よそ見なんてしないでさ、僕を見て?」

「ひゃっ!?」


 気付けば麗しの天使のどアップが眼前にあった。文句の付け所のない綺麗な笑顔なんだけど、なんだか気配がおかしい。キラキラ精霊と光る胞子がいっぱい周囲にあったはずなのに、なんだか黒い気配が漂ってるような……?


『ぱわぱわ乙女っ! キンキラ天使は魔王と紙一重にゃっ! ちゃんと聞くにゃっ』

「んなっ⁉ まさかまたラフィーが闇堕ちするってこと⁉」

『してないけどまずそうにゃーー! わっちらを呼び込む前に、キンキラをなんとかするにょっ!!』


 叫びながら後じさり、ついには完全に姿を眩ましてしまったキノちゃんだ。天使の箱庭活用の良いアイディアを思い付いたと思ったのに、精霊側からの拒絶に合うとは思ってもみなかった。

 しかも、キノちゃんが姿を隠したのと同時に、周辺を漂っていたキラキラ精霊たちも消え去っている。なんでみんな消えたの?


「そんなぁ、良い案だと思ったのに」

「ルチルのアイディアは良いと思うよ。けどここは、僕がルチルへの想いを募らせた大切な場所でもあるんだ」


 しょんぼりと肩を落としたわたしだったけど、寂しさを含んで尚甘い微笑を湛えたラファエルの言葉がじんわりと深く染み込む。

 それってわたしを大切だって言ってくれているみたいで……頬も胸もぽわぽわと温かくなる。


「それに、僕はルチルの我儘に負けないくらいの、傍若無人で強引な天使だから」


 急転直下。

 何度も言った覚えのあるラファエルへの形容詞に、「ひゅ」と息が詰まった。


 いやいやいや、わたしそんな当人の目の前で言った⁉ 傍若無人腹黒天使って。流石に口には出してない……よね?

 勇者の眼があったら、心の中で思ったことも通じちゃったりするわけ⁉


 焦って視線をあちこちに彷徨わせるわたしに、ラファエルが「ルチルは思っていることが顔に出過ぎるから」と呟きながらクスクスと笑う。


「ここはまだ不自由な箱庭にしておくんだ、今決めた。精霊にだって渡す気は無いよ」

「えぇっ⁉ ずるいわ、わたしが先に改造するって言ったのに!」


 わたしの非難の声を、笑顔で受け流したラファエルが、ついと突き出した人差し指でわたしの唇にそっと触れる。


「自分を花だって気付かないルチルだから、天使の力でしっかり囲っておかないとね。だから、ここは当分、僕とルチルふたりだけの箱庭だ。ルチルであっても、この決定には何も言わせないよ」


 言わせないも何も……と、わたしは唇を尖らせる。

 晴れ晴れした笑顔の天使に視線が惹き付けられて、何も言えないから。


 本当にこの傍若無人ラファエルは、天使顔負けの綺麗さと、甘さと、温かさで、わたしの気持ちをごっそり持っていっちゃうんだから。


「もぉ」


 言いかけたところで、唇に触れていた指の感触が唐突に離れた——


 と思った次の瞬間、


 天使の超どアップと共に、唇に別の柔らかな感触が掠めて、満足気な天使の笑顔が視界を覆った。


「な、な、な、なっ……!」

「ふふっ、僕の花の蜜は甘いね」


 蜂蜜よりも蕩ける甘さの視線を向けて、極上の微笑を天使は浮かべる。


 全くもぉ、これだから正規ヒーローって存在は……。理屈と下準備(ふくせん)なんて抜きな、超高火力な攻撃を平然と放つんだから。


 悪役義妹ルチルの我儘は、完全敗北をするしかないじゃない。ねぇ?



「僕のための空間と、僕だけのルチル。こんな最高な箱庭に感謝だよ」



 天使の箱庭は、目的とまつわる想い出が大きく塗り替えられたみたい。


 まぁ今回は、これで良しとするわ!

 ラファエルに辛く苦い経験を想起させる『天使の箱庭』のイメチェン計画が、若干方向性は変わったけど達成されたものね。



 けど次こそは、傍若無人腹黒天使に負けないんだからぁぁぁ!!

















「ルチル、僕が目の前にいるのに考え事かな? そんな余裕、君にあるのかな」

「え? は? ラフィーっ!?」


 この後更に天使の美麗顔面の追撃にあった訳だけど……まぁそれは、わたしとラフィーだけの箱庭の秘密ってことで。












 閑話 わがままルチルの『天使の箱庭』改造計画!

 ― 完 ―

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