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わがまま義妹ルチルの悪役離脱計画!~転生先は、おかあさんの夢小説~  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
閑話

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閑話 わがままルチルの『天使の箱庭』改造計画!【前編】


「天使の箱庭を、生まれ変わらせようと思うのよ」


 綺麗に整え尽くされた庭をグルリと見渡したわたしが言うと、ラファエルはキョトンと目を丸くした。


「ここを作り変えるつもり?」

「そうよ。王城にほど近い立地に、よく手入れされた庭と建物。これほど優秀な物件なのに、わたしとラフィーしか使わないお茶飲み施設にしておくのはもったいないと思うの」


 エヘンと胸を張って建(・)前(・)を主張してみせる。


 けれど、本当の目論見は別にあるのよ。

 ここは、勇者の目を持って生まれたラファエルが、先に生まれていた開国の祖の風貌を受け継ぐミカエルとの国王レースに、波風を立てぬよう閉じ込められていた場所。つまりは、周りの都合に振り回されて生きて来たラファエルの象徴みたいなものなのよ!

 綺麗に飾ってはあるものの、その成り立ちからラファエルにとっては、決して心地の良い思い出の場所とは言い難いわけで。だからこそ、ラファエルは勇者の目を駆使してここから抜け出す方法を編み出したのよね。

 出口がわたしの住む公爵家だったりするのは、思うところがないわけじゃあないけれど、それは今は置いておくとして……。


 とにかく、苦難の年月を過ごしたココをそのままにしておくことは、ラファエルにとって辛く苦い経験をいつまでも引き摺らせるってこと。中身年齢おねえさんなわたしが、表立っては辛さを出さない彼のために一肌脱ごうってわけよ!


 婚約式を控えた第一王子殿下の執務の手伝いに追われる彼は絶賛繁忙期で、時間がない。


 ならば、よ?


 今こそ、わがままルチルの『我儘』の発揮どころなのよ!


「ふっふっふ。聞いて驚いて。わたしは既に頭の中で完成形を描いているの。わたしひとりで勝手に考えたんだけれど、わがままルチルだもの問題ないわよね」

「うん。ルチルはいつも楽しげで良いね。本当に面白いなぁ」

「いや、面白いは間に合ってるから」


 こほん。仕切り直しよ。


「ここを、天使だけじゃなく精霊も寛ぐスペシャルな場所……あつまれキラキラ精霊の庭! 精霊のやすらぎ保養施設に改造するわ!」


 ばばーん——と、効果音が付く勢いで、胸を反らして声を張る。


「へ、え?」


 ポカンと目を丸くしたラファエルの反応は鈍い。


「信じてないわね。わたしはやる気よ」


 と言うのも、これまで第二王子の幽閉施設——いや、麗しの天使ラファエルだけの空間『天使の箱庭』は、件(くだん)の天使が陽の当たる世界へ飛び出し、利用者不在の状態となっているのだ。闇獣(あんじゅう)撃退で大活躍したミカエルと、伝説の精霊使いの生まれ変わりセラシアが婚約し、彼らの立場が盤石になったところで、ラファエルは、隠された存在でいる必要が無くなった。

 そして、表に出た彼は兄の政務を手伝う為、今は堂々と第二王子と公言して王城に移り住んでいる。


 だから今の『天使の箱庭』の利用状況と言えば、王子妃教育に疲れたわたしと、兄王子の執務補佐の合間に訪れるラファエルの茶飲み場としてのみなわけよ。庭園の美しさに魅せられた精霊たちもちらほら輝きながら漂う、綺麗な場所ではあるのにね。


「ここは王城にほど近い一等地で、申し分なく整え尽くされている素敵な所ではあるわけよ。ただ出入りするには、幾つも門や扉がある不自由で不親切な造りだわ。それだけに、壁や扉をものともしない存在にとっては、人目を気にしなくても良い快適な空間に成り得るのよ!」


 そこまで言えば、察しのいい相手は何やら察するところがあったらしい。


『わっちらの住処にょ!』


 ぴょこんと地面に降り立ち、両手に乗るサイズから幼児の身長ほどにまで膨れ上がって元気に応えたのはキノちゃんだ。


「そう、ここを王城でセラシアからキラキラの素をもらった精霊たちが、消化の光が収まるまでのんびり時間を過ごすための場所にするの!」


 この案を思い付いた時は、改造理由の建前としてだけでなくセラシアの問題解決にも有効な、一石二鳥のお得なアイディアだと自分をめいっぱい褒めたわ。

 だってねぇ、ミカエル王子に大切にされまくっているセラシアは、今や美しさが天元突破して侍る精霊も後を絶たず、その結果たるや……。


「王太子妃がいつもギラギラスパンコールドレスを着ている訳にはいかないもの。例えそれが有難ーい精霊さんたちだとしても、世間的影響の観点で言えば最悪だわ。

 可愛い系清楚美人でグラマラスなお義姉さまが、そんな蠱惑的で妖艶に目立つものをいつも着ていたら品性が疑われるのは勿論、精霊だけでなく要らぬ男(ムシ)までが寄ってきちゃうものっ!」

「ああ、余計な男(ムシ)の話は、聞くようになったよね。婚約式典に来る隣国の王子や皇子たちへの対応策にも、僕たちは頭を悩ませているところでね。注目を集める花は二輪なのに、余計なムシは三倍以上いるから、僕も兄と頭を悩ませているところさ。さすがルチルだね。そんなところもお見通しだ」

「ヒロインだもの。沢山の人を惹きつけるのは当然よ!」


 物言いたげなラファエルを他所に、わたしは夢中で話し続ける。


 だって、今のわたしは我儘モード全開のルチルなんだもの。この世界の原作物語も認める悪役義妹の我儘は最強!


 そう信じて疑いもせず——。

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