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わがまま義妹ルチルの悪役離脱計画!~転生先は、おかあさんの夢小説~  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
第3章 小説から覚める時――今世の家族と前世の家族

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第36話 キラキラな豊かさが齎したもの 〜 最終章プロローグ 〜


 仲間たちが美味なるモノを取り込んで、美しくキラキラ光り、満足げに舞い踊る。


『たくさーんあるのねぇ』

『久々だねー』

『美味なるにゃぁ』


 どこからともなく現れた不可視の仲間(せいれい)たちが、口々に囁き合いながら至上の光を帯びて浮遊する。


 もっと欲しい。

 もっと輝きたい。


 美味なるもの、美麗なるものは精霊の存在を強くする至高のエネルギー。

 取り込めば自我を強く出来る上に、自身も同じ光り輝く美しさを手に入れられる。枯渇と欲を満たすものに仲間たちが引き寄せられるのは、当然すぎる自明の理だ。


 そんなキラキラの素を作り出せるのは、嘘や作り物でない美貌を纏う《《人》》だけ。至高の想いを込めて《《人》》に創り出されたモノだけ。

 一見して美しいもの、美味なるものにもキラキラの素は在る。けれど、当たり前にあちこちに散らばる『それ』は、ひと舐めして消える砂糖粒くらいの満足度しかない。不可視の仲間(せいれい)たちが満足できるキラキラは、遠い昔に世を去ってしまった『シャレード』なる乙女と、『オズ』なる青年から得られたが、その後久しく人の世から得られる術は無くなっていた。


 ところが今——再び王国中の精霊の元へ、心が喜びに打ち震え、本能的な高揚感を湧き起こさせる『美味なるもの』の気配が伝わったのだ。


『キラキラねー』

『われもわれも』

『キラキラするのー』


 精霊らがこぞって一人の乙女に群がるが、美味なるものは無くなる気配は無い。


『礼返しするねぇ』


 殆どの精霊は、柔らかく小さな輝きとなって瞬きながら、乙女の喜びそうな奇跡を振り撒いてゆく。


 乙女の近くの植物が、生き生きと背筋を伸ばして大輪の花を咲かせ、周囲の空気に芳香を纏わせ、小さな変化をもたらす。


『たくさん、たくさん! もぉっとたくさん! 一番いっぱい欲しいのぉ』


 集まる精霊が増えれば、競争心を持ったもの、欲を膨らませたものも増えてゆく。

 どんどん取っても減らないキラキラの素に、自分だけは礼を返さなくても大丈夫と、勝手な理屈を持ち出す輩も現れる。



『恩知らず』



 どの精霊ともなく呟かれた言葉にも、耳を貸さずに、ただ貪欲に取り込んで、飲み込んで——


 純粋な気持ちの塊である精霊は、本能に呑み込まれて、終いには貪欲さそのままの存在に変容する。


 こうなったら、もう元には戻れない。


『あーぁ、あのコ変わっちゃったよ』



 同族が闇獣(あんじゅう)へ堕ちたのを見て、精霊が無邪気に告げる。

 もともと嫌な存在だったモノが、単に完全なワルイコになっただけの変化。

 憐憫はなく、ただ「あーぁ」といった感想だけ。


 良質なキラキラの素を持つ人が現れれば、闇落ちする精霊も増えて、次々と闇獣(あんじゅう)が誕生する。


 遥か昔、精霊使いシャレードと共に、勇者オズが活躍した時代と、同じ流れが繰り返される。


 巡り巡る。

 恩恵と破滅は背中合わせ。


 皮肉な因果はまたしても、奇跡の皮を被った災厄の姿を隠し、人々の世界を侵食する。

 素晴らしい奇跡をもたらす聖なる乙女の本質とは別に、地上では着実に闇獣(あんじゅう)たちが数を増やしていた。


 欲望のままの姿となった闇獣たちは、さらなる欲に駆られて押し寄せる——キラキラ乙女の元へと。

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