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わがまま義妹ルチルの悪役離脱計画!~転生先は、おかあさんの夢小説~  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
第2章 この世が夢小説であるならば、出会う相手は虚像か実像か!?

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第33話 我儘に未来を追求して、天敵ミカエルを追及します!


 我儘(わがまま)を発揮して、未来を掴み取るの!

 王族の前だって、我儘ルチルは臆したりなんてしないんだからっ。


「わたしからは、ラファエル様の主張を裏付ける証拠をご提出します」


 気持ちを奮い立たせて声を張る。

 今度は、キノちゃんにお願いして調べ上げた結果を、わたしが示す番だ。


「第一王子ミカエル様によるお義姉(ねえ)さまへの異常な執着。それは今、お義姉さまが纏うドレスや、他にもミカエル様の名前で大量にお義姉さまに届けられた数々のドレスに現れております」


 わたしの主張に、腕章の集団の一部は、鼻で笑う素振りを見せる。ただの贈り物だとでも言いたいのだろう。けど、そうじゃない。


「お義姉(ねえ)さまをご覧ください。お義姉さまのこのドレス姿。後光が射して見えるほど、とっっっても素敵です。色も、散りばめられた宝石も、繊細なレースの模様に至るまでが、今のお義姉さまを最も引き立てるよう計算され尽くされておりますね」


 ミカエルは、わたしが話すことを測りかねているのか、怪訝そうに目を眇めている。そんな様子に構わず、ここで声のトーンを少しだけ落とした。ここからが、本題なのよ。


「何も知らずに美しいお義姉(ねえ)さまを見ただけなら、王族の方々が持つ予備のドレスとは、なんと多種多様なものだろうと驚かされることでしょう。

 それだけじゃなく、現在のお義姉さまの体型に、ぴったりフィットするものまでが揃っているなんて!

 ……おかしいですよね。こんなにも予備のドレスを置いておられたら、国庫はとうに傾いておりますよね?」


 意地悪く口角を上げてミカエルをじっと見詰める。わたしの言おうとしている事が分かったのだろう。ミカエルは、グッと唇を引き結んだ。


「では、お義姉(ねえ)さまのために(あつら)えられたのかと言えば、お義姉さまがお城へ滞在したのは二週間。既存品の手直しや、簡素なドレスを誂えることくらいは出来るでしょう。

 けれど、今お義姉さまが纏うドレスはデザインから生地、仕立て、レース、散りばめられた宝石に至るまでが、ひと目で分かる一級品。数ヶ月かけて完成させる特別なドレスです。そのような時間を、お義姉様はこの場所に滞在してはおりませんし、処遇に憤るお義姉さまが唯々諾々と第一王子の採寸に応じるはずもありません」


 わたしの言葉に、セラシアが力強く頷く。


「なのに何故このドレスが完成されているのか? 調べたところ、驚くべき事が分かりましたの。ミカエル様は、学園入学時のお義姉(ねえ)さまの制服の採寸情報を秘密裏に入手しましたわね?

 ブティックの日報に記録が残っておりました。ただ、それはあくまで最後のサイズ確認だったのでしょうね。ドレスを構成する宝石の取り寄せや、レース、生地の発注は、入学式よりも随分前に行われていましたわ。発注書、受領書の写しがこちらに」


 セラシアのドレス作りのために発注された様々な素材。それを取り扱った店舗、宝石商の帳簿の写しを並べる。諜報キノちゃんの情報収集能力あっての成果だ。さすがに本物を持ち出すことは出来ないから、証拠としては弱いけれど、そんな些細な断片でも積み重ねれば無視できない情報になる。


「そして、更にはお義姉(ねえ)さまの姿を確認したかったのでしょうね。我が公爵邸に、側近や、調査員を潜入させて見張らせておりましたわね?

 使用人は数多くおりますが、わたしの優秀な部下が、見慣れぬ人物の顔を描き取っておりますの。入学式までのひと月程度注意を払っていただけで、コレだけの不審者が紛れ込んでおりましたのよ。わたしたちを観察して行くだけで実害はありませんでしたけれど、何かあった時のためにしっかりと姿絵を残しておいたのですわ」


 姿絵はもちろんキノちゃんの作画だ。見た通りを写し取る技能があるかどうかは分からなかったけれど、出来ると信じたわたしの創造力が勝利したのよね。

 そして、何故そんなことをしていたかと言えば、『キミウタ』でルチルの断罪を狙う王子様が、本格的にヒロインに関わって来るのが学園に入学してからだったから。入学式をひと月後に控えて、断罪予定のXデーが近いと慄いたわたしの足掻きが、結果として偶然役立ったと云う訳よ。


 何枚かの姿絵を並べれば、ミカエルの背後に立つ腕章の生徒と瓜二つのものが何枚も紛れている。その他にも、壮年や中年の人物が混じるが、国王は僅かに目を見張り、ミカエルは顔色を青くしている。

 彼らの反応から察するに、ミカエルの側近以外の人物は、もしかすると王家子飼いの潜入のプロだったのかもしれない。


 まぁ、わたしの優秀な部下——いいえ、扶養家族キノちゃんの方が、潜入をはじめ諜報能力は優れてるってことよ!


「以上から第一王子ミカエル様が、お義姉(ねえ)さまに並々ならぬ執着を持っていることをお判りいただけたでしょうか?」


 偶然の産物もあるけれど、ミカエルの横暴の立証は、わたし一人ではどうにも出来ず、彼からの断罪を待つだけだったことだろう。

 けど、現実はそうじゃなかった。キノちゃんや、ラファエルといった心強い味方はいるし、セラシアとの仲も良好だし。と云うより『おかあさん』だったわけで。


 わたしは、破滅に向かってただ押し流される悪役なんかじゃなかったの!

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