表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わがまま義妹ルチルの悪役離脱計画!~転生先は、おかあさんの夢小説~  作者: 弥生 知枝(やよい ちえ)
第2章 この世が夢小説であるならば、出会う相手は虚像か実像か!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/48

第30話 特上フェロモン噴出で礼返しブーム到来⁉


 更には、わたしの予想通り、待っていたのはキノちゃんだけではなかったのよ。


 真っ先に飛び付いたキノちゃんが、ふわわんと白い光に包まれると、次から次にセラシアの周りで光の粒が輝き出す。


 キノちゃんから精霊の事情を聞く前ならば、わたしもこの幻想的な光景に目を輝かせただろう。小説で書かれた通り、精霊らの眩い光達に囲まれたヒロインが、彼らの助けを得て奇跡を起こす場面の再現を見たと。


 けど、現実は違った。

 あの幻想的な光は、精霊の吸収したセラシアの極上フェロモンが消化される過程の反応で、更には彼女の周囲に漂う光の粒は、それぞれがフェロモンに引き寄せられた精霊だったのよ。


 花に集まる蝶ならば趣深いけれど、鬱陶しいほど周囲を取り囲むあの量は、最早砂糖にたかる蟻——いや、アイドルに群がる熱狂的ファンってところよね!?


「あれ?」


 突然、ただの光でしかなかったものたちが、 形を取り始めた。いや、わたしが腹ペコ精霊だと認識したから、『創造力』が仕事をして相応しい姿に変化させたのかもしれない。


「ああああ……これはまずいわ」

「どうしたの? ルチル」


 ただの眩い光の粒だった精霊が、わたしの無意識の意図を汲んで何処かで見た形に変化してゆく。


「なんだ!? 王冠を付けた、笠なしキノ……コ?」


 疑問符を山ほど頭の上に浮かべたラファエルが、セラシアの方を見たまま呆然と呟く。

 うん、分かるよ。断定出来ないよね。って云うか、温暖なヒュアツィンテ王国で生まれ、秘されて育ったラファエルは見ることなんて無かったはずよ。



 クリオネなんて——!



 そう。わたしがセラシアに群がり、消化したモノを透けさせる精霊の性質から、想像した形は氷の海の天使クリオネだったのよーーー!

 ただの想像じゃなく、創造力なんて力を持っちゃったために、思ったまんまが形を与えちゃうなんて……。

 いつも見ているのが、木苺ジャムを在るだけ食べ続ける、食欲旺盛なキノちゃんなんだもの。「捕食」にイメージを持って行かれすぎた結果、頭の殆どを占める大口を開いて、バクバク捕食する透けた生き物に辿り着いちゃったんだわ。しかも幻想的な精霊に相応しい、天使の別名までついているんだから、想像しないほうがおかしいよね!?


 けどこれじゃない、やり直しを要求するわっ!


 だって、セラシアはこの世界のヒロインなのよ。『王国いっぱいの花畑を君の歌で咲かせて』に相応しい形は、頭でバクバク暴食するクリオネじゃないわ!

 やり直すのよ。目を瞑って精神統一。集中するのよ。唸れ、わたしの創造力っ!!


 花を咲かせるのよ!


 物語では精霊に愛されるヒロイン・セラシアが、精霊の力を無意識に使って、萎れた花を咲かせていたのよ。今にして思えば、花はヒロインが訪れる先々で咲いていたけれども、咲かせようと何かをした描写は無かったわね。ただヒロインが訪れる先でどんどん開花する花々、しゃんと背筋を伸ばして瑞々しく花弁を広げる花として書かれていたわ。


 あれ?

 ソレって彼女の希望を聞いたんじゃなくて、精霊たちの勝手な『礼返し』なのかも。


 今も、目の前の精霊たちは、キラキラ輝きながら『礼は何を求める?』なんて口々にセラシアに話しかけてるわね。けど、残念ながらセラシアにはキノちゃんの声が聞こえていないのと同様に、精霊たちの声も聞こえていないわ。


『お返事ないねー』

『先代と、おんなじね』

『恩知らずにはなりたくないから、礼返しがしたいのねぇ』

『先代とおんなじなら、礼もおんなじでいいよね』

『そうねー』


 何やら、クリオネたちが口々に『おんなじー』と大合唱を始めたわ。群がってる精霊たちが一斉に話してるから、耳にガンガン響いて煩いんだけどー!


「あ!」


 突然ラファエルが上げた声に、やり直しのことばかり念じて固く目を瞑っていたわたしは、慌てて顔を上げて彼の視線の先を見遣る。


「やった……」


 視界に飛び込んできた光景に、わたしの唇からするりと快哉を表わす言葉が滑り落ちた。目の前の精霊たちの姿が、変わって行く――空中を輝きながら漂うクリオネが淡いピンクを帯びて、降りしきる桜花に変化する。


 王家で整えられた衣装や結い髪の煌びやかな姿で、わたしに慈しみに満ちた表情を向けるセラシア。そんな彼女に輝く桜花が振り注ぐ。文句なしのヒロインムーブだ。


 変化は、それだけにとどまらない。

 セラシアの周りを浮遊する光の花は、触れたものを変化させ始めた。室内に飾られた花瓶の花が、突然変異ともいえる成長を始めたのだ。更には寄り集まった精霊は、より強い光を放ち、普段見ることのできない者たちにも、その光が見えるものが増え出す。


「セラシア嬢に……精霊の加護の光が!」


 わたしを睨んでいたのとは一転、セラシアを見て感嘆の表情を浮かべた第一王子が大声を上げる。


 いや、加護じゃないからね。消化反応の光よ?


「見よ! やはりセラシア嬢は、王家が保護するべき稀有な存在なのだ!

 開祖の姿を継ぐ私に逢うため、精霊使いシャレードの能力を、魂を継ぐ彼女が、今、この世に現れたのだ!

 悪逆非道な家族などに、私の対となるべき彼女を預けてはおけん!」


 第一王子のセラシアへの大絶賛と、うちの家族へのディスりが強すぎるわ。この世界の元となった物語で、悪役を断罪したのは第一王子ミカエルなのかもね。


「はっ。節穴だね」


 盛り上がるミカエルとは対照的に、冷え冷えとした嘲笑の声を上げたのは、ラファエルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ