第1話 二人の少女 対 夏侯惇&郭嘉
(視点は夏侯惇です)
孟徳は郭嘉を付けてくれた。
「郭嘉は我並みに頭が働く。我と想って、頼れば良い」
無論、そうではないと言う気はないが。我から見れば、この者は、軍略に痴する類いの者。その点では、孟徳と同類。まさに、類は類を呼ぶ間柄。
ただ、我にとって幼馴染みでもあり、軍略以外にも何かと詳しい孟徳とは自ずと異なる。正直に言えば、少し苦手だったりする。それを知ってか、孟徳がいたずらまがいの嫌がらせで付けたのかと、一瞬、疑うも、さすがにそれは無いと結論づけた。
食い物に下手物を混ぜるといったしょうもないいたずらはなしても、軍事は孟徳にとっても大事。稚気はなかろう。
とは想うも、隣に立つ郭嘉、あの厳めしい敵の城塞群を見て喜色満悦となった。
普通、恐れおののくものだろう。確かにこれくらいの方が頼もしいとは、頭では分かるが、人としてはどうなのか? まあ、他人の人となりをどうこう言える我ではないのだが。
その郭嘉いわく、
「なるほど。これはこれは。素晴らしい。果たして、敵にいかなる知恵者の軍師がおるのか? 是非にも一献酌み交わしたきところ」
そこで恐らく言葉が過ぎたと気付いたのか。また、夏侯惇が「果たして、どう、素晴らしいのか?」と問うたこともあって、その痴するところからは浮上して来て、返答する。
「この城塞自体が一つの大きな罠となっておるところです。この造りだと、どうしても手前の小城塞群を放って置いて、奧の本城塞に攻め込みたくなります。ただ、それをやろうとすれば、小城塞群から背後を攻められることになる。といって、この小城塞群を抜こうとすると、多大な犠牲を強いられる戦いを覚悟せねばならない。となると、自ずと退くのが最善となりましょう。まさに戦わずして勝つのが最も望ましいとすれば、眼前の城塞はそれを可能にしている訳です。素晴らしい」
「ならば、前回、退くことを選択せず、攻め込んだ我は如何?」
そう尋ねると、「くわばらくわばら」などとぼそぼそ言っておる。我への返答なのか、はっきりしない。
「それで、今回、我らはどうするのだ? やはり退くのか?」
「退くのが最善手ですが、残念ながら、それでは面白くない」
「なら、具体的にはどうするのだ?」
「調べてみます」
「調べる?」
「はい。実際に見て触れて、ようやく分かる事柄があります」
「見て? 触れて? そのためには城塞群に攻め込むことが必要だが。敵の罠にあえて飛び込むということか」
「さようです」
「結局、前回の我と同じではないか?」
また「くわばらくわばら」などとひとりごちておる。
「それで、いつ、やる?」
「明朝」
さすがに気が早いなどとは言わず、「うむ。喜ばしい」と答える。それのみ、気が合ったゆえだ。




